自社ECの売上1.4倍!みかんの6次産業「早和果樹園」がサイトリニューアルに成功した理由
- 2021.12.012024.01.30
自社ECサイトをリニューアルし、購入導線やコンテンツを抜本的に見直すことで、EC売上高を大きく伸ばした店舗さまがいます。和歌山県産みかんの生産から加工品の製造、販売まで手がけている株式会社早和果樹園です。
同社がリニューアルで重視したのは、自社ECサイトの業績の推移やアクセスデータを分析し、ショップの強みと課題を抽出すること。そして、サイト分析から得られたデータにもとづき、ページ改善の方向性と売上計画を策定することでした。
2020年における自社ECサイトの売上高を前年比1.4倍に伸ばすことに成功した早和果樹園さまが取り組んだこととは。
株式会社フューチャーショップが2021年9月に開催したオンラインセミナー「GoogleAnalytics活用でCV最大化 売上につながる分析/計画/導線改善」では、株式会社早和果樹園のEC事業を担当している青山航大さんをゲストにお招きし、サイトリニューアルを支援した株式会社二天紀の山本頼和さんとのトークセッション形式でサイトリニューアルの裏側を語っていただきました。
自社ECサイトのリニューアルを成功させるヒントが満載だったオンラインセミナーをレポートします。
株式会社二天紀 山本頼和さん(写真左)、株式会社早和果樹園 青山航大さん(写真右)
目次
株式会社早和果樹園とは?
株式会社早和果樹園はみかんの生産から加工品の製造、販売まで行っている農業法人です。約8ヘクタールの自社農園でみかんを生産しているほか、ジュースやゼリーなどの加工品を自社工場で製造。商品は百貨店などへの卸売りに加え、直営店や催事(試食販売)、ECサイトでも販売しています。
農産物の生産から加工、販売まで手がける「6次産業」の成功企業として数々のメディアに取り上げられてきた同社は、2020年に第21回全国果樹技術・経営コンクールで最高賞の「農林水産大臣賞」を受賞するなど、農業や産業に関わる分野で行政からも高く評価されています。
みかんの生産から加工品の製造、販売まで手がけている
※画像出典:セミナーのスライド写真を編集部にて再構成
株式会社早和果樹園は2000年の設立(法人化)以来、売上高を着実に伸ばしてきた
※画像出典:株式会社早和果樹園提供
自社ECサイトをリニューアルした4つの理由
株式会社早和果樹園が自社ECサイトを立ち上げたのは2007年のこと。当初はジュースなどの加工品を中心に売り上げを順調に伸ばしました。ただ、2014年以降は自社ECサイトの売り上げの伸びが鈍化し、自社ECサイトのシステムにも課題を感じていたそうです。
EC事業をテコ入れするため、自社ECサイトをリニューアルすることを2019年に決断。準備期間を含めて約1年を費やし、2020年9月に自社ECサイトをリニューアルオープンしました。その際、ECシステムをfutureshop(commerce creator)にリプレイスしていただいています。
2014年から2019年までの自社EC売上高の伸びは緩やかだったが、自社ECサイトをリニューアルした2020年は売上高が前年比1.4倍に増加し、踊り場からの脱却に成功した
青山さんは2020年3月にEC事業部へ異動し、着任早々にサイトリニューアルを担当しました。自社ECサイトをリニューアルした理由について「売上拡大に向けて打ち手を増やしたかった」と説明。リニューアルの主な目的として次の4つを挙げました。
①スマホ最適化・・・スマホからのサイト流入が多いにもかかわらず、スマホでは操作しにくい(買いにくい)ページだったため、スマホ最適化に取り組みたかった
②業務の効率化・・・リニューアル以前のECサイトは、システムの仕様上、PC用とスマホ用のページを別々に制作する必要があり業務負担が重かった
③提案の幅を増やしたい・・・リニューアル前のカートは提携している外部サービスが少なく、打てる施策が少ないと感じていた。顧客に対する商品提案の施策の幅を広げたかった
④固定費の削減・・・リニューアル前のカートは固定費や注文手数料が高かったため、コストを抑制できるカートに変更したかった
リニューアル前に過去5年の受注データを分析
早和果樹園さまは自社ECサイトのリニューアルにあたり、サイトのアクセスデータや受注データの分析に力を注ぎました。分析から導き出したデータにもとづき、ECサイトの強みや改善点を洗い出すためです。
例えば、自社ECサイトの過去5年分の受注データを分析した結果、リピート売上は毎年着実に増えているものの、新規顧客の売上高は毎年ほぼ一定であることが判明しました。このデータから、株式会社二天紀の山本さんは、自社ECサイトの売り上げを大きく伸ばすには「新規顧客の獲得数」を増やすことが必要だと判断。新規顧客を獲得するための商品戦略や、広告投資の計画立案を支援したそうです。
ECサイトのリニューアルを行う際は、ECサイトの現状を分析するだけでなく、過去数年間の受注データを分析することも大切です。業績がどのように推移してきたのか、過去からの流れを見ることで次の打ち手も見えてきます(山本さん)
過去5年間の受注データの分析結果を踏まえ、売り上げを伸ばすには新規顧客の獲得数を増やすことが重要だと判断した
株式会社二天紀 代表取締役 EC事業コンサルタント 山本 頼和 氏
2001年、コンサルタントを志して業界に飛び込む。当初は、主に「実店舗」の売上アップコンサルティングを提供し、3年間で20業種以上を経験。導入期・成長期・成熟期・安定期といったステージごとの提案を経て、特に得意とするのは、成長期を過ぎ、成熟期・安定期に突入した業界へのコンサルティング。2003年からはネットショップのコンサルティングに従事するようになり、100企業以上のネットショップ業績向上に従事。事業規模は年商1億円から年商800億円の上場企業のEC事業まで幅広い。コンサルティングの信条は「収益性」「安定性」「永続性」を満たす事業支援。2009年から10年間、フューチャーショップユーザーさま向けの勉強会「futureshop ACADEMY」・セミナーにて、750回以上の登壇、参加者数はのべ6000人を越える。
Googleアナリティクスでアクセスデータを分析
自社ECサイトのアクセスデータの分析にはGoogleアナリティクスを活用しました。さまざまな指標を分析する中で、特に重視したのは、「お客さまがどのような動きでコンバージョンに至ったのかをデバイス別に分析すること」(山本さん)でした。
例えば、スマートフォンでサイトを見ている人は、決済完了までにどのような動き(ページ遷移)をしているのか。PCとスマホでは、コンバージョンに至るまでの導線にどのような違いがあるのか。そういった「コンバージョンに至る導線」を重点的にチェックすることで、ECサイトの強みや改善点を特定したそうです。
サイト分析の結果、早和果樹園さまの自社ECサイトの強みの1つとして、商品ページを訪問したユーザーのコンバージョン率が高いことが判明。その強みを生かすため、リニューアルにおけるページ改善の方向性は「商品ページの訪問者数を増やす」ことに力点を置きました。
商品ページを訪問したお客さまのコンバージョン率が高いという強みを生かすため、ECサイトを訪問した人が商品ページを見てくれるようにコンテンツや導線を改善しました(山本さん)
コンバージョンに至るまでのユーザーの動きを把握するため、Googleアナリティクスを活用してさまざまな数値を分析した
商品ページごとの分析
注力商品(ページ改善や販促を優先的に実施する商品)を決定するため、商品ごとの新規獲得数や売り上げなども分析しました。早和果樹園さまは現在、主要10品目で売上構成比の30%を構成するように自社ECサイトの売上計画を策定しているそうです。
さらに、商品ページごとのコンバージョン率を計算し、目標注文件数を達成するために必要な訪問数を商品ページごとに算出するなど、各種KPIも設定しました。
商品ページごとの訪問数やコンバージョン数などを分析し、注力商品を決定した上で、各種KPIを設定した
※画像の一部を編集部にて加工しています
サイトの階層・構造の見直しやサーチコンソール分析も実施
リニューアルではECサイトのカテゴリー分けや、各ページのURLなどもゼロから見直したそうです。また、Googleサーチコンソールでモバイルフレンドリーテストを実施するなど、多角的にECサイトの強みと課題を洗い出しました。
ECサイトを作った後は、サイトの階層や構造を見直す機会が多くはありません。ECサイトのカートを変えるときは、サイト構造を見直す良いタイミングです(山本さん)
ページ改善よりも先に数値目標のイメージを固める
山本さんはECサイトをリニューアルする際のポイントとして、「ページ改善よりも先に、数値のイメージを固めることが大切」と強調しました。
リニューアルを実施することで、ECサイトのどの数字を、どう改善したいのか。まずは数値をイメージすることが大切です。そのためには、受注データを紐解き、新規顧客と既存顧客のそれぞれの客数、注文回数、平均単価、平均回数、LTVなどを複数年にわたって分析することが必要です(山本さん)
新規顧客と既存顧客のそれぞれの受注データについて、2015年から2019年までの年次推移を分析し、2020年以降の業績目標を決めた
※画像の一部を編集部にて加工しています
リニューアル後の売上計画を立てる方法とは?
セミナーでは、リニューアル実施後の売上計画の立て方も解説してくださいました。早和果樹園さまは売上高を「集客軸」「顧客軸」「商品軸」の3つの軸に分けて管理し、進捗状況や改善点を把握しているそうです。
①集客軸・・・「受注金額=集客数×転換率×客単価」という公式に従って売上高を分解し、目標とする受注金額を達成するためには「集客数」「転換率」「客単価」のどれを、どの程度改善すれば良いか常にチェックしている
②顧客軸・・・「新規客数」と「リピート客数」のそれぞれで顧客数を集計し、計画に対する進捗率を把握している
③商品軸・・・売上構成比の上位30%を占める商品群について、「商品単価」「商品ページの訪問数」「注文件数」「セット数」「商品ページCVR」「受注金額」をチェックしている
自社ECサイトの売上高を一括りに見るのではなく、集客軸、顧客軸、商品軸の3つの軸で分析することで、進捗管理と課題の発見を行いやすくなりました。売上高が計画に達していないときは、3つの軸のどこに問題があるのかを特定し、数値を改善するための施策を考えています(青山さん)
売上高の計画は、集客軸・顧客軸・商品軸の3つの軸で計画を立てている
※画像の一部を編集部にて加工しています
青山さんはEC事業の売上高だけではなく、粗利額の進捗率も毎日把握しています。粗利額の推移を手書きで毎日記録し、グラフを作成することで、月次計画に対する進捗率を可視化しているそうです。
手書きで毎日グラフを書いているので、計画に対する進捗率が常に頭に入っています。進捗率が悪いときは早期に気づくことができますので、少し手間はかかりますが手書きも悪くないと思います(青山さん)
手書きのグラフで粗利計画に対する進捗を毎日記録している
サイトのリニューアル後、Googleアナリティクスで定期的に確認すべき指標について解説する山本さん
会員登録の促進にも注力
早和果樹園さまは自社ECサイトのリニューアル後、会員登録を増やすための施策にも力を注いでいます。例えば、購入ページの顧客情報登録画面に会員特典を表示し、会員登録のメリットを訴求しています。
会員を増やすには、会員登録のメリットをお客さまにしっかり説明することが重要です。メルマガ会員も同様で、特典や配信頻度、内容などを丁寧に説明しましょう(山本さん)
顧客情報の入力画面に会員登録のメリットを表示している(commerce creatorの標準機能で実施)
EC未経験から「ネットショップ道場」で成長
青山さんは2020年4月にEC事業部に異動し、着任早々に自社ECサイトのリニューアルに携わりました。現在は自社ECサイトの運営責任者として予算管理から施策の設計、実行まで行っています。
EC事業部に異動する以前は、卸売りを行う営業部門で働いており、ECはまったくの未経験だったという青山さん。ECについて勉強するため、山本さんが主催している実践型勉強会「ネットショップ道場」に2020年10月から1年間参加しました。
青山さんは「ネットショップ道場」に参加したことで、サイト分析のノウハウが身についたことを実感しているそうです。
Googleアナリティクスを活用してECサイトを分析する方法や、どの数字を見て、そこからどのように施策を考えるのかといった実践的な知識を学ぶことができました(青山さん)
青山さんの成長ぶりを絶賛した山本さんに対し、青山さんは「サイト分析の方法について深く理解できたことが、成長につながったのかもしれません」と応じました。
まとめ
今回のセミナーで早和果樹園さまの成功事例を聞き、自社ECサイトの売り上げを伸ばす上で「分析」の重要性を再認識しました。特に、ページ改善に取り組む前の「課題点を見つける力」を養うことが、自社ECサイトを伸ばす鍵になるのではないでしょうか。
株式会社フューチャーショップは、店舗さまのスキルアップ支援を目的とした勉強会やセミナーを多数開催しています。青山さんが参加した「ネットショップ道場 for futureshop」のほか、futureshopユーザーさまを対象とした勉強会「フューチャーショップアカデミー」など、目的や合わせた勉強会やセミナーを実施しています。
futureshopの店舗さま以外がご参加いただける無料セミナーも随時開催していますので、EC事業を伸ばしたい、成功させたい企業さまはぜひご参加ください。