ECサイトを開設したいと思った際に、比較検討して選ぶ必要があるのが「カートシステム」です。でも、「ECカート」というのは、どこからどこまでの機能のことを指すのでしょうか?
この記事では、意外とよくわからない「ECカートシステム」の対応範囲とその種類、そして、「楽天・Amazon等のモール型EC」と「自社でECサイトを開設する場合の自社ECカート」の違いについてご説明していきます。
目次
ECサイトの「カート」とは?
ECサイトにおける「カート」とは、一言でいえば【 選んだ商品を購入する仕組み 】です。
「カートに入れる」ボタンで商品をカートに入れて注文処理を行えるこの仕組みは、ネットショップでは不可欠な機能で、場合よっては「買い物かご」とも呼ばれます。
「ECカートシステム」の対応範囲・機能
後述するECカートの違いによっても持っている機能は様々ですが、ここではまず基本的な機能をご紹介します。
ECカートの基本的な機能
- 商品ページに、商品の情報と画像を表示する
- カート(買い物かご)に入れる
- 配送先、配送方法、決済方法を指定
- 決済手続き ( クレジットカードや代引きなど )
- 顧客・販売管理 ( 購入者情報をリスト化 )
- 購入者への連絡 ( 注文確認メールなど )
商品ページに、商品の情報と画像を表示する
商品の追加や編集、削除など、商品ページを管理できる機能です。ECサイト上に表示する商品名や商品説明、画像、価格、在庫数などの情報を管理し、カテゴリごとに整理して表示できます。在庫数や商品のランキング表示も、この機能に含まれています。
カート(買い物かご)に入れる
ユーザーがECサイト上で選んだ商品を、カートに追加できる機能です。カートに商品を入れることで、ユーザーは数を調整したり削除したりできます。カートに入れた商品は注文ボタンを押すことで、購入手続きが完了します。
配送先、配送方法、決済方法を指定
ECサイト上で購入した商品の配送先や配送方法、決済方法が指定できる機能です。ユーザーは、購入手続きで配送先の住所を入力し、ECサイトが提供するなかから配送方法を選ぶことができます。また決済方法は、ECカートが連携する決済代行会社が提供するものから選べます。
決済手続き
ユーザーがECサイトで購入する商品の代金を支払える機能です。決済方法には、クレジットカードやQRコード決済などの種類があり、ECサイトが提供する決済方法のなかからユーザーが選んで決済します。
なお、ECカートが連携する決済代行会社を通じて決済するのが一般的です。
顧客・販売管理
ECサイトでの会員登録や商品購入のタイミングで、ユーザーが入力した情報を管理する機能です。具体的には、ユーザーの名前や住所、注文履歴、保有ポイント数などの情報を管理します。
この機能で管理する情報は、問い合わせ対応やプロモーションなどのタイミングで活用します。そのため、販促施策に役立つ機能です。
購入者への連絡
商品を購入したユーザーに対する連絡を自動でおこなう機能です。具体的にはメールマガジンが配信できるため「新商品の案内」や「クーポン」「セールのお知らせ」といったメールが配信できます。リピート率向上に役立つ機能となっています。
分析・レポート機能
「分析・レポート機能」により、月別や日別で会員登録数や売上状況を抽出し、レポート化することができます。販売戦略や施策のPDCAサイクルを効率的に進めるうえで、重要な機能です。またECカートによって、分析可能なデータの種類が異なります。
ECカート選びのポイント
ECカートを選ぶ際は、次の7つのポイントを意識しましょう。
- 自社の商品分野について実例があるか
- 自社ECサイトの規模に合っているか
- カスタマイズできるか
- サポート体制は整っているか
- 導入費用は予算内に収まるか
- スマホ対応できるか
- 他サービスと連携できるか
自社の商品分野について実例があるか
導入するサービスとのミスマッチを回避するためには、サービス側の事例を確認することが大切です。自社と似たビジネスモデルや、商品を扱う企業が導入したサービスであれば、自社に導入した場合も成功確率が高まります。
さらに、定期購入や月額商品、商品管理を適切に行える機能の有無も大切です。また、自社に似たサイトが導入に成功している場合、受注や決済などの管理画面に大きな問題がないことを示しています。トラブルシミュレーションとしても有効なので、他社の導入実績を確認しましょう。。
自社ECサイトの規模に合っているか
希望するサイトの規模とサービス内容が合っているかどうかも確認しましょう。サービスのコストだけでなく「各システムの上限」や「管理画面の操作性」なども選定ポイントとなります。たとえばASP型(SaaS型)の場合、初期費用が数万円程度で済むケースもあります。
料金プランは、商品数や注文数によって変動し「月間の受注上限」や「1件あたりの手数料」などを合計してコストが算出されます。最初から高額なプランを設定すると、不要な機能にコストがかかる可能性があります。一方規模の大きいサイトで低額プランを導入しても、機能の不足が出てくる可能性があります。
ただし「大量発注を処理しにくい」といった欠点がある場合、導入は慎重に判断すべきです。一括操作ができなければ、注文された商品を1件ずつ処理する必要があるため、大きな負担がかかります。導入後に後悔しないためにも「自社ECサイトの規模に合っているか」という点は、慎重に判断しましょう。
カスタマイズできるか
ECカートシステムは、デザインの自由度が高いのが特徴です。しかし、モール型のECサイトでは、出店するすべての店舗が同じデザインになるのが一般的です。
そして、Amazonなどのモール型サービスでは、商品の写真・価格・説明以外は、デフォルトのデザインを受け入れる必要があります。希望するECサイトのデザインがある場合は、思い描くデザインが実現可能なECカートを選びましょう。
サポート体制は整っているか
多くのASP型ECカートでは、サポート窓口が設けられています。不明点やトラブルに迅速に対応してもらえるため、安心してECサイトが運営できます。ただし、HTMLやCSSなどのプログラミング知識に関するサポートは対応してもらえないケースがあるため、必要に応じてEC事業者側で「システムエンジニアを雇用する」「外注する」などの対策が必要です。
一方、フルスクラッチ型やパッケージ型ECカートの場合、カスタマイズを前提としています。サポート窓口がない傾向があるため「どれくらいのサポートが受けられるのか」を事前に確認したうえで契約しましょう。ECサイトに不慣れな場合は、サポートが充実しているサービスを選ぶと安心して運営できるでしょう。
導入費用は予算内に収まるか
ECサイト構築にかかるコストには幅があります。単純に安いサービスを選ぶことが可能な一方で「機能が限られている」「デザインの自由度が低い」などの理由で後悔するケースもあります。
また、最初は安いと感じても、自社の業務内容に合わない場合、最終的にはカスタマイズ費用が発生します。カスタマイズした結果予算を超える可能性もあるため、ECカートシステム選びでは、安さだけを重視せずに、総合的な視点でサービスを選ぶことが大切です。ECサイト構築では、自社が実現させたいECサイトを定義し、計画に基づいて予算を検討することが大切です。
スマホ対応できるか
現代において、スマホやタブレットからECサイトを利用するユーザーが大半を占めています。そのためECサイトがスマホ対応できていない場合、ターゲット層を逃す可能性があります。大手サービスの多くは対応済みであるものの確実ではないため、サービスの利用前に確認しましょう。
また、フルスクラッチやパッケージ型の場合、スマホ対応を前提に構築しなければ、操作性が悪くなる恐れがあります。BtoBではパソコンを使った取引が多い一方で、BtoCにおいては使用端末を柔軟に考える必要があります。自社のビジネスモデルと照らし合わせ、顧客層のサイト利用方法を想像して、導入するECカートを選びましょう。
他サービスと連携できるか
ASP型のECカートサービスでは「在庫管理システム」や「顧客管理システム」との連携が課題となるケースがあります。また最近では、実店舗のシステムやSNSとの連携の可否も重要視されています。
連携ができない場合、リアルタイムでの在庫管理や物流システム、ネットサーバーとの同期できず「在庫の不一致」や「配送遅延」が生じる可能性があります。また、顧客管理システムと連携できなければ、顧客情報の誤りや重複などを招く恐れがあります。
各ECカートサービスでは「どのサービスと連携可能か」について情報を公開しています。提携しているパートナーの情報が公開されているケースもあるため、既存システムとの連携を検討する場合は、連携可否確認したうえで導入サービスを決めましょう。
「モール型」と独自の「自社ECカート型」の違いとは?
ECサイトと呼ばれるものにはいくつかの種類がありますが、ここではその中でも代表的な2つの型を比較してみます。
1つはAmazonや楽天市場などのショッピングモールに出店する「モール型」。
もう1つは独自ドメインでECサイトを構築して開店する「自社ECカート型」です。
モール型ECの特徴
Amazonや楽天市場に代表されるモール型ECは、百貨店や大手ショッピングモールにテナントとして出店するイメージです。
モール内には、「家電 > 季節家電 > エアコン」などの商品カテゴリーがあり、「同一の商品」を「複数のショップ」が取り扱っているので、買い手は欲しい商品を価格の安い順などに並べ変えて、比較して購入できるというメリットがあります。
モール自体に集客力があるため、買い手はたくさん訪れますが、ショップ同士の競争が激しいという側面もあります。また、モール側の都合でルールや規制が変わることがあり、それによって突然の対応が必要になったり、決済手数料の変更などにより、売上が左右されることもあります。
自社カート型ECの特徴
それに対して自社カート型ECサイトは、単独で路面店をオープンするイメージです。
自社で「○○.com」などの独自ドメインを取得し、自社でネットショップを構築・開店します。自社の店舗なので顧客情報が店舗の所有物になりますし、モール側に手数料を取られることや、ルール・規制もありません。商品ページのレイアウト・注文を進める画面・マイページなど、すべてのページを自社のブランドテイストに沿って自由に構築できます。
また、顧客リストを自社で持つことができるため、既存顧客へのクーポン発行によるリピート獲得などのCRM施策も実施しやすいことから、リピート率向上・利益率向上を図りやすいのも自社カートの特徴です。
このように自由度の高さが自社カート型の魅力ですが、一方で集客も自社で行う必要があります。
モール型と自社カート型どちらを選べばいいのか?
ここまでECサイトとECカートについての概略をお話ししてきましたが、これからECサイトの出店をお考えの方の中には、「結局モール型と自社カート型、どっちを選ぶべきなの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
「どちらがいい」ではなく「何を目指して進むか」
結論からお話しすると、「どちらがいいというよりも、何を目指して進んでいくのか」が重要です。
商品を購入する際、Amazonや楽天市場などのモールを訪れる層と、自社カートの独自ECサイトに訪れる層のどちらも存在します。そして、どちらのフィールドで、どんなお客様にアプローチしていくかによって、将来的に得られるものも異なります。
将来的に何を得ていきたいのか?が判断のポイントになりますので、モールEC型のメリット・デメリット、自社カート型のメリット・デメリットを、それぞれ見ていきましょう。
モールECのメリット・デメリット
楽天・Amazon等のモール型ECからスタートする場合、「すでに人が集まっている場所がある」という集客力のメリットを享受することができます。実店舗で考えた場合でも、百貨店や大手ショッピングモールに出店することで一定以上の売上が見込めますが、その一方で出店料としての売上手数料が大きく、利益がなかなか出せずに苦戦する場合があります。これはモール型ECでも同様です。
モール型ECのデメリットとしては、同様の商品と比較されやすいため、価格競争・値下げ合戦に陥りがちで、激戦区で目立つための広告費用もかかり、利益を削られるケースも多くあります。すでにレビューが大量に蓄積されている古参店舗に勝つことも、なかなか容易ではありません。
とはいえ、多くの人が集まってくる場所で、その商品力を確かめたり、EC運営をしていく基本的な感覚をつかむこともできるので、モール型ECからスタートするケースもありますし、うまく認知度を高めることができれば、その後に自社ECサイトをオープンした際の事業展開にも有利に働いていきます。
将来的に安定した事業を目指す自社ECカートでの展開
ECモールでの競争激化・利益率の低さを懸念して、最近ではモールには出店せず、長期視点でEC事業を安定的に伸ばしていくことを目指して、自社ECサイトを中心としたEC運営をされる方が増えてきました。
自社でECサイトを立ち上げた場合、たしかにモールのような集客力はないため、初年度からの大幅な売上増加はありませんが、リスティング広告・ブログコンテンツでのSEO・SNS等を活用した「自力での集客力」を磨いていき、利益率の高いEC事業を展開することができます。
特に、商品力のある商品を持っている場合は、認知を広めていくことで安定的な売上と優良顧客が生まれていき、事業としての安定性が増していきますし、実店舗をお持ちの事業者様は、実店舗とECを連携させた「オムニチャネル戦略」を展開していくこともできます。(大手モールでは実店舗との連携はNG)
また、ECがこれだけ普及した今、新規顧客の獲得コストは年々上がり続けているため、リピート購入施策の重要性が上がっています。具体的にはCRMを実施することが多くなっています。
EC経験の長い事業者様も、以前はモールでの売上をつくることに専念されていましたが、最近では、やはり自社ECサイトでの売上比率を高めていくことに注力されるようになってきているのが現状です。そのために、販促キャンペーンや集客プロモーション、CRMなどの実施、コンサルティングサポートの活用がされることが多くなってきています。
3種類ある自社ECカート。その違いとは?
自社カート型と言っても、実はいくつかの種類があります。ここでは3種類の自社カートをご紹介します。
フルスクラッチ型(自社開発)
自由度は無限大ですが、システム開発からデータベースの要件定義やデザインまで、全てを作る必要があるため、大きな予算をかけられる大手企業しか取り組めない方法です。
パッケージ・オープンソース型
ECサイトの構築を相談しているWEB制作会社・システム開発会社からの提案で「パッケージ型のECカート導入」に至ることが多いですが、その導入理由としては、ベースとなるシステムがあるため、フルスクラッチ型に比べれば費用を低く抑えられる点とカスタマイズが自由にできる点が主です。
ECサイトを構築してオープンする段階まで進んだ後、オープン後も必要な機能を選定して、カスタマイズし続けられる「開発力」と「資金力」が必要なため、体力がある企業でなければ継続的な改善が難しくなっていきます。
改善したい点が出てくるたびに、改善依頼に「コスト」と「時間」を割く必要がでてくるため、最初にサイトを構築した状態のまま、改善点がわかっていながらも放置せざるを得ない状況になることも珍しくありません。
ASP型(SaaS型)
ASP型のカートシステムは、ECサイトに必要な機能が最初から揃っているため、ゼロから仕様を検討する必要はありません。時流に合わせたカートの改善は、ASPベンダー側でバージョンアップ対応がされていくので、パッケージカートのように改善の都度発生する開発コストは不要です。
ASPはカスタマイズができないイメージがありましたが、近年のASPはカスタマイズの自由度が高まっており、その自由度の違いがASPカートの比較ポイントでもあります。10年以上のECの歴史の中で蓄積されてきたノウハウが集約されている最近のASPカートは、機能も豊富な上、自由度の高いカートも増えてきているので、年商数十億〜数億の事業規模でもASPカートを採用しているケースが増えています。
高度な知識や経験がなくても必要な機能が揃っており、費用も抑えられるASPカートは、初めて自社でECサイトを立ち上げる際には最適なカートといえます。
▼自社ECカートの違いとそれぞれのメリット・デメリットについてはこちらの記事でも解説しています。
特化型ECカートシステムとは
EC市場拡大に伴い、ターゲットの顧客層・商品に特化したECサイトの需要が高まっています。したがって一般的なECカートシステムのほかに、以下のような特定の領域に特化したECカートシステムも登場しています。
リピート通販特化型カート
リピート通販特化型カートは、健康食品などを初めて購入する際に初回割引を実施し、顧客が気に入った場合に「再購入・定期購入する」といったスタイルの通販で利用されます。顧客が商品を試しやすくすることで、継続的な購入につなげます。
リピート通販特化型カートには「定期購入用注文フォーム」や「初回注文サンプル」「継続決済機能」「キャンペーン機能」などの多くの機能が搭載されています。
越境EC特化型カート
越境EC特化型カートは、海外通販向けのカートシステムです。他国の消費者に商品を販売するため、対象国の「言語」や「通貨」「決済方法」が選択できる機能を搭載しています。さらに「販売国の国のサーバーが利用できる」「管理画面が多言語対応している」といった特徴もあります。
BtoB特化型カート
BtoB特化型カートは、BtoB(企業間取引)に特化したECカートです。BtoBでは取引先ごとに取引条件が異なるため、細かいカスタマイズが必要です。そのため「取引先ごとに価格設定」や「商品の出し分け」「決済方法の設定」といった点に対応できるBtoB特化型カートが、BtoB企業において重宝されています。
これまで電話やメール、FAXなどで行っていた受注業務が効率化できます。そのため「小売店に卸売しているメーカー」や「業者向けに部品を販売する企業」などが多く利用しています。
まとめ
『ECカート選びは「見えないコスト」と「自社の対応リソース」も考慮して選ぶ!』
スマートフォンが普及して、顧客行動が大きく変化したように、
ECサイトを運営していく中で、環境変化に伴って、買い手の要望は変化し続けます。
売上規模・事業規模の変化によって、自社ECにとって必要な機能も変化していきます。
つまり実店舗同様、カートにも時代と顧客に応じた変化が必要です。
フルスクラッチやパッケージ・オープンソース型の場合、時流の変化に対応するためのカスタマイズ開発費用が、ECサイト立ち上げ後も継続的に発生するため「見えないコスト」が存在することをあらかじめ考慮しておかなれければ、事業の損益分岐点がどんどん先へ繰り越されていきます。
また、自社で開発できるカスタマイズの自由度を優先したものの、実際は「自社の対応リソース」が不足して改善点がわかっていながらも変化に対応しきれず、時代に取り残されている…という状況も、よく聞く話です。
まずはASP型(SaaS型)で運営して、どうしてもオリジナルな機能が必要になった時に予算と相談して、フルスクラッチ型などを検討する流れがよいかもしれません。
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