自社ECサイトの決済手段として、ID決済やQRコード決済(いわゆる「〇〇ペイ」)に注目が集まっています。
「Amazon Pay」「PayPay(オンライン)」「d払い®」「楽天ペイ(オンライン決済)」など、さまざまなサービスがありますが、皆さんは各ID決済の機能やユーザーインターフェースの違いを正しく理解できているでしょうか?
ID決済を自社ECに導入すると、コンバージョン率の向上などが期待できますが、導入効果を高めるには、それぞれのサービスの違いを理解して使いこなすことが重要です。
そこで今回は、自社ECに導入できる主なID決済について
- ID連携(ログイン)
- 決済時のページ遷移
- キャンペーンへの積極性
上記の3つの軸で比較し、導入のメリットや導入時の注意点などを解説します。
目次
自社ECサイトで使われる主なID決済
ID決済を自社ECサイトに導入すると、決済の利便性が高まってコンバージョン率の向上が見込めるほか、ID決済サービス事業者が実施するポイント還元キャンペーンによってユーザーの購買促進が期待できるなど、さまざまなメリットがあります。
近年、さまざまなID決済が登場していますが、今回は自社ECサイトで使われることが多い
- Amazon Pay
- 楽天ペイ(オンライン決済)
- d払い
- PayPay(オンライン)
- Apple Pay
- LINE Pay
こちらの違いを解説します。
なお、ID決済の機能やページ遷移に関する解説は、ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」で構築したECサイトに導入した場合の挙動です。
Amazon Pay
Amazon.co.jpのユーザーアカウント(Eメールアドレス・パスワード)を使って自社ECサイトのログインと決済を行う。
Amazonアカウントに登録されているユーザー情報(氏名、配送先住所、クレジットカード情報など)を参照するため、ユーザーが初めて使うECサイトでも住所やカード情報などを入力する必要がない。決済完了と同時に、自社ECサイトの会員登録やメルマガ購読登録も行える。
楽天ペイ(オンライン決済)
楽天会員が楽天IDとパスワードを使い、楽天以外のECサイトで決済できるID決済サービス。
自社ECサイトの決済画面に「楽天 お支払い」ボタンが表示され、楽天会員が楽天IDとパスワードでログインすると、楽天IDに登録されているクレジットカード情報で決済を行える。買い物の際に「楽天ポイント」を貯めたり、使ったりすることもできる。
PayPay(オンライン決済)
自社ECサイトでの買い物において、電子マネー「PayPay残高」や、「PayPay」に登録したクレジットカードを使って決済する。
決済時は自社ECサイトから「PayPay」のアプリ(アプリがインストールされていない場合はブラウザ)に遷移する。決済処理は出荷売上方式を採用しており、ECサイトにおける売上確定以前の金額変更やキャンセル処理にも対応している。
d払い
NTTドコモが手がけるスマホ決済サービス「d払い」を使い、自社ECサイトでの決済を行う。
支払いは、携帯電話などの通信料金とまとめて支払う「電話料金合算払い」やクレジットカード払いなどがある。決済時に「dポイント」が貯まったり使えたりする。決済時は自社ECサイトから「d払い」のページ(ブラウザ)に遷移する。NTTドコモのユーザー以外でも、eメールアドレスを登録し、クレジットカード情報を紐づければ利用することが可能。
Apple Pay
「Apple Pay」を設定済みのiPhoneを使い、Face IDやTouch IDで決済を行う。
商品詳細画面に「Apple Pay」を実装すると、ショッピングカート画面に遷移することなく決済できる。
LINE Pay
自社ECサイトにおける買い物で、「LINE Pay」に事前にチャージした残高や、登録済みのクレジットカードで決済を行う。
決済時は「LINE Pay」のアプリが起動。ユーザーは表示された決済画面で支払い方法を選択し、決済を行う。(※「LINE Pay」は「futureshop」と連携していません 2022年4月末時点)
決済サービス | ID連携 | ECサイト内で 決済が完結 |
ポイントバック キャンペーンの積極性 |
---|---|---|---|
Amazon Pay | ○ | ○ | ✕ |
楽天ペイ(オンライン決済) | △(※2) | ✕ | ○ |
d払い | ✕ | ✕ | ○ |
PayPay(オンライン) | ✕ | ✕ | ○ |
Apple Pay | ✕ | ○ | ✕ |
LINE Pay | △(※3) | ✕ | ○ |
※ ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」で構築したECサイトにおける挙動。「LINE Pay」は「futureshop」と連携していません(2022年4月末時点)。
※2 楽天が提供しているオプション機能「楽天ID Connect」でID連携は可能ですが、2022年4月末時点、「楽天ID Connect」と「futureshop」とは連携していません。
※3 LINEが提供している「LINE公式アカウント」でID連携が可能
ID連携(会員ログイン)できるか、決済機能のみか
ID決済の中には、アカウントに登録されたユーザー情報を参照し、自社ECサイトの会員ログインや配送先住所の決定まで行えるものがあります(以下、ID連携)。
記事で取り上げた6つのID決済のうち、ID連携を標準機能として提供しているのは「Amazon Pay」のみ。
他のID決済は決済機能のみを提供しています(楽天ペイはオプションでID連携が可能)。
なお、「LINE」は「LINE Pay」とは別サービスの「LINE公式アカウント」によってID連携が可能です。「futureshop」は「LINE Pay」には対応していませんが、「LINE公式アカウント」の ID連携によるログインには対応しています。
「LINE公式アカウント」の友だちに登録した会員(顧客)が、自社ECサイトの会員IDとLINE IDを連携することでLINEログインが実現します。
ID連携のメリット
ID連携のメリットは、新規会員のコンバージョンが期待できること。
初回購入時に配送先住所やクレジットカード番号などを入力する必要がないため、「入力の手間がかからない」「ECサイトから情報が漏えいする心配がない」といった理由で決済への心理的ハードルが下がります。
また、ID連携した会員は、次回のサイト訪問から連携済みのIDでログインできるため、ECサイトのログインに手間取ることはありません。ECサイトにIDやパスワードを登録しないため、セキュリティ的にも安心です。
このように、ID連携機能を使うと既存顧客の2回目以降の買い物の満足度も高くなります。
「Amazon Pay」は、Amazonアカウントで自社ECサイトの会員ログインから決済まで行える(futureshopで構築したECサイトの実装イメージ)
決済はECサイト内で完結するか、外部サイトに遷移するか
ID決済は決済時のユーザー動線にも違いがあります。
ECサイト構築システム「futureshop」で構築したECサイトの場合、「Amazon Pay」や「Apple Pay」はサイト内で決済手続きが完了しますが、「楽天ペイ(オンライン決済)」「LINE Pay」「PayPay(オンライン)」「d払い」は決済時に一旦、決済時に一旦、決済時に一旦、外部サイトや外部アプリに遷移し、決済が完了するとユーザーがECサイトに戻る仕組みです。
外部サイトや外部アプリに遷移する仕組みでは、クレジットカード情報などの決済情報をECサイトに入力する必要がありません。
ユーザーが普段使っているアプリで決済されるため、セキュリティ的にも安心というメリットがあります。
Apple Payを商品詳細画面や決済画面に実装すると、Touch ID(指紋認証)やFace ID(顔認証)を使ってサイト内で決済を行える(futureshopで構築したECサイトの実装イメージ)
d払い利用イメージ
PayPay利用イメージ
「楽天ペイ(オンライン決済)」や「d払い」「PayPay」は、決済時に外部サイトや外部アプリに遷移し、決済完了後にECサイトに戻る
コンバージョン計測に注意が必要
決済時にECサイトから外部サイト(またはアプリ)に遷移する場合、ECサイトのコンバージョン計測を行う際に注意が必要です。
外部サイトで決済手続きが完了した時点で、ユーザーが画面を閉じてECサイトに戻ってこなかった場合、ECサイトに設定したGoogleアナリティクスのコンバージョンタグがカウントされないためです。
ユーザーが決済後にECサイトに戻ってこなくても、購入自体は完了しているため、ユーザーに迷惑をかけることはありません。しかし、ECサイトのコンバージョン計測が正確に行えないことはデメリットになります。
ECプラットフォームによってID決済の挙動が異なることがある
なお、EC事業者さまが使うECサイト構築システムによって、ID決済の挙動やユーザー動線は異なる場合があります。
自社が使っているECサイト構築システムでは、ID決済がどのような挙動になるのか、導入する前にシステムベンダーに確認してください。
ポイント還元キャンペーンへの積極性がECサイトの売り上げに影響
自社ECサイトに導入するID決済を選ぶ基準として、「ID決済サービス事業者がポイント還元キャンペーンを積極的に実施しているか」は見逃せない要素です。
ポイント還元キャンペーンは、ID決済ユーザーが買い物をするインセンティブになります。また、ID決済サービス事業者が放出したポイントは、加盟店での買い物にも使われます。
そのため、ポイント還元キャンペーンを積極的に実施しているID決済をECサイトに導入すれば、加盟店はプロモーション費用を直接負担することなく、販売促進の効果が得られるということです。
ID決済サービス事業者のこれまでの取り組みを見ると、「PayPay」「d払い」「楽天ペイ」「LINE Pay」などは、ポイント還元キャンペーンを積極的に行っているほか、グループ会社のサービスも含めて大量のポイントを放出しています。
キャンペーンを販売促進に活用する方法
ID決済サービス事業者が実施するポイント還元キャンペーンを、自社ECサイトのプロモーションに効果的に活用するには、ECサイトのコンテンツやユーザー動線を工夫することが重要です。
重要な施策の1つは、キャンペーン対象のID決済の決済ボタンを、ECサイトの決済選択画面で分かりやすく表示すること。
ID決済のポイント還元キャンペーンを告知するだけでなく、ユーザーがそのID決済を使いやすくなる動線設計を行うことが、コンバージョンアップにつながります。
ユーザー動線を最適化するには、ID決済のポイント還元キャンペーンに合わせてECサイトのレイアウトを変えることが必要です。
そのためには、ECサイトのレイアウト変更やコンテンツ管理を簡単に行えるECサイト構築プラットフォームを選ぶことが大切です。
なお、「futureshop」のCMS機能「commerce creator」は、ECサイトのレイアウトやコンテンツを管理画面で簡単に編集できますので、キャンペーンに合わせてページ内容の変更や、ユーザー動線の最適化を行うことが可能です。
まとめ
ID決済を「機能」と「プロモーション」の軸で比較すると、各社のサービスの違いを理解しやすくなります。
ECサイトに導入するID決済を選ぶ際は
- 決済の利便性を追求し、コンバージョンしやすくする
- ポイント還元キャンペーンを活用し、販促を強化する
この2つの視点で考えると判断しやすいのではないでしょうか。
ID決済は現在、さまざまなサービスが乱立しています。
やみくもにECサイトに導入するのではなく、それぞれのID決済の機能や挙動、キャンペーンの特徴を踏まえ、自社に合ったID決済を見極めるとともに、導入効果を最大化する運用を目指してください。
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