ECモールとは?ECサイトとの違い、各サービス比較などを解説
- 2017.07.122024.10.11
いつ、どこにいても買い物ができることで近年利用者が増大し、実店舗でも導入が定着しつつあるECサイト。中でも、注目を集めているのがECモールです。実店舗を立ち上げることに比べ簡単に出店できることから、参加する企業やブランドが増加しています。
ECサイトを一から制作してリリースするのは時間と手間がかかりますが、ECモールならすぐに出店してネット販売を始められます。
今回は、ECモールの種類やECモールならではのメリット、競合サイトと差別化を図り出店を成功させるコツなどについてご紹介します。
目次
そもそもECモールとは?
ECモールとは、Web上のショッピングモールのことで、ひとつのサイト内に複数のネットショップが集まっている大型店舗型のECサイトです。ネット上の百貨店をイメージするとわかりやすいでしょう。
自社で持つ独立したECサイトは、ブランドイメージに合わせてデザインやカスタマイズが自由にできます。しかし、オープンソースやASPを利用せず一からサイトを構築する必要があるため、プログラミングなど専門的な知識が必要です。
ECモールの場合は、サイトを構築するベースの部分がプラットフォーム側から提供されるため、一からサイトを構築したり、ドメインを取得したりする必要がありません。
また、独立したECサイトはオリジナル店舗のため、最初のうちは認知度が低く、集客に苦戦しがちですが、ECモールはすでに多くのユーザーが利用しています。そのため、出店時からすぐに集客が可能です。
ただし、ECモールに出店する場合は、テナント料や決済手数料などが発生しますので、条件についてはあらかじめ確認しておくようにしましょう。
ECモールとECサイトの違い
ECモールは、複数のネットショップが集まって販売するオンラインモールです。一方ECサイトは、企業が独自で管理する販売プラットフォームです。
ECサイトは1つの企業が運営しているため、自社のブランドイメージを反映させられます。また自社の「商材」や「ユーザー層」に応じて、柔軟にマーケティング施策が実行できます。モールECで必要になる「テナント料」などのマージンも発生しないため、利益率が高いのもメリットです。
しかし、ECモールと比較すると「成果が出るまで時間がかかる」「集客力が劣る」といった面もあります。ECモールとECサイトはそれぞれに強み・弱みがあるため、理解したうえで選ぶ必要があります。
ECモールの種類
ECモールは、大きく2つの種類に分けられます。代表的なECモールである「Amazon」と「楽天市場」を例に、それぞれの特徴とメリットをご紹介します。
テナント型
テナント型は、数多くのECサイトが並んで出店しているタイプのECモールで、実際のショッピングモールの形態に似ています。具体的な例としては、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などがテナント型に当てはまります。
比較的自由にデザインのカスタマイズができる点が特徴で、店舗ごとに独自性を出せるというメリットがあります。しかし、サイトのデザインや商品を登録する手間がかかるため、出店までに時間がかかるケースもあります。
マーケットプレイス型
マーケットプレイス型は、ECモール上に商品のデータのみを掲載するタイプです。出店というよりも「出品」というイメージに近く、「Amazon」はマーケットプレイス型の代表的なECモールです。
実際の商品データはECモール側が管理しており、ECサイト運用の負担が少ないというメリットがあります。また、プロモーションもECモールが請け負ってくれるため、初期費用として広告費をかけずにネットショップを始めることができます。
主要なECモール5社を比較
国内における主要なECモールは、以下5つのモールです。
- Amazon
- 楽天市場
- Yahoo!ショッピング
- auPAYマーケット
- Qoo10
Amazon
引用:Amazon.co.jp
Amazonは「アマゾンジャパン合同会社」が運営する国内最大規模のECモールです。「管理画面がシンプルで操作しやすい」「商品数が1点から出店できる」といった特徴から、EC事業者が運用しやすい体制が整っているECモールです。
しかし商品ページがシンプルなため、ショップの独自性が打ち出しにくい傾向があります。競合も多く、ほかのECモールと比べて「価格競争が激しい」「リピーターが獲得しにくい」といった面もあります。
楽天市場
引用:楽天市場
楽天市場は「楽天グループ株式会社」が運営するECモールです。グループ共通の制度である「楽天ポイント」や「楽天ペイ」があり、高いポイント還元率や独自のキャンペーンなどで多くのユーザーの囲い込みに成功しています。
しかし、出店するうえで「料金体系が複雑」「出店料が比較的高い」といったデメリットがあります。そのため売上が思うように伸びなければ、想定より利益率が下がる可能性がある点に注意が必要です。
Yahoo!ショッピング
引用:Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは「LINEヤフー株式会社」が運営するECモールです。Amazonや楽天市場と比べると規模は小さい一方で、出店にかかる初期費用と月額費用が無料です。そのため、ほかのECモールよりもコストを抑えて出店できるというメリットがあります。また、日本最大級のポータルサイトである「Yahoo! JAPAN」からの流入が期待できる点も強みです。
auPAYマーケット
引用:auPAYマーケット
auPAYマーケットは「auコマース&ライフ株式会社」と「KDDI株式会社」が共同で運営するECモールです。ファッションやコスメ、家電、グルメといった幅広いジャンルの商品を扱っており、多様なユーザーのニーズに応えられる販売プラットフォームです。
KDDIが提供している「auPAY」との連携が可能であり、スマホキャリア「au」のユーザーを対象にした「ポイント付与」や「特典」といったサービスも提供しています。一方でフリーメールアドレスが使用できないため、出店する場合は独自ドメインの取得が必要な点に注意しましょう。
Qoo10
引用:Qoo10
Qoo10は「eBay Japan合同会社」が運営するECモールです。ファッションやコスメ、家電、食品、生活雑貨といった幅広い商品を扱っており、10代~20代の女性に多く利用されています。グローバル展開しているのが特徴であり、出店すると「中国」や「シンガポール」「インドネシア」などのアジア諸国に向けて販売できるのが特徴です。
一方で自然検索からの流入よりも、メルマガやサイト内の「プロモーション枠」からのアクセスが多い傾向があります。そのため、広告の活用が売上を左右する面もあります。
ECモールに出店するメリット
自社でECサイトを運営している企業も、ECモールに数多く出店しています。ECモールへの出店はどのようなメリットがあるのでしょうか。
集客力が高い
ECモールのメリットのひとつが、集客力の高さです。大手ECモールでは、数千万人単位のアクティブユーザーを抱えており、ECモール自体に圧倒的な集客力があります。そのため、出店してすぐに集客が見込めるという点は、新規出店者にとって大きな魅力でしょう。
また、ECサイトは実際に手にとって商品を確認できないため、購入してもらうためにはユーザーから信頼を得る必要があります。
大手ECモールならば、ユーザーからの信頼性も高いため、その中で出店しているECサイトも信頼してもらいやすくなります。ECサイトの立ち上げからユーザーに商品を購入してもらうまでの信頼性獲得には大きな労力がかかるため、これを割愛できるのはとても有利です。
大型ECモールではサポートがある
大型ECモールの場合、出店者はさまざまなサポートを受けられます。例えば、サポートによってサイト管理の負担が減少するため運用が楽になり、担当者は商品の確保だけに集中できます。
特にECモールには競合サイトが多く、他社との差別化に注力する必要があるため、こうしたサポートは不可欠といえるでしょう。ネットショップの運営が初めての人でも、安心して出店できます。
実店舗がなくても出店できる
実店舗を持っていなくても、EC店舗を出店できます。そのため、企業だけでなく、個人でもECモールに出店可能です。
ただし、ECモールによっては、出店基準で「本業として商品を取り扱っていること」を証明する必要があるため、あらかじめ出店の条件を確認しておきましょう。
ECモールのデメリット
ECモールへの出店はメリットだけでなく、デメリットもあります。自社の利益率や差別化戦略に影響を及ぼす可能性があるため、1つずつ内容を確認してください。
顧客データを取得できない
ECモールへの出店では、販売者が顧客データに直接アクセスすることが制限されるため、マーケティングや顧客体験のカスタマイズにおいて不利になるデメリットがあります。
一般的にモール側が顧客情報の所有権をもつため、出店者側で顧客情報を自由に利用できません。そのため、顧客の購買履歴や嗜好などの情報が蓄積されず、独自性のあるマーケティング施策や販促活動が難しくなります。
モール側へのロイヤリティなどのコストがかかる
ECモールへの出店には、初期出店料や月額出店料といった固定費用が必要です。さらに、売上に応じてロイヤリティや販売手数料といった変動費用も支払う必要があります。
料金体系は数%から10%以上とモールによって異なりますが、予想以上にコストがかさむことも少なくありません。特に、売上高に連動する手数料は、商品の販売が好調なほど支払額が増加するため、利益率への影響が大きくなります。
ECモールを利用する際は、費用体系を十分に理解し、自社の収支計画に組み込んで運用することが重要です。
ブランディングしにくい
ECモールでは、出店者が自社のブランドイメージや顧客体験の実現が難しいデメリットもあります。なぜなら、モールのデザインやルールに準拠する必要があり、自社ブランドの個性を十分に打ち出せないためです。
また、ECモールの存在感が強いため、購入者の記憶に残るのはモールそのもののブランドであり、個々の店舗の印象は薄れがちです。
たとえば、Amazonで商品を買ったユーザーは、具体的にどの店舗で購入したかまで正確には覚えていないでしょう。楽天市場のような、店舗の存在感が比較的高いモールでも、「楽天で買った」という認識が先行する傾向にあります。
つまり、ブランド力での差別化が難しく、価格競争に巻き込まれやすい環境といえるでしょう。
競争率が高い
ECモールでは、施策として割引率の高いものや、モール内検索のアルゴリズムとしてよく売れているものの順位が上がりやすいため、価格競争に陥りやすい傾向にあります。
さらに、独自のキャンペーンや値引きも、モールの方針に従って実施する必要があり、思うような効果を得られない可能性があります。
価格を下げれば一時的に販売数は伸びるかもしれませんが、利益率の低下は避けられません。高い競争率から抜け出すために、自社ECサイトのみで運営する方針を選択する企業は増えてきています。
ECモールに出店する際の注意点
ECモールに出店する場合、以下4つの注意点を理解したうえで取り組む必要があります。
- 自由にカスタマイズできない
- 競争率が高い
- ブランディングしにくい
- リピーターを獲得しにくい
自由にカスタマイズできない
ECモールへの出店は、プラットフォームが提供するシステムやサービスの範囲内でしか対応できません。つまり、店舗運営の柔軟性や機能面で、自社の希望通りにできない制約がつきまといます。より高度なカスタマイズ性と変更の自由度を求める場合は、独自にECサイトを構築するほうが適しているでしょう。
他方でECモールは、システムを自社で用意する手間が省け、すぐに出店が可能です。ECモールと独自のECサイトのどちらの運営形態が適しているか検討し、事業展開のフェーズに合わせて柔軟に対応することが重要です。
競争率が高い
ECモールは簡単な手続きだけで出店できるメリットがあります。一方で、参入障壁が低いがゆえに競合他社が多く、競争率の高い環境に身を投じなければなりません。独自の魅力を打ち出し、顧客へ認知され、選ばれ続けるための施策を継続する姿勢が求められます。
またモール全体でのセールも頻繁に行われるため、価格競争に巻き込まれやすいこともデメリットです。
ブランディングしにくい
ECモールを経由した販売では、自社商品やサービスのブランド力を十分に生かせない点はデメリットです。たとえば、Amazonで商品が購入された場合、「あのブランドの商品を購入した」ではなく「Amazonで購入した」と、ECモール自体のブランドが前面に出てしまう傾向にあります。
また、独自のECサイトであれば、自由にサイト構成やビジュアルを変更してブランドコンセプトを打ち出せますが、ECモール上では、そのようなデザインの訴求が制限されてしまいます。ECモールの利便性を活用しつつ、ブランディングができる自社チャネルを確保した総合的な対応が重要となるでしょう。
リピーターを獲得しにくい
ECモール上での販売では、リピート購入を促す取り組みが制限される傾向にあります。
リピーター獲得のためには、顧客データの分析、会員制度の構築、定期購入サービスの提供など、さまざまな仕組み作りが不可欠です。しかしECモールは、カスタマイズ性に乏しく、自由度の高い施策を打ちにくい環境といえます。
ECサイトを活用したビジネスにおいて、リピーターの獲得は長期的な収益が生み出せない重大なリスクです。ECモール以外の販売チャネルを構築し、バランスの取れた事業展開を目指しましょう。
ECモールでの出店を成功させるコツ
ECモールには集客力はありますが、ECモールへの出店数も多いため、その中で成果を上げるのは簡単ではありません。ECモールでの出店を成功させるためのポイントを押さえておきましょう。
他店と差別化を図る
まずは、他店との差別化を図ることが重要です。一般ユーザーにとって、ECモールの名称は覚えていても、その中にある店舗名はあまり印象に残らないものです。例えば、Amazonで買い物をしても、顧客は「Amazonで買い物をした」としか思わないでしょう。
リピート購入を促すためには、自社ECのほうが他店との差別化を図りやすいため向いています。どのように店舗の印象を残すか、リピーターを獲得するにはどうすれば良いかを考えながら運営する必要があります。
商品の品揃えを充実させる
ECモールのメリットは、商品のジャンルが幅広く、種類が豊富なことです。そのため、店舗内で商品が充実していれば、複数商品をまとめて購入してもらえる可能性があります。
また、商品数が多いと、レコメンド機能などで関連商品が表示されやすいというメリットもあるため、品揃えの充実を意識してみましょう。
目玉商品を設けて、店舗への集客を増やす
商品の品揃えという点においては、目玉商品を設けて、店舗への集客を増やすという方法も効果的です。ただし、注意点として企業やブランドの限定商品などは、ECモールでの販売には向いていません。このような商品は、自社のECサイトやWebサイトで販売したほうが、価値が高められるということを覚えておきましょう。
ECサイトの管理を一元化する
複数のECサイトを運営している場合は、管理を一元化しましょう。ECモール間や自社ECサイトなど複数のサイトを運用していると、発注や発送、在庫管理などの業務がそれぞれに発生するため、管理工数が増大してしまいます。
一元管理システムを導入することで複数のECサイトを一元管理でき、運営の手間が軽減されるでしょう。まとめて管理ができれば、多くのECサイトを同時に運営できるため、販売機会が広がり、収益の増加も期待できます。
ユーザーとの適切なコミュニケーションが収益拡大の鍵
ECモールだけでなく、自社のECサイトにも言えることですが、お店のファンをどれだけ獲得できるかが成功の鍵といえます。
そのためには、ユーザーと適切なタイミングでコミュニケーションを取っていく必要があります。
例えば、購入直後にアフターフォローを行ったり、ユーザーの購入履歴から興味関心のありそうな商品をレコメンドしたり、何度も購入している商品の定期購入をすすめるなどのアクションは、顧客を育てる上で重要な施策です。
ユーザーにとって価値ある情報を適切なタイミングで提供することで、サイトに対するエンゲージメントも高まり、リピーターとなってくれるのです。
ECモールの中には、マーケティングツールを提供してくれるところもあるので、自社に合ったECモールを選んで収益の拡大につなげましょう。