ECでレコメンドエンジンはどう活用する?ECサイトの購買率を上げるシステムの仕組み

レコメンドエンジンとは、一定のルールでユーザーにおすすめの商品やコンテンツを提示し、数多くの商品やサービスの中からお気に入りを選ぶ際の手助けをしてくれるシステムです。レコメンドエンジンによって、サイト運営側は売り上げや閲覧数を増加させ、ユーザーはより自分の気に入る商品やコンテンツを発見しやすくなります。

この記事では、ECサイトのレコメンドエンジンについて、概要や仕組み、メリット・デメリットなどをご紹介します。

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レコメンドエンジンとは?

レコメンドエンジンとは、ECサイトやWebサイトで、ユーザーにおすすめの商品やコンテンツを表示するためのシステムです。

「レコメンド(recommend)」とは、「勧める」「推薦する」という意味で、「おすすめの商品」を表示することを「レコメンデーション」と言います。レコメンデーションを実現するためのシステムが「レコメンドエンジン」です。

レコメンドエンジンは、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴などから一定のルールに従って、関連性のある商品やコンテンツ情報を表示します。
ルールにはいくつかの種類があり、ECサイトで「この商品を買ったお客様は、こちらの商品も買っています」と表示されるのも、レコメンドシステムの機能のひとつです。ユーザーごとにクーポンを提供したり、おすすめ商品のランキングを提示したり、興味のありそうなコンテンツを表示させることもできます。

レコメンドエンジンは、主にECサイトやニュースサイト、情報ポータルサイトなどに導入されています。
ECサイトではユーザーの好みに合ったおすすめの商品を表示して購入を促し、ニュースサイトでは、ユーザーごとに興味を引くような情報を表示して閲覧数アップや離脱回避に貢献します。
求人情報や不動産情報などの情報ポータルサイトでは、似たパターンの案件を表示してマッチングの精度を高めます。

どの場合もサイト運営側だけでなくユーザーの利便性も向上させています。

レコメンドエンジンの種類

レコメンドエンジンには、大きく分けて「ASP型」と「オープンソース型」の2つがあります。両者の特徴を解説します。

ASP型

レコメンドエンジンの多くはASP型です。ASPは「アプリケーション・サービス・プロバイダ(Application Service Provider)」の略で、Webアプリケーションとして提供されるソフトウェアやサービスです。

ASP型はWebサイトに追加するだけで簡単に導入ができ、多くはクラウド型のためサーバーは不要です。開発の費用がかからないためコストも抑えられ、個人サイトや小規模サイトでも気軽に利用できます。
ただし、ほとんどのASP型レコメンドエンジンは、完成したツールをそのまま導入するのでカスタマイズはできません。

オープンソース型

オープンソース型のレコメンドエンジンは、高機能なサービスが多く、大規模サイトに向いています。自社用にカスタマイズができ、詳細なアクセス解析も可能です。
ただし、オープンソース型のレコメンドエンジンは種類も少なく、日本製のものはほとんどありません。自社でカスタマイズするには、知識やスキルが必要です。

また、ECサイトを構築するときにフルスクラッチでレコメンド機能を追加することもできます。これはオープンソース型以上に時間と費用と知識が求められます。
ECサイトを構築するためのシステムにレコメンド機能が搭載されていることもあります。その場合、コストはかかりませんが、機能的には専用のレコメンドエンジンより使い勝手が悪いことがあるので、注意が必要です。

レコメンドエンジンの仕組みと主な機能

レコメンドエンジンのポイントは、おすすめする商品やコンテンツを選ぶための仕組みです。ここではレコメンドエンジンの仕組みと主な機能をご紹介します。

協調フィルタリング

協調フィルタリングはレコメンドエンジンでもっともよく使われている仕組みです。ユーザーの閲覧履歴や行動履歴を基にして、商品やコンテンツをおすすめする方法です。
サイトで表示される「この商品を買ったお客様は、こんな商品も買っています」「この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます」といった表示は、協調フィルタリングを利用しています。

協調フィルタリング(アイテムベース)

購買履歴(アイテム)を基にして、関連性の高い商品やコンテンツをベースにレコメンドします。ユーザーの購買履歴を分析し、同じような購買履歴のある別のユーザーが購入した商品をおすすめする手法です。

協調フィルタリング(ユーザーベース)

ユーザーの行動履歴を基にして、行動履歴が似たほかのユーザーの購入・閲覧したアイテムをレコメンドします。
例えば、あるユーザーが「商品A→B→C」と閲覧した場合、違うユーザーが「A→B」と閲覧したら「似た趣味嗜好を持つユーザー」と判断して「C」の商品をおすすめします。

ルールベースレコメンド

特定の商品やコンテンツ情報Aが購入・閲覧されたら、それに関連する情報Bを表示します。「Aに対してBをどれにするか」などのルールはサイト運営者が指定できます。主に期間限定のおすすめアイテムやキャンペーンのレコメンドに使われます。

パーソナライズドレコメンド

ユーザーの閲覧履歴や購入履歴といった行動履歴から嗜好性を分析して、そのユーザー向けのおすすめ商品を表示する方法です。
ほかのユーザーの行動を基にすることはなく、特定のユーザーの嗜好だけをベースに分析するので、より好みに合った商品やコンテンツをおすすめできます。「あなたにおすすめの商品はこちら」などの形で表示されます。

近年では、いくつかの手法を組み合わせて、お互いの弱点を補うハイブリッド・レコメンデーション・システムが主流になりつつあります。

レコメンドエンジンのメリット

多くのWebサイトが導入しているレコメンドエンジンには、大きく3つのメリットがあります。それぞれの内容をご確認ください。

商品の購買率の向上

ユーザーの興味や関心が高い商品やコンテンツの情報を表示できるので、商品の購買率が向上します。興味のありそうな商品を提示することで、潜在的なニーズが顕在化し、別の商品も買ってもらえる可能性があるためです。
これを「クロスセル」と言います。クロスセルによって客単価がアップすれば、サイト全体の売り上げが向上します。

また、ECサイトだけでなく、オウンドメディアの場合でも、レコメンドエンジンによりユーザーの興味が高いと思われるコンテンツを表示できるので、PV率、回遊率、滞在時間などのアップが見込めます。また、直帰率の減少も期待できるでしょう。

レコメンドエンジンによる「おもてなし」

レコメンドエンジンによるおすすめ商品やコンテンツの提案は、実店舗での接客に相当します。レコメンドエンジンは販売員と異なり、サービスが自動化されているので、常に一定のサービスレベルを保つことができます。
また、潜在的なニーズへの提案や高いサービスレベルの接客により、ユーザーの信頼を得ることも可能です。それによってユーザーは優良顧客となり、リピート率の向上が期待できます。

買い物を楽しめる

ユーザーにとっても、レコメンドエンジンは大きなメリットがあります。目的の商品に合わせた関連商品や自分の好みに合いそうな商品を提示してくれるので、ウィンドウショッピングと同じように買い物を楽しむことができます。

レコメンドエンジンのデメリット

レコメンドエンジンにはメリットのほかに、デメリットもあります。2つのデメリットについて確認し対策を講じましょう。

コールドスタート

パーソナライズドレコメンドやユーザーベースの協調フィルタリングを利用したレコメンドエンジンでは、導入後しばらくの間はユーザーについてのデータが溜まっていないため、レコメンドエンジンの精度が低くなります。これを「コールドスタート」と言います。

レコメンドエンジンは蓄積されたデータを基にしているので、コールドスタートは避けられません。データが足りない間は、ほかのアルゴリズムを組み合わせるなど、コールドスタートを補う工夫が必要です。

少カバー率問題

レコメンドエンジンは大量のデータを基にしたシステムのため、ユーザーに関するデータが少ない商品やコンテンツ、いわゆるマニア向けの商品やコンテンツなどは、うまくユーザーにおすすめすることができません。これを「少カバー率問題」と言います。

ECサイトにレコメンド機能を導入する際の注意点

ECサイトにレコメンド機能を導入する際の注意点は次の2つです。

運用目標が曖昧になりがち

レコメンド機能を導入する目的が曖昧になる傾向があります。そのため、事前に目的・目標を整理する必要があります。

具体的には「売上向上」「導入単価の向上」「リピーター獲得」などの目的を決めましょう。目的が明確になれば「どのような機能が必要か」が把握しやすくなるため、レコメンド機能が効果的に活用できるようになります。

運用に十分なデータがあるかを事前に確認しておく

レコメンド機能は、ユーザーの行動履歴のデータ数が少ないと正確なレコメンドができません。そのため、レコメンド機能を運用するのに十分なデータがあるかを事前に確認しておきましょう。

また「閲覧数が少ないコンテンツ」や「購入頻度が低い商品」などは、掲載されにくく「少カバー率問題」と呼ばれています。商品自体の質は高くても、マニア向けやニッチな商品で購入者が限定される商品の場合、レコメンドの対象になりにくい傾向があります。

「AIによる自動学習を持ったレコメンド機能」がトレンド

近年、顧客の購買データをもとにAIが学習し、最適にレコメンドをする機能が市場に出ています。

futureshop AI Recommendでも自動学習・最適化を実施

futureshopの次世代型レコメンド機能である「future AI Recommend」でも、自動学習・最適化が実施できます。

具体的には、以下の流れで最適化できます。

  1. データの収集・蓄積:ECサイトに登録されている商品データや、ECサイトにおける顧客の行動データ(商品閲覧、お気に入り登録、購入など)を収集・蓄積する
  2. 機械学習:上記で収集・蓄積したデータにもとづき、複数の機械学習モデルを使用し、商品ごとに顧客との関連度の高さをスコアとして算出する
  3. レコメンド候補の生成:顧客の行動履歴や、ECサイトに滞在しているときの状態(閲覧中の商品やカートに入れた商品など)に合わせて、購入されやすい順に商品リストを生成する
  4. 絞り込み(フィルター):あらかじめ設定した表示条件や除外条件にもとづき、レコメンド候補のカテゴリや商品を絞り込む
  5. レコメンド表示:表示件数やデザインなど、あらかじめ設定した条件にもとづいてECサイトのレコメンド枠に商品を表示する

future AI Recommendは「レコメンド枠に表示された商品がクリックされたか」や「購入の有無」といったデータを収集して蓄積するため、運用するほど精度が高まります。また、一般的なレコメンドのデメリットの1つである「コールドスタート」を回避できるのもメリットです。

AIを駆使したレコメンド機能の成功事例

futureshopのお客様のうち、アパレル店舗の事業者様は「ECサイトのコンバージョン率」が導入前と比べて10%以上向上しました。また文具店の事業者様は、従来のレコメンド機能からAI搭載型に変更した結果、ECサイト全体の回遊率が12.7%向上しました。

future AI Recommendの仕組みや効果について、詳しくはこちらをご覧ください。

AI活用でECのレコメンドはどう変わる?事例と効果を専門家が解説【future AI Recommendセミナー】

レコメンドエンジンはリピートユーザー獲得に効果的

レコメンドエンジンを活用すれば、ユーザーの好みや興味に合った商品やコンテンツを表示してくれるので、リピートユーザーの獲得による客単価や閲覧数の向上が期待できます。
しかし、レコメンドエンジンが効果的に働くのは、商品やコンテンツが豊富にある場合です。サイト開設時からレコメンドエンジンを入れても良いですが、データを蓄積するためには、商品やコンテンツの数を増やすことも重要です。

一定のクオリティを保った商品やコンテンツが豊富にあれば、それぞれのユーザーに合った商品を選んで効果的に表示でき、レコメンドエンジンを十分に活用できるでしょう。

futureshopでも、レコメンド機能をお使いいただけます。