ECサイトの乗り換え(引っ越し)を解説!手順、検討すべきタイミング、注意点を紹介
- 2024.04.232024.09.11
「現在のECサイトを改善したいが、リニューアルすべきタイミングがわからない」
「乗り換えで注意すべきポイントを知って、実際の移行時に役立てたい」
ECサイトを運営する方のなかには、上記のような疑問がある方もいるのではないでしょうか。
本記事では「ECサイトの乗り換えを検討すべき5つのタイミング」と「乗り換えの手順」を中心に解説します。実際にリニューアルして業績が回復した成功事例も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
ECサイトの乗り換えを検討すべき5つのタイミング
ECサイトの乗り換えを検討すべきタイミングは、次の5つです。
- 売上が伸び悩んでいる
- 5年以上システムを使用している
- ベンダーのサポート体制に不満がある
- EC事業拡大を検討している
- 戦略を変更した
売上が伸び悩んでいる
売上が伸び悩んでいる場合、ECサイトの乗り換えを検討しましょう。このとき確認すべきポイントは、売上が伸び悩んでいる原因が「UI/UX」にあるのかどうかです。「消費者行動の変化」や「デバイスの進化」に伴い、現行のECサイトでは「顧客満足を高められるUI/UXの実現」が難しいと感じたら、乗り換えを検討すべきです。
たとえば、現在のEC市場ではスマートフォン経由の取引が多く、2022年においてはBtoC EC市場規模の約56%を占めています。スマートフォンに対応していなければ「購入意欲の阻害」や「かご落ち」などを招く可能性があることから、ECサイトにおいてレスポンシブ対応は急務となっています。
このように、ECサイトの使いにくさが売上に影響していると考えられる場合、乗り換えを検討すべきでしょう。
参考:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
5年以上システムを使用している
バージョンアップが定期的に行われているシステムであれば問題ないですが、ECサイトのシステムを長期間放置していると、老朽化します。「セキュリティホールが発見される」「最新機能に対応できなくなる」などの問題が生じます。したがって、同じシステムを5年以上使い続けている場合は、乗り換えを検討すべきです。
特にオープンソースでは、システムやプラグインでセキュリティ上の問題が発見されることが多く、老朽化が早い傾向があります。情報漏えいをはじめとしたセキュリティ事故を防ぎ、安心して利用してもらえるECサイトを運営するためにも、5年以上システムを使用している場合は乗り換えを検討しましょう。
ベンダーのサポート体制に不満がある
ベンダーのサポート体制に不満があり、ECサイトの機能を活かしきれていない場合も乗り換えを検討しましょう。
豊富な機能が搭載されていても、使いこなせなければECサイトの売上につながりません。多くのベンダーではサポート体制を整えているものの「対応が遅い」「丁寧に説明してもらえない」などの問題がある場合、ECサイト運営に支障が出るため、充実したサポートを提供しているサービスに乗り換える必要があります。
たとえば「機能の活用方法を丁寧に説明してくれる」「問い合わせへの対応が早い」「ECサイト運営に関する相談まで乗ってもらえる」といったベンダーであれば、EC事業が成功する可能性が高まります。現在のサポート体制に不満があれば乗り換えを検討し、ECサイトの機能が活かしきれるサービスを利用しましょう。
EC事業拡大を検討している
EC事業を拡大する場合、現在の機能では足りずに希望するECサイトが実現できない可能性があります。よって、EC事業拡大を検討している場合も乗り換えのタイミングです。
たとえば、現在のシステムで「アクセス数増加に耐えられるか」「商品登録数の上限は希望通りか」「検索時のフィルター機能はあるか」「決済方法は拡充できるか」などを確認したうえで検討するとよいでしょう。
システムによって使用できる機能や打てる施策が制限された場合、EC事業を拡大しても失敗に終わる可能性があります。事業拡大後に必要な要件を洗い出したうえで、現在のシステムで可能かどうかを確認し、場合によっては乗り換えを検討しましょう。
戦略を変更した
ECサイトの戦略を変更したタイミングも、乗り換えを検討すべきです。代表的なのは、商品数の増加に伴って「単品通販」から「総合通販」にシフトしたタイミングです。
この場合、現行のカートでは機能不足になるため、多くの商品を販売できるサービスに乗り換える必要があります。より多くのユーザーからのアクセスやニーズに応えられる環境を整えることで、効率的なECサイト運営・売上アップが期待できます。
以下の記事では、ECサイトリニューアルが重要な理由や売上アップにつながるポイントなどを解説しているため、ぜひ併せてご覧ください。
ECサイト乗り換えの手順
ECサイトの乗り換えは、以下の8つの手順で進めます。
公開までの期間 | 手順 |
6か月前 |
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5か月前 |
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4か月前 |
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2か月前 |
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1か月前 |
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公開 |
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乗り換え6か月前
まず、現在のECサイトの課題を洗い出しましょう。課題が把握できれば、必要な機能やレイアウトが明確になるため、リニューアル時に注力すべき点がわかりやすくなります。
課題が抽出できたら「売上10%アップ」をはじめとした具体的な目標を立てておくのが効果的です。既存ECサイトを分析し、目標達成を阻害する問題点・改善点を洗い出しましょう。たとえば「現状のPV数から○%アップさせたい」「直帰率を○%まで下げたい」など、数値に基づいて目的を明確にすることで、リニューアルの方向性が定義できます。
乗り換え5か月前
次に、既存ECサイトの課題を解決し、策定した目的が達成できるプラットフォームを選定します。最初から1社に絞るのではなく、複数の候補をピックアップ・比較しましょう。乗り換え先を決めるうえで確認すべきポイントは、以下の5つです。
- 必要な機能がそろっているか
- 予算内で乗り換えられるか
- 機能の拡張性はあるか
- 操作性は悪くないか
- 乗り換えの目的が達成できるか
見積もりを取る際には、リニューアルの目的・要件・予算・納期を同じ内容で伝えておくことが大切です。
乗り換え4か月前
乗り換え先を選定して依頼したら、ベンダーと共同で新サイトの構造・デザインを決定します。
構造を決める際は、ECサイトの骨組みとなる「サイトマップ」や、各ページの完成形を視覚化した「ワイヤーフレーム」を用いて、顧客がどのような体験をして購買に至るかを策定します。
デザインは、ワイヤーフレームをもとに具体的なサイトデザインを制作します。デザイン作成時には「ECサイトのコンセプトが反映されているか」「ユーザーが使いやすいデザインか」「購入までの導線はわかりやすいか」などを確認しましょう。
構造・デザインが決定したら、実際にECサイトを構築するためにコーディング・実装が進められます。
乗り換え2か月前
新サイトの構造・デザインが決まったら、旧サイトのデータを新サイトへ移行します。このとき移行するのは、以下の情報です。
商品情報 | 顧客情報 |
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なお、システムによって移行できるデータが異なるため、事前に移行できるデータや移行方法、注意点などを確認しておきましょう。新旧サイトのデータ項目をそろえておくと、データをアップロードするだけで移行できるため手間が軽減できます。
商品や顧客に関する情報を移行したら、旧サイトの下層ページの情報も忘れずに移行します。具体的には、以下の情報をコピー&ペーストで移行しましょう。
- 会社概要
- 利用規約
- ショッピングガイド
- 特定商取引に基づく表記
- プライバシーポリシー
- よくある質問
情報が古くなっていないか見直し、修正したうえで新サイトへ移行しましょう。
旧サイトのデータが移行できたら、新サイトの各種設定を行いましょう。具体的には、以下の項目を設定します。
- 決済方法
- カートページの設定
- 在庫設定
- 送料設定
- 納品書・領収書の設定
- 受注関連のメール文章の設定
- マイページの設定
- ポイント設定
- アクセス解析ツールのタグの設置
決済、カートページ、送料、メール文章などはトラブルの元になるのでオープン前に重点的にテストしましょう。そのほかはオープン後の運用を通じてPDCAを回しながら、設定内容を改善していきましょう。
乗り換え1か月前
各種設定が終わったら、動作確認を行います。公開前にテスト注文し「購入画面がどのように遷移するか」「購入者へ送付するメールの内容に不備はないか」など、ユーザーと同じ目線に立って確認しましょう。注文を受けてから発送までのオペレーションに関しても、問題がないか確認しておきましょう。
新サイトをオープン
動作確認・テスト注文で問題なければ、新サイトをオープンします。公開後も「サイトのバグ」や「システムを利用する際の不明点」などが生じる可能性があるため、問題が発生した場合に「どのように解決するのか」をあらかじめベンダーと相談しておきましょう。
ECサイトの乗り換え先の選択肢
ECサイトの乗り換え先の選択肢は、おもに以下の3つです。
- ASP / SaaS
- クラウドEC
- パッケージ/オープンソース
ASP / SaaS
ASP / SaaSは、クラウド上のシステムを利用してECサイトを構築・運営できるプラットフォームです。代表的なASP / SaaSには「futureshop」や「MakeShop」「shopserve」などがあります。
自社サーバーが必要なく、セキュリティや機能などが自動でアップデートされるため、運用・保守が不要です。また、ECサイトの構築が即日~3か月程度で可能なうえに、多様なサービスと連携しているプラットフォーム事業者も存在します。そのためオプションが豊富なサービスであれば、容易に機能が拡張できる点がメリットです。
ただし、開発済みのシステムを利用するため、EC事業者ごとの個別開発には対応していない点を認識しておきましょう。
以下の記事では、ECサイトをASPで構築するメリット・注意点などを解説しています。有料ASPカートの比較ポイントも解説しているため、ぜひご覧ください。
クラウドEC
クラウドECは、ASP / SaaSと同様にクラウド上のシステムを利用してECサイトを構築・運営できます。機能のカスタマイズを受け付けるプラットフォームが「クラウドEC」と呼ばれ、ASP / SaaSと区別されています。代表的なクラウドECには「ebisumart」や「MakeShop for クラウド」などがあります。
自社サーバーが不要であり、セキュリティ・機能などが自動でアップデートされます。また、ほかの社内システムとの連携が必要な場合などに個別開発が可能です。ただし、開発には高額なコストが必要な点に注意が必要です。
パッケージ/オープンソース
パッケージは、ECサイトに必要な機能がパッケージングされており「ecbeing」や「EC-Orange」などが該当します。基本的な機能がそろっているうえに、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。ただし、カスタマイズが前提のため、機能開発に伴って多大な初期費用が発生する点に注意しましょう。
オープンソースは、インターネット上に公開されているソースコードを用いてECサイトを構築します。たとえば「Magento」や「EC-CUBE」などが該当します。デザイン・機能などが自由にカスタマイズして構築できるうえに、機能追加にはプラグインも利用できます。しかし、プログラミングの知識がないと構築が難しく、ソースコードが公開されていることからセキュリティ事故も起きやすい点がデメリットです。
ECサイトの乗り換え時の注意点5つ
ECサイトを乗り換える際の注意点は、以下の5つです。
- 乗り換えの目的が達成できるサービスを選ぶ
- ユーザーに事前告知しておく
- SEO対策しておく
- 余裕のあるスケジュールを設定する
- 事前に要件の合意を得ておく
乗り換えの目的が達成できるサービスを選ぶ
ECサイトを乗り換える目的が確実に達成できるサービスを選びましょう。「現在のECサイトの課題」や「乗り換えの目的」が明確になっていない場合、乗り換えたとしても課題が解決できる可能性は低いです。
また、乗り換え先の機能面だけでなく、担当者との相性も大切です。自社の目的・希望を理解しようとする姿勢があるかをチェックし、信頼関係が築けるパートナーを選びましょう。
ユーザーに事前告知しておく
リニューアル中はECサイトが利用できないうえに、トラブルが生じた場合はオープンまで時間がかかる可能性があります。そのため、ECサイトをリニューアルすることをユーザーに事前告知しておきましょう。
また、昨今のシステムはログインパスワードを不可逆暗号化しているため、パスワードデータは新サイトへ移行できません。リニューアル後に再設定が必要になり、これがユーザー離脱の原因となります。したがって、特別クーポンやポイントを付与し、新しいサイトでのパスワード設定を促すことが重要です。
SEO対策しておく
ECサイトの乗り換え時にドメインを変更する場合、旧サイトから新サイトへのリダイレクト設定を行い、ドメインパワーが引き継がれるように対策しましょう。
このとき、302リダイレクトにしてしまうと、一時的なリダイレクトとなるため、旧サイトもインデックス登録されてしまいます。そのため、301リダイレクトに設定し「恒久的なリダイレクト」として二重登録されないように設定しましょう。すると旧サイトのSEO評価が引き継がれるため、新サイトの集客に効果を発揮します。
余裕のあるスケジュールを設定する
ECサイトを円滑に乗り換えるためには、余裕を持ったスケジュールを設定しておきましょう。
初めてリニューアルする場合、不慣れな作業に時間・手間がかかり、ミスを誘発する可能性があります。また、移行するデータの量・内容や作業人数にも左右されるため、余裕のないスケジュール設置はおすすめできません。
データの移行方法や必要な時間をあらかじめシミュレーションし、おおよその時間を検証したうえでスケジュールを組みましょう。
事前に要件の合意を得ておく
リニューアルの詳細が決まったら、経営層だけでなく現場のスタッフも含めた全員の合意を得ておきましょう。
乗り換えを進めるなかで「要件の追加」や「認識のずれ」が生じた場合、確認作業に時間がかかって作業がストップし、結果的にECサイトの公開が遅れてしまう可能性が高まります。
要件定義の段階で十分に意見を交換し、ECサイトの運営に関わるすべての人の合意を形成しておきましょう。
ECサイト乗り換えの成功事例
ここからは、ECプラットフォームをfutureshopに乗り換えた株式会社ファルベの成功事例を紹介します。
引用:ファルベ
株式会社ファルベは、2001年から自社で企画・デザインしたウェディングアイテムをECサイトで販売しています。2020年のコロナ禍の影響でウェディングアイテムの売り上げが激減し、課題の多かった自社ECサイトのリニューアルを決断しました。
リニューアル前は「表示速度の遅さ」や「ユーザー導線の複雑さ」「スマホに最適化できていないこと」がおもな課題でした。リニューアル前のECサイトは約7年使用していたため、商品数やカテゴリの多さから、目当ての商品が探しにくい点も課題となっていました。
リニューアル後は、1つのドメインで複数のECサイトを運営する構造に変え「結婚アイテム」と「インテリアポスター」「ギフト商品」の3つのショップを運営しています。ECサイト直下にブログサイトも集約させたことで、SEOにも効果的に作用し、アクセス数増加につながっています。
その結果、新型コロナウイルスの影響が続いていたにもかかわらず、リニューアルオープン翌月の月商は、前年同月と比べて約130%に伸びています。リニューアルとともに「フェイスガードとして使える席札」をはじめとしたユニークな商品開発にも取り組み、経営危機から業績がV字回復した成功事例です。
以下の記事では、株式会社ファルベの宮村志穂社長と、外部パートナーとして支えた専門家をお招きし、リニューアルの経緯や取り組んだことを伺った内容をさらに詳しく紹介しています。
まとめ
ECサイトは「売上が伸び悩んでいる」「5年以上システムを使用している」などのタイミングが乗り換えの検討時期です。本記事で紹介した乗り換えの手順や注意点を参考に、売上が最大化できるECサイトへのリニューアルを検討しましょう。