越境ECとは、国境を超えて行われるECサイトの取引のことを意味します。
近年、日本でもECの利用者数の増加に伴い、越境ECが盛んに行われるようになってきました。
日本製の商品は高品質で安全な上、海外で取り扱っていないものも多いため、外国人から支持されている点も理由のひとつです。
今回の記事では、越境ECの現状や拡大の理由、越境ECを行うにあたっての注意点などをご紹介します。
目次
越境ECとは国際的な電子商取引を行うビジネスモデル
越境ECとは、インターネットの通信販売サイトを通じて行う国際的な電子商取引(EC)のことです。基本的には日本国内よりも、海外の消費者に向けて国内の商品を販売することを目的としています。
日本でも人気のECモールが新たに海外モールに出店をしたり、越境ECの支援サービスを提供する企業が登場したりするなど、越境EC市場が活性化しています。また、最近は円安が進んでいることも、その一因でしょう。
越境ECの市場規模
近年はインターネットショッピングの利用が世界中で増加し、国内にいながら海外の商品を購入することも可能になりました。年々拡大している越境ECの市場規模についてご紹介します。
日本・米国・中国の3カ国間における越境電子商取引の市場規模
経済産業省の調査によれば、令和4年度の日本の消費者による米国・中国事業者からの越境EC購入額は3,954億円で、前年比6.1%増となっています。一方、米国の消費者による日本・中国事業者からの越境EC購入額は2兆2,111億円で、前年比8.3%増。中国の消費者による日本・米国事業者からの越境EC購入額は5兆68億円で、前年比6.2%増という結果です。
参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」
ECの需要は確実に増加している
日本が越境ECに関する調査を行っているのは、日本・米国・中国の3カ国のみです(令和3年現在)。欧米では、和服などの日本ならではの民芸品の人気が高い傾向にあり、中国では日本の家電製品や衛生用品がよく購入されています。
また、タイやインドネシア、台湾などでは、「クールジャパン」と呼ばれるサブカルチャーや、自国にはない高品質の日本製商品を中心に越境ECのニーズが高まっています。例えば、台湾では日本の医薬品、タイでは日本メーカーの化粧品が多く購入されています。日本製の家電製品、お菓子、衣類などもさまざまな国で人気があり、今後は日本・米国・中国以外の国々でも越境ECの需要の増加が予想されています。
中国の越境ECの状況
中国の越境ECの現状を理解することは、自社の越境EC戦略を考える上で非常に重要です。2023年8月に経済産業省が発表した調査報告書によると、2022年の中国の越境EC市場規模は、前年比1.6%増の1,653億USドルに達したと推定されています。
成長を続ける中国の越境EC市場や利用者の特性、購買行動、さらには将来的に越境ECを利用する可能性のある潜在顧客の傾向把握は、日本のEC事業者にとって大きなメリットとなるでしょう。
また、経済産業省の同調査報告書にて、BENNOSグループが実施した「越境 EC の利用意向調査(2021 年 9 月実施)」では、8割以上が「訪日後にリピート購入をするにあたって越境ECを利用したい」との結果が報告されており、インバウンド回復による越境ECへのさらなる好影響が期待されています。
参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」
中国ECの市場規模やトレンドなどは以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
越境ECのメリット
越境ECのメリットは次の4つです。
販路を拡大できる
現在、日本では少子高齢化に伴いBtoC商品の市場自体が縮小し続けています。ターゲットによっては、特に日本市場だけだとなかなか売り上げを最大化できていない企業も増えていることでしょう。
そんななか、越境ECに乗り出すことで、市場全体のパイが世界に広がります。もちろん各地での最適化をする必要はありますが、販路を拡大できるのは大きなメリットです。
日本製品ならではの魅力でファン化できる
越境ECでは、日本国内でしか入手できない商品を海外ユーザーに販売できるため、日本文化・日本製品への共感を呼べる点がメリットです。
訪日観光客による「爆買い」からもわかるとおり、日本製品は品質・安全性の高さから海外で高い人気を誇っています。越境ECを通じて日本独自の文化・製品の魅力を広められるため、新たな需要創出が期待できます。
訪日外国人のリピート購入
訪日外国人が日本で家電製品や衛生用品、食料品、衣類などを購入して、帰国後に使用したところ大いに気に入り、越境ECを利用してリピート購入するというケースがあります。自国の店頭では取り扱いのない商品も、越境ECなら手に入れることができます。
また、一度も日本に来たことがない外国人でも、日本を旅行した友人・知人にお土産としてもらったり、Webサイトで商品を知ったりしたことがきっかけで、日本製の商品を購入することがあります。そんなときでも越境ECなら簡単です。
商圏を拡大できる
人口減少などの理由から、今後の日本の消費は低下が予想されています。越境ECならば、簡単に海外進出が可能です。日本の商品を購入できる場が少なかったり、潜在的な顧客が多かったりする国はまだたくさんありますので、新規顧客獲得も見込めるでしょう。ネット上で外国人顧客向けの店舗を持つことができるため、日本にいながら海外市場が開拓できます。
越境ECのデメリット
越境ECのデメリットは次の2点です。
配送コストがかかる
越境ECは、一般的に日本から海外へ商品を発送するため、国内配送と比べて輸送コストが高くなる傾向があります。関税がかかるケースもあるため、海外の顧客にとってはこの高い輸送コストが越境ECを利用するうえで障害になる可能性があります。また輸送に時間がかかるため、紛失や破損などのリスクが国内配送よりわずかに高まる点もデメリットです。
現地文化に対応できる人材が必要になる
越境ECでは、販売国の文化・商習慣を理解して対応しなければ、重大なトラブルを招く可能性があります。よって、現地文化に対応できる人材の雇用が必要です。
現地ユーザーからの問い合わせに対応できる言語力だけでなく、法律や効果的なマーケティング施策に関する知識も必要となります。越境ECにおいて、現地文化に理解のある人材確保が必要な点もデメリットです。
越境ECが拡大している理由
世界中で、越境ECのニーズが高まっています。その主な理由を4つご紹介します。
スマートフォンの普及
世界中にスマートフォンが普及したことで、どこにいても買い物ができるようになりました。端末が安価で簡単に手に入るようになったこともあり、多くの国でスマートフォンからインターネットを閲覧できるようになっています。つまり、スマートフォンさえあれば、多くの人が自分で海外のECサイトにアクセスし、自国商品などと比較しながら、より低価格で高品質なものを購入できるというわけです。越境EC拡大の背景には、スマートフォンの普及によって、ショッピングモールなどが近くにない地域に住んでいる人でも手軽に海外の商品を購入できるようになったことが影響しているのは確実です。
実店舗出店と比べてコストを削減できる
越境ECなら、外国で直接出店する必要がありません。現地で外国人向けの商品を販売する際に大変なのは、出店申請の手間や家賃、現地スタッフの人件費です。十分なマーケティングを行わなければ、出店できたとしても失敗してしまうリスクがあります。
その点、ECサイトなら実店舗を持つよりも大幅に初期費用を抑えることができます。サイトの作成やシステムの導入などを含め、数万円~数十万円程度でスタートでき、低コストで始められます。
人口減少など日本国内の総数が減っている
現在日本では、少子高齢化に伴って人口が減少しています。消費の中心を担う20代半ばから70代半ばの人々が減少傾向にあるため、小売業界で生き残るためには市場拡大が急務となっています。
越境ECによって海外に販路が拡大できるため、日本国内の消費者数に縛られずにグローバルな消費者基盤を確保できます。日本国内の市場縮小が補えることから、越境ECに取り組む動きが広まっています。
越境ECを始める前に知っておきたい注意点
メリットの多い越境ECですが、日本国内向けのECサイトとは異なる点も少なくありません。越境ECを実施する上での注意点を理解しておきましょう。
配送料や手数料が国内ECよりも高い
越境ECの場合、インターネットサイトを通じて注文があった商品は、日本から海外へ輸出することになります。配送料や手数料は日本国内よりも高額になるため、結果としてユーザーが負担する金額は大きくなってしまいがちです。そのため、「低価格」「お得」などを売りにした販売戦略は難しい場合があります。
それよりも、外国人に人気のある日本の商品やブランド、海外にはない珍しい商品などを売りにしたほうが、売り上げが見込める可能性が高いでしょう。
また、越境ECの場合は外貨で決済が行われます。そのため、為替レートの変動などによって価格に大きく差が出てしまうという点も理解しておきましょう。
販売先の国によって法律が異なる
越境ECでは、物流や決済方法、発送手段、翻訳など、販売国に合わせた対応が必要です。例えば中国の場合、インターネットサイトの開設・運営はすべて許可制となっており、「ICP」と呼ばれるライセンスがなければ、サイトを開設できません。中国で電子商取引を行うためには、ICPライセンスの取得が必須です。ライセンス未取得の場合は違法となり、発覚するとサイトの運営停止や罰金などのペナルティが科せられます。
トラブルにならないよう、海外では日本と異なる法律があることを念頭に置いた上で、事前の調査や対策をきちんと行いましょう。
関税など国際輸送における取引は規制が多い
国境を超える取引には、商品やサービスに対して関税が発生します。商品によっては、関税法で輸出入が禁止されているものもあります。例えば、中国では古着の輸入が禁止されていたり、中古機器などの輸入には現地確認が必要になる規制があったりします。
輸出入の許可リストは、各国の税関ホームページに掲載されています。越境ECで取り扱う商品が、販売国で輸出入が禁止されていないかどうかを事前にチェックしておきましょう。
可能性が広がる越境ECの大きな魅力
越境ECは、インターネットショッピングが当たり前の時代になった現代にマッチしたサービスのひとつです。意外な日本製品が海外で人気があったり、外国人のニーズに合う商品がまだ数多く眠っている可能性が考えられるでしょう。
また、2022年4月現在ではインバウンドは見込めませんが、今後ワクチン接種が進むなどにつれ海外からの観光客が増加することが考えられます。
そしてインバウンド需要が再開し、商品の良さを知った方が「もう一度買いたい…」と考えた時に越境ECを利用するなど、日本の海外向け越境ECは今後も拡大していくことが予想されます。
ただし、越境ECのビジネスを始めるにあたっては、日本とはルールや規制が異なることに十分注意をすることが大切です。
越境ECを始めるには?
越境ECを始める際は、次の準備が必要です。
- 商品の準備
- 法律・商習慣・文化の確認
- リソースの確保
- 出店方法の選択
商品の準備
まずは、越境ECで販売する商品を準備します。商品によっては輸出の規制対象であるケースがあるため、販売しようとしている商品が「現地の法律でどのような扱いを受けるのか」を確認しましょう。また「その商品が現地でニーズがあるのか」といった戦略を練ったうえで、商品を準備しましょう。
また商品を海外で販売する際、商標・ロゴの権利がすでに現地の他会社に取得されているケースがあります。そのため「商標、著作権の調査」や「事前の取得」をしておくことが必要です。
法律・商習慣・文化の確認
現地の法律や規制、商習慣、文化、習慣に関して確認しましょう。例えば、国内の販売サイトをローカライズする際、その国独自の薬事法が存在します。そのため、単純に翻訳するだけでは販売できない場合があります。
また海外は日本人と商品パッケージのデザインについて、感覚が違います。そのため国内で売れているトンマナが現地では通用しないことも多々あります。なかでも中国は、法律・規制が頻繁に改正されるため、現在のルールを改めて確認しておく必要があります。
こうしたその国独自の外部環境の整理については「PEST」の観点から整理をするとわかりやすいです。PESTとは「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの要素から、環境を分析するフレームワークになります。
リソースの確保
越境ECは、現地で実店舗を運営するよりはコストをかけずに出店できるものの、ある程度の人員と予算の確保が必要です。また越境ECでは、国内と異なるトラブルが起きる可能性があります。そのため事前に予算を確保したうえでECサイトを制作、あるいはローカライズし、現地の言語が堪能な人材を確保したうえでスタートしましょう。
出店方法の選択
次に、越境ECの出店方法を決めます。出店方法はおもに次の3つです。
- 現地のモールに出店する
- 自社EC・モールで対応する
現地のモールに出店する
ビジネスの規模があまり大きくない場合、現地のモールに出店する方法が最も手軽です。各国に越境ECが許可されたモールがあるため、そのモールに自社のショップをオープンしましょう。
メリット | デメリット |
・現地の消費者からの信頼が得られる
・現地の決済方法が使用でき、販売促進につながる |
・カスタマイズしにくい
・慣れていないモールのためルールが把握しにくい |
自社EC・モールで対応する
「越境ECの可能性を探りたい」「ビジネスの規模が小さい」といった場合、自社ECや国内モールへの海外からの注文に対応する方法があります。海外での需要の高さを感じたら「現地法人の設立」や「現地モールへの出店」などを検討するとよいでしょう。
メリット | デメリット |
多言語対応などのセットアップが必要なものの、
比較的手軽・スピーディーに出店できる |
・越境ECに対応している機能が必要
・手数料が高くなる可能性がある |
越境ECの始め方
日本向けのECサイトで海外販売対応可能になり、越境ECにチャレンジすることができます。
越境EC成功事例
WorldShopping BIZにて、「1年半で数百件の海外受注を獲得した、アパレルショップの事例」を公開中です。
以下の記事では、Buyee Connectを導入して越境ECに取り組んでいるこだわり雑貨ショップ「AYANOKOJI」様の事例を紹介しています。AYANOKOJIは、海外のお客様の需要の高さから、海外への販路拡大を目指して越境ECの導入を検討していました。
Buyee Connectは、国内でのサイト運営・業務フローを変えずに海外へ販路が拡大できる点に魅力を感じておられます。
越境ECセミナーレポート〜規模別で紹介する始め方のポイントや、中国EC事例まで
越境EC、中国ECの最新事情についてのセミナーレポートの記事を公開しています。
以下の記事では、中国越境ECをテーマとしたセミナー「中国デジタルマーケティング最新事情 & 中小企業でも活用できる中国越境EC」を前編・後編に分けてお届けしています。「中国デジタルマーケティングの最新事情」や「中国市場で戦うポイント」「日本企業が中国向けに越境ECを行う方法」などの幅広いテーマを扱っています。
中国EC事情に関して興味がある方は、ぜひお読みください。
また以下の記事では、越境ECの本格的な始め方から低リスクで始める方法まで紹介しています。越境ECに取り組みたいと考えている方は、ぜひお読みください。
越境EC情報サイト
JETRO(日本貿易振興機構)が下記URLで、中国やASEAN、インドなどの越境EC関連情報を提供しています。越境EC関連の普及・啓発イベントの開催情報も発信しているため、興味のある方はぜひご参考にしてください。
まとめ
futureshopでは、越境ECソリューション「WorldShopping BIZ」や、「Buyee Connect」と連携しています。
運営中の国内版futureshopの自社ECのサイトにJavaScriptタグを1行入れるだけで越境EC対応ができます!
他にも、様々なサービスと連携しています。こちらから概要をご確認ください。