チャット接客でECの転換率アップ!カスタマーサポートだけではない、ファンを作るコミュニケーション戦略
- 2021.03.232024.01.30
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった2020年。外出自粛の流れが訪れ、実店舗の来客数は大きく減りました。そうした背景があるなか、オンライン販売に力を入れる企業が増加し、実店舗のスタッフがECサイトのチャット接客をはじめるケースが増えています。
実店舗で顧客にする接客を、オンラインで実現してくれる「チャット接客」は、満足度が向上し、売上につながる可能性が高まります。ただ、「チャット対応に興味はあるけれど、どれほどの効果があるかわからない」「設定や対応が大変そう」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
そこで、2021年1月、株式会社フューチャーショップが主催となり、オンラインセミナー「コロナ時代に成功したECサイトは始めている『チャット接客』の意外な効果とは?成功事例を公開」を開催しました。
スピーカーとして登壇したのは、株式会社Channel Corporation 日本CEO チェ・ジェヨンさんです。Channel Corporationは、世界で43,000サイト、日本国内で4,000サイト以上に導入されているWebチャットツール「チャネルトーク」を運営しています。アジア最大規模の同サービスを導入する企業の業種は、グローバル全体でEC企業がもっとも多く37%となります。
▼ チャネルトーク サービスサイト
本記事では、「チャット接客の効果や、効果的に活用するために押さえておきたい心得」に焦点を当てて、セミナーの内容をレポートしていきます。
株式会社 Channel Corporation 日本CEO チェ・ジェヨンさん
韓国のアパレル企業や日本の商社、米国系のE-commerce企業にて勤務後、チャネルトークに合流。日本人の妻と結婚し、2015年から日本に移住。日本で中小事業者向けにB2B SaaSビジネスを成功させるのが今の夢。
目次
離脱“場所”よりも離脱“理由”を探ることが重要
多くのECサイトが抱える課題は、広告費を出して集客しても、売上に転換しにくいことです。「広告をきっかけに訪問はするけれど、結局何も買わずに離脱してしまう」「購入されたとしても、1回きりで終わってしまう」といったことが多く発生します。
そうした事態を解決するためにECサイトが取り組むのが、GoogleAnalyticsでの分析です。しかし、GoogleAnalyticsのデータからは「どこで離脱したか」は読み取れますが「なぜ離脱したのか」は読み取れません。細かくデータを確認できるのがオンラインの強みですが、GoogleAnalyticsでわかる離脱“場所”のデータを見るだけでは、離脱“理由”までは見えてきません。
オンラインの場合、優秀なECサイトでも転換率が3%ほどなのに対し、オフラインの転換率は30%ほどです。オンラインとオフラインの数字に乖離がある理由は、接客がカギを握っています。実店舗で接客を受けると、つい購入してしまう方も多いのではないでしょうか?
ECサイトが転換率を上げるためには、接客を重視しなければなりません。オンラインで接客できるツールは、大きく分けて「チャット」「電話」「ビデオ電話」「メール」の4つです。そのなかでも近年注目を集めているのが「チャット」です。
チャット接客のメリットは、データ化しやすいこと。チャットは顧客とのコミュニケーションがテキストとして残るため、データ化しやすく、そのまま社内に共有できるのがポイントです。また、リアルタイムで顧客と対話することができるので、スピーディに顧客の疑問を解決でき、顧客満足度が高くなります。
友人との連絡などでチャットを使い慣れているため、フレンドリーなコミュニケーションができるのもメリットといえるでしょう。
チャット接客をする3つの目的と、押さえておくべき重要なポイント
メールや電話にも共通する部分がありますが、チャット接客には3つの目的があります。それは「カスタマーサポート」「セールス」「ブランディング」です。そこで、3つの目的について詳しく紹介し、それぞれで押さえておくべき重要なポイントについてピックアップしていきます。
カスタマーサポート
チャット接客をする目的の1つ目が、カスタマーサポートです。顧客からの問い合わせに対応し、ときにはクレーム処理を行い、顧客の疑問や不安を解決していきます。
カスタマーサポートで重要なポイント① 困りそうなタイミングにチャット表示
転換率を上げるためには、顧客が質問したいタイミングに、チャットを表示させることが重要です。なぜなら、顧客が困っているのにどこに質問を入れたらいいかわからない状態だと、購入につながりにくいうえ、顧客満足度が低下してしまうためです。
スタッフの手伝いが必要なタイミングに、気軽に質問できる仕組みを入れておきましょう。たとえば、「配送・送料のページ」「FAQのページ」など。FAQがあれば大抵の疑問は解決できると思うかもしれませんが、顧客は答えを探すのが大変で見つけられず、FAQページからの問い合わせが多く寄せられています。
カスタマーサポートで重要なポイント② botで仕分けて効率化
Channel Corporationが掲げる効率化は、顧客対応をすべてBotにして、顧客の声を聞かないことではありません。「顧客の疑問を解決する導線をBotを使ってわかりやすく設計することで、人が対応するべきものと、人が対応しなくてもいいものを分けること」です。人が対応しなくても解決できる問い合わせはBotに任せ、Web接客を効率化しましょう。
Botを作りやすくするためには、メールや電話などの問い合わせ内容をカテゴリ化しておくことがおすすめです。どういった問い合わせが多いかを仕分けておくと、スムーズにBotを作れます。
カスタマーサポートで重要なポイント③ 権限・KPI・社内共有
【権限】
現場のスタッフにある程度の権限がないと、スタッフのモチベーションが下がってしまいます。
顧客からの問い合わせに対応する際、すべての工程を一つひとつ確認しなければならないとやる気が低下するうえ、顧客には「この人に任せて大丈夫なのか?」という印象を与えてしまうでしょう。
そのため、チャット接客をするスタッフには、現場で解決できるような権限を与えるのが大切です。
【KPI】
転換率アップに重要なのが、KPIの設定です。
問い合わせ件数の多さをKPIに設定している企業は多いのではないでしょうか? そこでいったん立ち止まって考えたいのが、カスタマーサポートの本質は「顧客の不満をキャッチしてその不満がなくなるように改善する」ことです。つまり、問い合わせ件数の多さをKPIに設定するのは、本質とズレているといえます。
最終的に追い求めるKPIは「問い合わせを何件減らせるか」。売上が伸びていくにつれて問い合わせが増えていくのが一般的ですが、売上が伸びている一方で問い合わせが減っていくというのがベストなカスタマーサポートのあり方です。
【社内共有】
カスタマーサポートの細かい内容は、社内で共有しなければなりません。
とあるアパレルECサイトの事例を見ると、3件ほど「商品にカビが生えている」といった問い合わせが入り、対応したスタッフがマニュアルに沿って返金対応を行いました。
しかし、フタを開けてみると、すべての商品にカビが生えていることが判明。問い合わせ内容が社内に共有されなかったことで、企業はすべての商品にカビが生えていたことに気づけず、適切な対応が取れませんでした。
このように、社内への共有をしないままだと、のちに大きなトラブルに発展するケースがあります。電話の問い合わせの場合、なかなか一本一本の音声を聞けませんが、チャットならざっと流し見ることができ、社内に共有しやすいでしょう。
セールス
チャット接客をする目的の2つ目が、セールスです。転換率のアップに大きく関係してくる項目で、ECサイトに訪問した顧客に対してしっかりと接客を行い、購入への橋渡しをしていくことが求められます。
セールスで重要なポイント① チャット相談への誘導
顧客が疑問をすぐに解決できるようにするためには、チャット相談がしやすい環境を整えることが重要です。ECサイトにチャットを設置しただけでは、問い合わせは入りません。
顧客がチャットで相談しやすい状況を作るには、「リアルタイムで人間がメッセージを返しています」といった雰囲気を出すことがポイントです。とあるECサイトの場合、チャットのポップアップに「5分以内に返事します」というメッセージを出したところ、チャットが4倍に増えました。
セールスで重要なポイント② 顧客に声をかけること
転換率を上げるなら、実店舗に入ってきた顧客に声をかけるのと同じように、ECサイトでも顧客に声をかけるべきです。ただ闇雲に声をかけるのではなく、顧客のタイプに合わせてかける言葉を変えましょう。
たとえば、何回もECサイトで買い物をしてくれている顧客の場合。チャットで「いつもありがとうございます。知りたいことやご希望の商品があれば、スタッフがご案内します」といった言葉をかけることが有効です。接客を重ねてだんだん親しくなってくると、「●●さん、今日いい商品入っている?」といった実店舗のようなコミュニケーションが実現します。
「初めてECサイトに訪れた顧客に対しては、まずBotであいさつをしたり、会員登録を促したりする」「VIPに近い顧客に対しては、Botではなくスタッフが人間味のある接客を行う」といったように、コミュニケーションの取り方を変えると、効率のいい接客が行えるでしょう。
セールスで重要なポイント③ 専門家が接客すること
実店舗と同じく、チャット接客でも商品に詳しい専門家が接客することが大切です。実店舗のスタッフのようにセールスができる人に接客をしてもらうか、チャット接客のスタッフをセールスができるように教育するか、どちらかを行いましょう。
なぜなら、顧客がチャットで質問したとき、商品について詳しくないスタッフが返信すると、疑問を解決できない可能性があるためです。知識が豊富な専門家のようなスタッフが対応できるように、社内の体制を見直すことが必要かもしれません。
ブランディング
チャット接客をする目的の3つ目が、ブランディングです。実際のところ、ブランディングを目的としてチャット接客を行っているECサイトはなかなかありません。全社的な戦略に関わってくるところで、簡単に決められることではありませんが、ブランディングを考えてチャット接客をしているECサイトは成功しているのが事実です。
ブランディングで重要なポイント① 事前準備をすること
いきなりチャット接客でブランディングをしようと思っても、不可能に近いでしょう。まずは、事前準備をしなければなりません。
自分たちのブランドを雰囲気で顧客に伝えようとするのではなく、「このブランドはこういうものだ」とコンセプトを定義して言語化しましょう。雰囲気で伝えてはいけない理由は、受け取り方が顧客によって異なってしまい、バラバラな解釈をされてしまうためです。
ブランドを定義して言語化するにあたり、まずは自社が伝えたいイメージをテキストに起こしてみてください。次に、顧客に「このブランドにどんなイメージをもっていますか?」と聞き、自分たちの定義と顧客がもつイメージがどれほど離れているかをすり合わせていくのがおすすめです。
ブランディングで重要なポイント② ストーリーテリングをすること
これからの時代、ECサイトは物を買う場よりも、共感を集める場になっていくでしょう。「私はこのブランドと同じ考えをもっているから、ここから商品を買う」といったように、ブランドのストーリーを購入する顧客が増えていくはずです。
そこで重要になるのが、ブランドのコンセプトがきちんと決まっていて、ブランドのストーリーをスタッフ全員が話せるようになること。そうすれば、「親しみを感じてもらうのがコンセプトだから、わざとフランクなコミュニケーションを取る」と、自然と接客のスタンスがブランドの定義に寄っていきます。
「チャネルトーク」を活用するコスメショップの例では、顧客に「コスメの専門家」というイメージが植え付けられているため、商品の問い合わせよりも、美容に関する相談が多く届きます。
そうした相談に対して、コスメの専門家として「●●店の●●です」と実店舗のスタッフが接客をするようにしています。その結果、顧客は「実店舗と同じように丁寧に接客してくれるのか」「チャットなのに詳しく説明してくれるのか」と思うようになり、信頼が醸成されていくでしょう。
ブランディングで重要なポイント③ ディテールを詰めること
ブランドのイメージは、些細な部分で壊れることもあります。ブランドが伝えたいコンセプトを崩さないよう、ディテールを詰めて、顧客への見せ方を統一しましょう。ブランドの定義に沿って「どんなメディアにどんな広告を出すべきなのか」「どんな言葉でメッセージを伝えるのか」など、意思決定をしてみてください。
たとえば、プロフィールのアイコン一つとっても、ブランドによって方針が変わってきます。親しみをもってもらいたいならイラスト、ブランドイメージが強いならブランドロゴ、専門性を重視するなら人の顔にするのがベターです。
「どんなトーンで接客するのか」「絵文字は使うのか、使うとしたらどんな絵文字を使うのか」といった細かな部分まで統一することで、ブランドイメージがより濃厚になるでしょう。
チャットを活用してブランディングに成功している企業の例として、アメリカのマットレスブランド「CASPER」が挙げられます。
ECサイトのトップ画像を見ると、マットレスは一切写っていません。一見何を売ろうとしているのかわかりませんが、CASPERは「マットレスを売る会社ではなく、睡眠の問題を解決する会社」というコンセプトのもと、あえてこういった見せ方をしています。
そのコンセプトがチャット接客にも反映されているため、多くの問い合わせが「どんなマットレスがいいですか」ではなく「最近眠れなくて困っています」といった睡眠の悩みから始まっているのが特徴です。そして回答する専門家が「運動するといいですよ」などと話しながら、アドバイスの一つとして「うちの枕もおすすめです」とPRしています。
親切に接してもらった顧客は、買うだけにとどまらず、「ここに相談したら睡眠の悩みを解決してくれた」とクチコミを広めてくれるようになります。マットレスや枕は高価で、頻繁に買い換えるものではありません。しかし、オンラインでもブランドコンセプトにあった親身な接客をすることで、「一人が商品を購入する」以上の効果を得られています。
チャット接客では何ができる? 実際の画面とともに解説
最後に、チャット接客がどのように進んでいくのか、流れやできることについて「チャネルトーク」の画面を見ながら解説していきます。
チャット接客の流れと基本的な機能
顧客がECサイトに入ったときに、おもてなしのメッセージを配信できます。ブランドのコンセプトなどのテキストや動画を流せるので、最初にブランドについての理解を深めてもらうことが可能です。
チャットのポップアップが右下に表示されており、クリックするとチャットがスタート。初めてECサイトに訪れた顧客には、名前やメールアドレス、電話番号などの情報を入力するようにチャットで促すことができます。
必ずしも情報を入力してもらう必要はありません。ただ、チャット画面に「情報を入力すると、メッセージの返信が早くなる」といった“情報を入力するメリット”を書くことで、入力率がアップする傾向があります。
チャットで取得した顧客情報やこれまでのメッセージのやりとりは、管理画面上でチェックできます。「どのページからチャットで質問を入力しているのか」「どんな商品をクリックしたのか」までわかるようになっているので、顧客の疑問や不安を把握しやすいのがポイントです。
リピーターであれば、「現在カートにいくら分の商品が入っているのか」「商品が何個カートに入っているのか」「男性か、女性か」といった詳細情報も確認できるようになります。
顧客とのチャットをカテゴリに分類することもできます。カテゴリは「お客様情報の変更依頼」「発送日確認」「クレーム」「交換」「個別対応」など、各チャネル毎に自由に設定できます。
管理画面では「顧客対応」のチャットのほかに、「社内会話」ができるようになっています。社内会話とは、顧客とのチャットのなかで展開できる、顧客には見えない社内メンバーとのチャットのこと。
つまり、チャットで顧客の問い合わせ対応をしているなかで、「誰かわかる人いますか?」と社内に助けを求めたり、「この件、私が対応します」とヘルプに入ることができます。社内で内容をいちいち共有する必要がなく、チャットを見るだけで流れが把握できるため、スピーディに顧客の疑問を解決できるでしょう。
対応する担当者が変わった場合も、「顧客との会話」「社内の会話」がまとまった管理画面で確認できるため、引き継ぎ業務をする必要がありません。
また、管理画面には検索機能もあります。スタッフのモチベーションが上がるようなフィードバックが届いたら、スタッフ一人ひとりが顧客の名前を検索することで、簡単にチェックすることが可能です。商品名で検索をすることで、その商品に対するフィードバックもまとめて確認できます。
チャット接客で転換率をアップさせる! 便利な機能
前述したとおり、人が対応しなくてもいいものをBotに任せることは、運営の効率化につながります。「チャネルトーク」のBot機能は、テンプレートがあり、内容を選択するだけで簡単に作れるのが特徴です。
顧客は「あなたに似合うコーデ」「特別な日のコーデ」など、いくつか表示されている選択肢のなかで、自分が知りたい内容のボタンをタップするだけ。あとは、Botが自動で答えを導いてくれます。もちろん、Botからシームレスにスタッフの対応へとつなげることも可能です。
また、ECサイトの転換率を上げるのに、フィルタリング機能も便利です。「カートに商品が入っている」といったようにフィルタリングできるため、カートに商品が入っているのにも関わらずまだ購入していない顧客に向けて、メッセージを一斉配信できます。SMSやメールも配信できるので、顧客がオフラインの場合でもアプローチすることが可能です。
顧客との信頼関係を作るには、問い合わせ対応というカスタマーサポートをしているだけでは足りません。新しいアイテムを紹介したり、購入のアラートを出したり、ブランド側からもメッセージを送るという双方向からのコミュニケーションが重要といえます。
Instagramの商品広告を見てECサイトに訪問した顧客に対しては、「こんな商品をお探しですか?」と声をかけ、広告掲載の商品以外も案内するのが有効です。顧客ごとに最適化したメッセージを送り、生身のコミュニケーションを心がけましょう。
まとめ/チャット接客を活用し、転換率アップにつなげよう!
リアルタイムで顧客とやりとりができ、実店舗のようなコミュニケーションを実現できるチャット接客。「カスタマーサポート」「セールス」「ブランディング」におけるポイントを押さえて、顧客をブランドのファンにするような接客を行うことで、転換率アップにつながるでしょう。
SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」は、「チャネルトーク」と連携し、チャット接客を始めやすい環境を整えています。興味がある方は気軽にお問い合わせください。
▼ 様々な連携をECの時流に合わせて実施!SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」資料請求をぜひご確認ください