「巣ごもり消費」を捉える企業、Eコマースで経済危機に立ち向かう
- 2020.04.302024.01.30
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が外出自粛を要請したことで、消費者が自宅で買い物をする「巣ごもり消費」が活発化しています。
百貨店やショッピングセンターなど実店舗の売り上げが急激に落ち込む中、Eコマースを軸に「巣ごもり消費」のニーズを捉えていくことは、小売企業やメーカーにとって避けられないテーマではないでしょうか。
実際、実店舗を展開してきた企業がEコマースで売り上げをカバーしようとする動きも出てきました。
◆ SNS活用
◆ ライブコマース
◆ CRM
◆ 店舗スタッフの活躍
などをキーワードに、各社が新たな取り組みに挑戦しています。
外出の自粛を余儀なくされたとは言え、買い物そのものへのニーズは決して衰えていません。
むしろ、旅行やリアルイベントの中止が相次いでいることで、自宅での買い物は貴重な楽しみの1つになっているはずです。
「巣ごもり消費」の動向や、実店舗の減収をEコマースでカバーしようとする企業の取り組み、ECシフトに活用できる補助金制度、そしてこれから小売企業やメーカーに求められるECシフト・デジタルトランスフォーメーション(DX)のあり方などをご紹介します。
目次
巣ごもりのためにリアル店舗の売り上げが急激に落ち込み、販売チャネルの見直しが急務
日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が表面化した2月以降、実店舗の売り上げは急激に落ち込んでいます。
日本百貨店協会が公表した4月上旬の全国百貨店売上高は、前年同月比65%マイナス。
日本ショッピングセンター協会が公表した3月の既存CS売上高は、前年同月比28.0%のマイナスと、記録的な落ち込みとなっています。
外出自粛の影響が本格化した4月以降も、落ち込みが続く見通しです。
商品ジャンル別では日用品や食品は堅調である一方、アパレルや化粧品をはじめとする嗜好品の売り上げが大きく落ち込んでいるようです。
小売市場の約9割を占めるリアル店舗の売上高が大きく落ち込んだことで、小売企業やメーカーは販売チャネルの見直しが避けられない状況。
これまで10年以上にわたり、徐々に進んできたECシフトの流れが、今回の外出自粛によって一気に加速している印象です。
加速する「巣ごもり消費」、お取り寄せグルメやゲーム、音響設備などが好調
外出自粛によってリアル店舗の売り上げが落ち込む中、家庭用ゲーム機が品切れになったり、映画や音楽のストリーミング配信サービスの会員数が急増したりするなど「巣ごもり消費」の拡大が顕在化しています。
また、自宅で楽しめるグルメ商材や、備蓄できる食品に対するニーズも伸びているようです。
弊社が提供しているSaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」のデータを分析した結果、お取り寄せグルメなどの売り上げが伸びていることが分かりました。
また、EC物流企業に最近の出荷動向をヒアリングしたところ、 “ 音響設備及び生活雑貨、加工食品関連の出荷が大幅に伸びている ” という声もありました。
おそらく、自宅で映画や動画を見る消費者が増え、音響設備のニーズが高まっているのでしょう。
自宅にいる事により、生活に必要なアイテムを購入、さらに外出もままならない状況なので、加工食品(常温での保管が可能)関連の購入も増えている状況とのことです。
そして、EC業界全体で見ると、EC倉庫の物量は新型コロナの影響が出る以前と比べてほとんど減っておらず、商品ジャンルによっては物量が増えているケースもあるそうです。
「巣ごもり消費」の拡大を示すデータも
例えば、futureshopの制作パートナーでもある「株式会社いつも.」が実施した消費者調査でも、新型コロナウイルス騒動によってネットショップでの買い物が「非常に増えた」「増えた」と答えた割合の合計は約2割に達しています。
2020年2月〜3月にかけて起きたコロナウィルス騒動によって
ネットショップにおける買物行動は、約19%も利用が増え、実店舗は約32%は利用が減るという結果となった。
データ出典:株式会社いつも.「コロナショック後の消費者動向アンケート」より
また、「株式会社カンム」が2020年3月26日に公表した「巣ごもり消費に関する意識調査」では、ゲームや書籍、コミック、動画、音楽などへの消費支出が「増えた」と応えた消費者の割合が、「減った」と応えた消費者の割合を大きく上回っています。
データ出典:株式会社カンム「巣ごもり消費に関する意識調査」より
「買い物をしたい消費者」のニーズにオンラインで応えるアパレルブランドの取り組み
「巣ごもり消費」の拡大で売り上げが伸びている商品ジャンルがある一方で、アパレルや化粧品などのリアル店舗での売り上げは大きく落ち込んでいるようです。
ただ、リアル店舗で買い物ができなくても、洋服や化粧品を買いたい消費者は必ずいます。
そういった消費者のニーズの受け皿として、Eコマースを活用する動きも広がっています。
例えば、リアル店舗で働いているアパレルの販売スタッフが、コーディネートをECサイトやInstagramなどSNSに投稿し、そのコンテンツを経由してECサイトの購入につなげる取り組み。
最近では、コーディネートの投稿からECサイトへの誘導まで行える「STAFF START」というアプリケーションを活用するアパレルブランドも増えています。
「STAFF START」を提供するバニッシュスタンダードによると、販売スタッフがSNSに投稿したコンテンツからの売り上げは、新型コロナウイルスの影響が出始める前の約2.5倍の水準に増えているそうです。
巣ごもりを逆手に。SNSやLINEで顧客とつながり、ライブコマースも活用してECで販売
ユーザーとの関係を構築するため、InstagramなどSNSを使ったり、LINE公式アカウントのメッセージ機能などを活用したりして、顧客と直接やりとりする企業も増えています。
また、オンラインでの販売促進にライブコマース(ライブ配信)を活用する企業も出てきています。
アパレルブランドを展開するビームスは3月27日にオフィシャルサイト内でスーツやシャツなどのライブコマースを行い、約1時間の配信時間で視聴者数が6000人、売り上げは100万円弱に達したと報じられています。
Instagramやyoutubeのライブ機能など、ライブコマースに使えるプラットフォームは充実してきています。
ライブ配信を経験したことがないスタッフにとってハードルは高いかもしれませんが、実店舗への来店が見込めない現状を踏まえれば、挑戦してみる価値があるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛は、いわば「強制的な自粛」です。
消費者が自発的に外出を自粛しているのではありませんので、消費者の中には「もっと買い物をしたい」というニーズもあるでしょう。
そういった購買意欲が高い消費者に対して、Eコマースを活用して買い物の機会を提供することは、顧客満足度の向上にもつながるはずです。
実店舗の販売スタッフが活躍できる場を提供する
実店舗の営業を自粛した場合、店舗で働いていた販売スタッフのモチベーションを維持したり、店舗とは別の仕事を提供したりすることも大切です。
先ほど紹介した「STAFF START」は、実店舗の販売スタッフが活躍できるツールの1つです。
「STAFF START」を使うと、SNSやECサイトに投稿したコンテンツを経由してECサイトで商品が売れた場合、売上高やアクセス数などの実績を販売スタッフや所属店舗ごとに集計できます。
販売スタッフの貢献度を正当に評価できるため、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
STAFF START昨日のイメージ図
▼ 「STAFF START」の機能の詳細説明はfutureshopの機能ページでご覧いただけます。
また、ライブコマースも販売スタッフの新たな活躍の場になる可能性があります。
日々、顧客と接している販売スタッフは、商品を説明するのが上手いですし、エンドユーザーの気持ちもよく分かっていると思います。
商品を売る力がある販売スタッフがオンラインでも活躍できる環境を整えられれば、企業にとって新たな可能性が開けるかもしれません。
ECでは既存顧客との関係強化がますます重要に
これまで会員をコツコツと増やし、顧客との信頼関係を構築してきたネットショップさまは、新型コロナウイルスのような予期せぬ危機でも売り上げをそれほど落としていない傾向にあることは「futureshop」のデータを見ても明らか。
また、会員基盤があるEC事業者さまはメールマーケティングを行うことで高い反響率を維持しています。
それどころか、会員の在宅率が高まっていることでメールの開封率が以前よりも上がっているショップさまも少なくありません。
会員基盤を持つショップさまは、休眠顧客の掘り起こしなど、あらためて既存客にスポットを当てるべきでしょう。
そしてこのことは、CRMの重要性を再認識する教訓になるのではないでしょうか。
「巣ごもり消費」によって売り上げが伸びている企業は、慢心せずに、新規顧客が持続的に購入(リピート)してくれるようCRMを強化することが必須です。
▼ CRMの活用事例や効果がわかるセミナーレポートです。こちらもご参考にしてください。
新型コロナウイルスの影響があるかどうかに関わらず、リピーターを増やしていくための施策をしっかり打っていくことは、とても大切です。
会員基盤を強化するために日々のCRMに取り組むなど、本質的な施策を着実に実行していくことが、厳しい経済状況を乗り越えるための巧妙になると思います。
国や自治体が企業のデジタルシフトを後押し
企業がECに参入する際、初期投資の負担を懸念して二の足を踏むこともあるかもしれません。
EC事業に参入する場合、クラウド型のECプラットフォームを活用すれば初期費用は数十万円に収まります。
しかも、国や地方自治体の補助制度を活用すれば、初期投資を大幅に抑えることが可能です。
例えば、中小企業や小規模事業者などのITツール導入を支援する「IT導入補助金」では、新型コロナウイルスの影響を乗り越えるための特別枠が設けられました。
Eコマースなど「非対面型ビジネスモデル」への転換に取り組むために、ECサイト構築プラットフォームなどを契約した場合、導入費用の2/3を最大450万円まで受け取ることができます。
2024年度のIT導入補助金には、「ECサイト制作は本類型の対象にはなりません。」との記載がございます。詳しくは下記ページをご覧くださいませ。
12月11日更新 IT導入補助金2024の制度概要について | IT導入補助金2023(後期事務局)
テレワーク支援、補助金・助成金のまとめ記事も参考にしてください。
また、地方自治体も独自の補助制度や助成金を設けていますので、この難局を乗り越えるために、使えるものはしっかり活用しましょう。
ECを軸に新たな販売チャネルに挑戦し、困難を乗り越える
今年3月ごろから「futureshop」のご契約に関するお問い合わせが増えています。
そして、問い合わせしてくださった企業さまの多くが「以前からEコマースにしっかり取り組んでおけばよかった」とおっしゃっています。
新型コロナウイルスの影響がいつ終息するのか、まだ見通すことはできません。
外出自粛が長期化する可能性があることを踏まえれば、今すぐにEC参入やEC事業の本格展開を準備することが必要ではないでしょうか。
苦しい経営環境の中でも、売り上げをカバーしようと今できることにチャレンジしている企業さまはたくさんいらっしゃいます。
これまで経験したことのない困難な状況に直面している企業さまも多いと思いますが、希望を捨てず、一緒に乗り越えていきましょう。
futureshopでは、テレワークの方でも気にせずに相談できる窓口「Webミーティング」をご用意しております。ご自宅からでもご相談可能です。
お気軽にECのプロにご相談ください!!