店舗とECで急成長!「古着屋JAM」が取り組む実店舗EC連携の裏側に迫る【セミナーレポート】

EC・ネットショップ運営お役立ち資料ダウンロード実店舗とECが連動したオムニチャネルに取り組むことで、コロナ禍でも成長しているアパレル企業があります。海外古着の専門店「古着屋JAM」などを展開している株式会社JAM TRADING(本社大阪府)です。

2021年に直営店を9店舗オープンしたほか、自社ECサイトの施策も強化したことで、2021年11月期の売上高は前期比約36%増の約17億円に拡大しました。

同社は、ファンを増やすためにどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

実店舗とECサイトをつなぐバックヤードの仕組みや、店舗スタッフさんのECへの関わり方、ECプラットフォームの活用法、導入している決済手段など、オムニチャネルの裏側を福嶋政憲社長にうかがいました。

※本記事は、SBペイメントサービス株式会社と株式会社フューチャーショップが共同開催したオンラインセミナー「スタッフが活躍し、ファンが生まれるお店、『古着屋JAM』が躍進する仕組みの“表”と“裏”」をもとに構成しています。

古着屋JAMセミナー登壇者

オンラインセミナーの登壇者(写真左から、株式会社フューチャーショップ・稲生/株式会社フューチャーショップ・安原/株式会社JAM TRADING・福嶋さま/株式会社SBペイメントサービス株式会社・塩原さま)

ゲストスピーカー

古着屋JAN様 セミナー福嶋様

株式会社JAM TRADING

代表取締役 福嶋政憲 氏

繊維メーカーを退職後、オーストラリアでのワーキングホリデーを経て、金無し・コネなし・経験無しで古着屋をオープン。それまではヤフオクでのCtoCが主な取引であった古着のインターネット販売のBtoCにいち早く力を入れ、現在では海外仕入れの古着屋としては国内最大規模を誇る。

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    「古着屋JAM」を展開する株式会社JAM TRADINGとは?

    株式会社JAM TRADINGは、海外の古着やビンテージブランド、アンティーク雑貨などの輸入販売を手がけている企業です。創業は2002年7月。大阪市内の商業エリア「アメリカ村」で古着屋を営んでいた福嶋さんと上古殿さん(現取締役)がEC専門の古着屋さんをヤフオクにオープンしたことから始まりました。当初は福嶋さんの個人事業でしたが、2007年12月に法人化(株式会社JAM TRADING設立)しています。

    現在運営している古着ショップのブランドは3つ。アメリカの架空の街「JAMTOWN」をコンセプトにした「古着屋JAM」、「ガーリーから抜け出し、フェミニンを追い求める」をコンセプトにした「Elulu by JAM」と、LOWPRICE & ECO SHOP(ロープライス・アンド・エコショップ)がコンセプトの「LOWECO by JAM」を展開しています。

    株式会社JAM TRADING 店舗

    古着屋JAM(左)、Elulu by JAM(中央)、LOWECO by JAM(右)の3ブランドを展開している

    店舗数は3ブランド合計で19店舗※2。海外ブランドを扱う古着ショップとしては国内最大級の店舗数です。大阪市内に10店舗を出店し、顧客が買い回りを楽しみながら掘り出し物を探せるようにするなど、1点ものを扱う古着屋ならではのショッピング体験も提供しています。

    ※2 2021年12月末時点の店舗数

    コロナ禍に出店を加速した理由

    関西圏を中心に実店舗を展開してきた同社は2021年、東京や福岡、広島などにも店舗網を拡大しました。コロナ禍で多くのアパレル企業が対面販売に苦戦する中、同社は2021年だけで9店舗をオープンしています。2022年に入ってからも、1月に仙台市に出店するなど、その勢いはおとろえません。

    コロナ禍に出店を加速させた理由について福嶋さんは「店舗を任せられる人材が増えたこと」と「時流を捉えた戦略」を挙げました。

    2021年に出店を増やした最大の理由は、スタッフが成長し、お店の運営を任せられる人材が増えたためです。その前提があって、海外ブランドのニーズが高まっていることや、SDGsなどの文脈で古着に注目が集まっているなど、時流を踏まえて店舗を増やしました(福嶋さん)

    「古着屋JAM」原宿店

    関東で初出店となった「古着屋JAM」原宿店

    EC事業は2004年に「ヤフオク!」からスタート

    株式会社JAM TRADINGのEC事業は、2004年11月に「ヤフオク!」からスタートしました。その後、2008年に楽天市場へ出店してEC事業を拡大。2012年にはfutureshopをご契約いただき、自社ECサイトの運用を本格化しました。現在はAmazonやYahoo!ショッピングなどにも出店しています。

    ファンを増やすため、2012年から自社ECを強化

    「futureshop」のご利用を開始した2012年当初から、株式会社JAM TRADINGは自社ECサイトのコンテンツマーケティングに注力してきました。SEOを意識したブログや、InstagramなどSNSアカウントの運用に加え、近年は店舗スタッフさんのコーディネート投稿にも力を入れています。

    自社ECサイトの運営を強化してきた理由について、福嶋さんは「オンラインで会社のファンを増やすため」と説明しました。

    オンラインで会社のファンを増やすには、お客さまとの距離が近い自社ECサイトを軸にする必要があると考えました。(福嶋さん)

    2021年11月期におけるEC化率は約38%でした。自社ECサイトの売上高は前期比約115%だったそうです。近年は自社ECサイトの売り上げが伸びており、2020年12月には自社ECサイトの月商が4000万円を突破して過去最高月商を更新しています。

    JAM コーディネート

    コーディネート投稿は自社ECサイトの人気コンテンツの1つ。福嶋さんは「スタッフのみんながコーディネート投稿に、積極的に取り組んでくれている」と話した

    JAM SNSアカウント

    Instagramアカウントのフォロワーは約5万人、Twitterアカウントのフォロワーは約1.8万人

    2015年にオムニチャネルを開始

    同社がオムニチャネルを本格的に開始したのは2015年12月のこと。SaaS型のオムニチャネルプラットフォーム「futureshop omni-channel」を導入し、実店舗とECのポイントを共通化するとともに、ECと実店舗の会員データを統合しました。現在はECと実店舗の在庫データの一元化も実現しています。

    futureshop omni-channel

    2015年12月に「futureshop omni-channel」を導入し、実店舗とECのポイントを共通化した

    LINE連携オプションも導入

    futureshop omni-channelと「LINE連携オプション」を組み合わせることで、店頭での会員証バーコード表示がスムーズになった

    オムニチャネルは出店戦略にもプラス効果

    同社がオムニチャネル化を進めている背景には、実店舗とECサイトの両方で買い物をする消費者が増えていることに対応したという理由があります。ただし、それだけではなく、実店舗の出店エリアを拡大していく上でも、オムニチャネルは重要な意味を持っているそうです。

    ECと実店舗のポイントを共通化したことで、ECサイトで商品を購入した全国のお客さまが、実店舗でも使えるポイントを所持するようになりました。つまり、実店舗を新規出店する際に、すでにポイントを所持しているお客さまがそのエリアに一定数いらっしゃるということ。そのことは、弊社の出店戦略における強みになっています(福嶋さん)

    ECと実店舗は売り上げを補完し合う関係

    株式会社JAM TRADINGはオフライン・オンラインの垣根を取り払い、カスタマージャーニーに沿って施策を打っています。認知獲得から比較検討、購入、リピートまでのマーケティングシナリオを設計。ECサイト、実店舗、SNS、メルマガ、LINE、WEB広告、ブログなどを活用して施策を打っていることを解説してくださいました。

    JAMマーケティング施策

    実店舗とECの垣根を取り払い、カスタマージャーニーのフェーズごとに一貫性のあるマーケティング施策を実施している

    実店舗とECの垣根を取り払い、カスタマージャーニーのフェーズごとに一貫性のあるマーケティング施策を実施している

    ECと実店舗の融合を進めたことで、実店舗とECの売上高は補完関係にあるそうです。

    自社ECサイトの売り上げは、実店舗が閉まった夜8時頃から伸びていき、深夜0時ごろにピークを迎えます。また、悪天候で実店舗の売り上げが落ちたときには、自社ECサイトの売り上げが伸びる傾向も見られます。実店舗とECは、売り上げを補完し合う関係です(福嶋さん)

    実店舗はアプリのダウンロードにも寄与

    株式会社JAM TRADING は2021年2月に公式アプリをリリースしました。それまでは店舗ブランドごとにアプリを運用していましたが、リニューアルを機に全ブランドを統合。スタッフコーディネートの閲覧、お気に入り登録、会員ステージ確認などの機能を実装しました。

    実店舗を持っていることは、アプリのダウンロード促進にも効果を発揮しているそうです。

    店舗スタッフが接客する際に、お客さまにアプリを案内するため、実店舗の近隣エリアでアプリのダウンロード数が増える傾向にあります。そして、アプリのダウンロード数が増えればアプリ経由の売り上げも伸びるため、実店舗とECの相乗効果は大きいです(福嶋さん)

    なお、アプリ開発はSaaS型アプリプラットフォーム「MGRe」で行いました。「MGRe」は「futureshop」や「futureshop omni-channel」と連携しているため、futureshopシリーズをご利用中の店舗さまは、アプリ開発とデータ連携をスムーズに行うことが可能です。

    JAMアプリ

    2021年2月に公式アプリをリリースした

    オムニチャネルを支える在庫管理の仕組みとは?

    オムニチャネルを実現する上で欠かせないのが、実店舗とECの在庫データの統合です。

    株式会社JAM TRADINGは実店舗のPOSを独自に開発し、ECサイトの在庫管理システムとデータ連携しました。店頭で商品が売れると、自社ECサイト側の表示が売り切れに変わり、売り越しによる無在庫販売を防ぎます。自社ECサイトで商品が売れた場合は、店頭に通知が届き、店舗スタッフが商品をピッキングして発送します。

    RFIDタグで個品管理

    実店舗とECの在庫データを一元管理するために、すべての商品にRFIDタグを付けて個品管理を行っています。倉庫から各店舗に商品を配送した際や、商品が売れた際に、在庫の動きを1点ごとに把握することが可能です。

    販売データをマーケティングに活用

    個品管理を実現し、実店舗とECの在庫データも一元化したことで、販売データをリアルタイムで把握できるようになりました。売れ筋のカテゴリや色、サイズなどのトレンドを分析した上で、商品提案や買い付けなどに生かしています。

    これまで蓄積してきた販売データは、変えがたい貴重な財産です(福嶋さん)

    株式会社JAM TRADINGのオムにチャネルを支える在庫管理の仕組みを構築するために、約10年にわたり設備投資を続けてきたそうです。

    POSの開発や、店舗とECの在庫を連携するために、10年間でおそらく1億円以上を投資しています(福嶋さん)

    600坪の物流倉庫、撮影と採寸を効率化するツールも導入

    2017年9月には、約600坪の商品管理倉庫が大阪市内で稼働を開始しました。各店舗への配送や、ECの出荷を行っているほか、倉庫内で撮影や採寸、検品、リペアなども行っています。

    JAM倉庫

    検品や商品管理の取り組みを説明する福嶋さん。実物を見ることができないECでは、実店舗以上に検品が重要になると強調した

    株式会社JAM TRADINGは実店舗とECを合わせて常時、数万点の商品を扱っています。しかも古着なので商品はすべて1点もの。ECサイトの掲載数を増やすには、撮影や採寸の効率化が不可欠でした。

    そこで同社は、撮影や採寸の業務の一部を自動化するツールを導入しました。

    採寸データを自動で取り込む「Bluetoothメジャー」

    JAM Bluetoothメジャー

    採寸用のメジャーと、タブレット端末がBluetoothでつながった「Bluetoothメジャー」。採寸した後にメジャーのボタンを押すと、サイズデータがタブレット端末に保存されるため、採寸スタッフは数字をメモする必要がない。

    画像補正を自動化する「フォトオートメーション」

    JAM フォトオートメーション

    商品を平置きにし、フットシャッターで撮影する「フォトオートメーション」。照明の明るさは自動的に設定されるほか、撮影した画像の色補正や明るさ補正、白抜き(商品画像のトリミング)も自動的に行われる。

    ピンチをチャンスに変えたコロナ禍での「店舗スタッフとECの連携」

    2020年の春、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて実店舗の一時営業休止や営業時間短縮に追い込まれました。

    当然ながら、実店舗の売り上げは一時的に激減。しかし、新型コロナウイルスという未曾有の災害は、店舗スタッフさんがECに関わるきっかけになったと福嶋さんは振り返りました。

    緊急事態宣言を受けて、すべてのお店を閉めた際に、店舗スタッフにはEC倉庫での出荷作業などに携わってもらいました。そのことは、店舗スタッフがEC事業への理解を深めるきっかけになったと感じています。(福嶋さん)

    実店舗を休止していた時期に、ECサイトで商品で購入した顧客に対して、店舗スタッフさんが手書きのお礼メッセージを書いて商品に同梱するなど、新しい試みも実施したそうです。その結果、メッセージを受け取った顧客がSNSに感想を投稿するなど、反響が広がりました。

    普段、店舗で接客していたスタッフが、ECを通じてお客さまとやり取りしたことで、ECに対する意識が変わったと感じています。オムニチャネルを成功させるには、店舗スタッフの協力が欠かせません。会社全体の意識改革が進んだという意味で、良い機会だったと思っています(福嶋さん)

    買いやすい自社ECサイトへ、機能も充実

    株式会社JAM TRADINGの自社ECサイトの売り上げが伸びている背景には、商品の探しやすさや、買いやすさにこだわったUIがあります。例えば検索機能は、数万点の中から欲しい商品を見つけられるように、ブランド、カテゴリー、色、サイズ、価格帯、コンディション、年代、柄、素材、取扱店舗など、細かい条件で商品を絞り込むことができます。

    JAM 自社ECサイトの検索

    さまざまなカテゴリで商品を絞り込むことができる

    カゴ落ち対策にも取り組んでいます。futureshopシリーズのオプション機能「カートリカバリー」を導入し、カゴ落ちした顧客にリマインドメールを送信することで、カゴ落ちユーザーの呼び戻しとコンバージョン率の改善につなげました。

    JAM カートリカバリー

    「カートリカバリー」によるコンバージョン率改善効果も紹介した

    AmazonPayやPayPayなど多彩な決済を導入

    自社ECサイトの決済手段として、クレジットカードや銀行振り込み、コンビニ払い、AmazonPay、PayPay決済、d払い、@払いなどを導入しています。さまざまな決済手段を使うメリットについて福嶋さんは、「決済手段を増やすことが購入促進につながる」と強調しました。

    お客さまが商品をカートに入れた後に、使いたい決済手段がないとカゴ落ちにつながります。決済手段を増やすことは、購入率の向上につながると考えています(福嶋さん)

    2020年7月、futureshop omni-channelと連携しているSBペイメントサービス株式会社の決済代行サービスを導入しました。福嶋さんは決済代行サービスを切り替えた理由を次のように説明しました。

    一番の理由は、PayPay決済を使えること。店頭でPayPayを使うお客さまが増えていたので、ECサイトでもニーズがあると思いました。当時、PayPay決済が使えるのはSBペイメントサービスさんだけだったので、切り替えました(福嶋さん)

    JAM 自社EC 決済

    クレジットカード以外の決済比率が伸びており、決済手段を多様化したことが増収に寄与している

    AI不正検知サービスや3Dセキュア2.0も活用して不正注文を防いでいる

    2022年は店頭受け取りを開始

    最後に福嶋さんは2022年の事業計画として、店頭受け取りを開始することに言及しました。

    2022年に店舗受け取りサービスを開始する予定です。店舗受け取りなら送料は無料ですので、お客さまにとってメリットがあります。また、お客さまが商品を取りに行くついでに、店舗やその周辺で買い物をするなど、新しいショッピングの楽しみ方も提案していきたいです(福嶋さん)

    まとめ

    今回のオンラインセミナーで福嶋社長が語ってくださった、在庫管理やECプラットフォームなど「外からは見えない仕組み」のお話は、ビジネスのヒントになることも多かったのではないでしょうか。オムニチャネルを目指す企業さまは、ECと実店舗をうまく調和させている株式会社JAM TRADINGの取り組みを参考にしてみてください。

    株式会社JAM TRADINGも導入している「futureshop omni-channel」は、ECに必要な機能を備え、低予算で実店舗とECのポイントを統合できるオムにチャネルプラットフォームです。オプション機能や外部連携サービスを活用することで、事業規模に合わせて機能を拡張することもできます。そしてfutureshopシリーズは今年、店頭受け取り機能をリリースする予定です。オムニチャネルに取り組みたい企業さまはお問い合わせください。