顔を出さなくても売れるライブコマース!配信の仕組みと成功施策【雑貨・古川紙工】
- 2024.08.012024.08.20
ライブコマースの成功事例を紹介する連載の第2回。今回お伝えするのは、1835年創業の老舗の紙文具メーカーであり、岐阜県美濃地方の特産品「美濃和紙」を使った紙製品や文具を販売している古川紙工株式会社(本社岐阜県)の取り組みです。
同社が行っているライブコマースの特徴は、出演者が顔を出していないこと。社内のデザイナーが描いた似顔絵やイラストを使い、声と手の動きだけで配信しています。
2020年にインスタライブを始めてから約4年。出演者と視聴者が一緒に盛り上がれる企画を行ってファンを増やし、1回の視聴者が300人を超えるライブも出てきました。2023年11月に開始したライブコマースではCVRが10%を超え、視聴者の1割以上が購入することもあるなど、売上にもつながっているそうです。
ライブコマースで成果を上げるために、古川紙工さまはどのような施策に取り組んでいるのでしょうか。ライブコマースに出演している佐藤さんにお話をうかがいました。
(聞き手:株式会社フューチャーショップ サービスプロデューサー/ライブコマースディレクター 稲生達哉 )
【お話をうかがった方】
古川紙工株式会社
EC課 佐藤さん
古川紙工公式オンラインショップの運営を担当。2020年からインスタライブの配信にたずさわり、2023年11月からはライブコマースに月1回出演している。
目次
顔を出さないライブコマースの内容とは?
株式会社フューチャーショップ 稲生(以下、fs稲生):古川紙工さんのライブコマースは、出演者の皆さんが顔を出さず、イラストを使っているのが特徴的ですね。
佐藤さん:顔を出すことに抵抗があるメンバーもいますので、声と手の動きだけで配信するスタイルにしました。ライブに使っている似顔絵やイラストを描いているのは、商品デザインを手がけている社内のデザイナーです。かわいいイラストを描けるデザイナーがたくさんいますので、その強みを活かしています。
fs稲生:ライブコマースでは、どのような配信を行っているのでしょうか。
佐藤さん:主に、新商品やオススメ商品を紹介しています。カメラで卓上を映し、出演者2人で会話しながら、かわるがわる商品を手に取って特徴を説明します。商品の細部をアップで映し、ものによっては実演を交えて使い方をお伝えすることもあります。デザインでこだわったポイントや、イラストの意図など、ECサイトでは伝えきれない商品開発の裏話をしゃべることも多いです。
先日の配信では、折り紙やシール、スタンプなどを使って手帳をデコレーションする「手帳デコ」の実演も行いました。こうした実演を行う際は、視聴者の皆さんに実践していただくために、Instagram投稿キャンペーンなど視聴者参加型の企画を行うこともあります。
fs稲生:ライブコマースの内容は、どのように決めていますか?台本はあるのでしょうか。
一部の質問への回答は、下記のダウンロード資料に記載しています。
- ライブに向けての台本作成や準備をどれぐらいしているのか?
- ライブ経由の購入を促進するために考えた特典内容
- 数字として現れているライブの成果状況
fs稲生:ライブコマースの運営体制を教えてください。
佐藤さん:ライブコマースはEC課の3人で運営しています。デザイナーと私が出演し、別のスタッフ1人がパソコンで配信管理を行います。
ライブでは双方向のコミュニケーションを重視
fs稲生:視聴者さまにライブを楽しんでいただくために、意識していることはありますか?
佐藤さん:双方向のコミュニケーションを大切にしています。出演者が一方的にしゃべるのではなく、視聴者さまから寄せられたコメントにできる限りリアクションするなど、ライブならではの接客を心がけてきました。配信者である私たちと視聴者の皆さんが、一緒に盛り上がれるのが理想です。
ライブコマースの配信に使用している「Live cottage」は、視聴者さまからのコメントを引用して返信できるので、出演者がコメントを拾いきれなかったときは配信管理スタッフがコメントで回答するようにしています。
fs稲生:古川紙工さんのライブコマースは、コメントも盛り上がっていますよね。コメントに対して出演者さんが楽しそうにリアクションしていらっしゃるのも印象的です。
佐藤さん:視聴者さまとのやり取りは、すごく楽しいです。配信している私たちの方が視聴者さまよりも楽しんでいるのではないかと思ってしまうほどです。
fs稲生:出演者さんたちが楽しんでいるからこそ、その雰囲気が視聴者さまにも伝わって、配信が盛り上がるのかもしれませんね。
ライブコマースでの購入促進方法
fs稲生:ライブコマースの売上を伸ばすために、どのような施策を打っていますか?
佐藤さん:視聴者さまにECサイトを使っていただくための施策として、視聴者特典を作りました。
一部の質問への回答は、下記のダウンロード資料に記載しています。
- ライブに向けての台本作成や準備をどれぐらいしているのか?
- ライブ経由の購入を促進するために考えた特典内容
- 数字として現れているライブの成果状況
ライブコマースの企画を充実させるとともに、ライブを視聴するメリットも提供することで視聴者数を伸ばしていきたいと考えています。
また、視聴者さまが商品を欲しいと感じたときに、スムーズに購入ページへ遷移できるように、買い物の手順も説明するようにしています。ライブコマースの冒頭で注意事項などをお伝えした後に、商品情報を閲覧する方法や、購入ページに遷移する手順についても実演しながら解説します。
ライブコマースの成果は「顧客との関係強化」や「ライブ経由の売上」
fs稲生:ライブコマースに取り組んできたことで、どのような成果がありましたか?
佐藤さん:一番の成果は、お客さまとのつながりが強くなったことだと思います。ライブコマースを楽しみにしてくださっているお客さまが、着実に増えていることを実感しています。
また、お客さまのニーズを肌感覚で理解できるようになったこともライブコマースの成果です。私たちが商品を紹介したときに視聴者さまが投稿したコメントの内容や、いいねの数などを分析すると、商品に対するお客さまの本音が見えてくることもあるんです。
弊社ではオンラインショップの会員様向けにアンケートを行い、お客さまの声を集めていますが、そこでは拾いきれないご意見をライブコマースで得ることができています。
fs稲生:数字として表れている成果はありますか?
佐藤さん:ライブコマースの視聴者数は着実に伸びています。1回あたりの累計視聴者数が300人を超える配信も出てきました。
ライブコマースを通して、受注をいただく機会も増えました。
一部の質問への回答は、下記のダウンロード資料に記載しています。
- ライブに向けての台本作成や準備をどれぐらいしているのか?
- ライブ経由の購入を促進するために考えた特典内容
- 数字として現れているライブの成果状況
老舗和紙メーカーがライブコマースを始めた理由とは?
fs稲生:古川紙工さんは、どのような経緯でライブコマースを始めたのでしょうか。
佐藤さん:デザイン課のメンバーが「自分たちが作った商品のことを、自分たちの言葉でお客さまに説明したい」という思いを実現する手段として、2020年にインスタライブを始めたのがきっかけです。
当初は1〜2カ月に1回の頻度で配信していました。視聴者数は70〜100人ほどだったと記憶しています。当時、Instagramアカウントのフォロワー数は1万人弱でしたから、フォロワーさんのおよそ1%が視聴してくださっていたイメージです。
fs稲生:商品の作り手であるデザイナーさんたちの熱意が、インスタライブの出発点だったのですね。
佐藤さん:そうなんです。その後、会社としてインスタライブを正式に販促活動の一環とすることになり、デザイン課や営業課、販促課など部署をまたいだ有志メンバー約10人による「インスタ部」が2020年秋に発足しました。
その後はインスタライブを月1回ほどの頻度で実施していましたが、より、お客様とのつながりをもったライブ配信によるコミュニケーションツールとして、2023年10月にLive cottageを導入し、配信プラットフォームを移行して現在のスタイルになりました。
なお、2023年末の組織変更でインスタ部は廃止になりましたが、広報販促課が中心となってSNS配信、インスタライブを実施しています。
「買いやすいライブ」にするためLive cottageを導入
fs稲生:2023年10月にLive cottageを導入してくださった経緯を、お聞かせいただけますか?
佐藤さん:視聴者さまが商品を買いやすい環境を整えたかったので、Live cottageを導入しました。インスタライブは配信画面から購入ページに直接遷移することができません。視聴者さまが商品を欲しいと思ってもスムーズに買えないことが課題でした。
Live cottageなら視聴者さまはライブを見ながら商品情報を閲覧し、ワンタップでECサイトの商品ページにアクセスできます。この点を視聴者さまも喜んでくださっていて、先日の配信では「商品を直接買えるのが楽しい」といったコメントもいただきました。
fs稲生: Live cottageを選んでくださった決め手は、どのような点だったのでしょうか。
佐藤さん:使いやすい分析機能を備えていることが決め手の1つになりました。ライブコマースの視聴者数やコメント数、商品のクリック数の推移を管理画面で閲覧し、配信内容の改善に活かしているほか、実績を上司に報告する際にも活用しています。
また、「古川紙工公式オンラインショップ」はfutureshop commerce creatorで運用していますので、システムベンダーさんが共通なら何かと便利だと思ったこともLive cottageを選んだ理由です。実際、さまざまな面でフューチャーショップさんにサポートしていただけるので助かっています。
ライブコマースを通じてブランドのファンを増やしたい
fs稲生:最後に、ライブコマースの抱負をお聞かせください。
佐藤さん:ライブコマースを通じて、お客さまとコミュニケーションを深め、ブランドのファンを増やしていきたいです。「古川紙工公式オンラインショップ」はリピーターのお客さまがとても多いので、ライブコマースにもご参加いただくことで、ブランドのことをもっと好きになっていただけたら嬉しいです。
fs稲生:本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
取材を終えて
企業がライブコマースを始める際の課題として「ライブの出演者が見つからない」という悩みをよく聞きます。そういった場合でも、顔を出さない配信スタイルであれば、出演者を見つけやすいのではないでしょうか。今回紹介した古川紙工さまの取り組みは、ライブコマースの可能性を広げるものと言えるでしょう。
古川紙工さまはライブコマースのアーカイブ動画も公開しています。インスタライブとライブコマースを4年以上にわたって行ってきた同社のライブは、完成度が高く、業種を問わず参考になる取り組みが少なくありません。古川紙工さまがどのようなライブを行い、視聴者さまとコミュニケーションを深めているのか、ぜひ参考にしてみてください。
ライブコマース成功事例インタビュー
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