IRCE参加レポート(4) : 顧客中心の企業活動実現に必要な事とは?
- 2015.10.202022.12.16
前回は購入後の顧客体験まで設計されていた「Blue Apron」の事例を紹介しました。
今回は各チャネルの顧客データを統一化することで顧客をよりよく知り、顧客体験向上を今後の競争力の源と位置付けた「BOSCH」の事例を中心に紹介したいと思います。日本では東京にカフェもあったりしますね。
BOSCHは自動車部品と電動工具の製造・販売を行っている、ドイツが本社のメーカーです。BOSCHの消費者向け商品のEコマース担当の方が登壇したのは“Single View of the Customer: Advanced Analytics, Personalization, CRM(顧客の一元化:一歩進んだ分析、パーソナライゼーション、CRM)”というタイトルのセッションです。
まず、顧客中心の企業活動とは?
BOSCHは現状のチャネル別に分断された顧客接点が問題と感じているようでした。
ECや実店舗の他にもSNSやメールや電話での問い合わせ、Webサイト、B2Bのブランドであれば営業担当などチャネルが多岐に渡るBOSCH。
今後はチャネルという枠を取っ払い、顧客を中心に置いた企業として、チャネルを超えた対応が必要だという話から始まります。
↑シカゴで昼食後1発目のセミナー。「昼食後のセッションは目が冴えるほどエキサイティングでしょ?」と
時差ボケの私たちにピッタリな言葉を投げかけてくれるスピーカー。このセッションは日本時間で深夜1時くらいに開催されたせいか、手元がボケています。
というのも、ほとんどの会社はすでにその変化を感じているとは思いますが、BOSCHでも想定した一般的な顧客行動を考えた際、チャネルを越えて商品を認知したり、
比較検討、そして購入するのはもはや当たり前の時代に。その変化を止めることはもはや不可能と言ってもいいでしょう。
その流れで出てきた新たな企業の問題点は、各チャネルで分断された顧客対応になってしまっていること。
問題の原因は、企業側の視点と顧客側の視点のズレにあった
企業の視点から考えると、顧客対応一つ一つに対してはお客様には満足いただけているとスピーカーは受け止めています。
セールスチームはどう対面したら効果的かを、マーケティングチームはメルマガなどでコミュニケーションの効果的な方法を、サポートチームは電話での効果的なやりとりをそれぞれ理解しているプロの集団だと自負しています。
しかし、それらはチャネルや担当者別で見た顧客の一面からの理解でしかないと話します。
目標としては、より良い顧客体験を提供すること。そのためには、組織として顧客接点の全方位からお客様を理解すること。
また、その目標への阻害要因は、企業側の視点、つまり各チャネルの一つの面からでしか顧客と向き合っていないBOSCHという企業自体にあると考えています。
↑現在の顧客対応。顧客接点はたくさんあるけれども、それぞれ横のつながりもない状況。まるで人格が分断されているかのように…
一方、顧客側の視点とはどのような視点でしょうか。
顧客の立場としては一つの企業とやり取りしていると考え、どのチャネルなのかは気にしていないのではないでしょうか。このセッションのスピーカーも、「顧客は一人の顧客として、一つの企業からは同じレベルの対応を望んでいる」と考えています。
具体的には、「顧客はどこのチャネルで接点を持ったとしても、これまでの対応を踏襲したやり取りを期待している」と。
BOSCHが理想としている顧客対応も、顧客の心に寄り添うようなものでした。例えば、顧客がサポートチームに電話をした際に、たとえその担当者自身は初めての対応でも、顧客に今日電話を掛けてきたのは「先週買ったハンマーについて聞きたいのか」それとも「一年前買ったドライバーについて聞きたいのか」と尋ねることができるような対応です。
私たちが顧客である際のことを考えてみても、長くつながりを持っているお店や企業とはチャネル別に人格を分断されたような付き合い方よりも、それまでにやり取りをしてきた内容から好みを理解してもらったり、一人の顧客として対応してもらった方が心地良く、「また来よう!」という気持ちになりますよね。
↑理想形としての顧客対応。1人の顧客として対応することを企業として推進。
では顧客中心の企業活動のために、BOSCHが取り組んだこととは何でしょうか?
その内容は次回でご紹介いたします。
また、次回はBOSCHの事例だけではなく、同セッション内でのLowe’sが行った、オムニチャネル化への取り組みなどをご紹介したいと考えています。
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