D2Cについて、多くのEC担当者が注目しているのではないでしょうか。ただ、具体的なメリットや成功のポイントについてはわからないという方も少なくないと思います。
そこでこの記事では、D2Cを導入するメリットや注意点についてわかりやすく紹介します。これからD2Cの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
D2Cとは?
D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、メーカーが消費者へ直接販売する販売方式を指します。つまり、流通業者や小売店などを仲介しないビジネスです。
消費者へ直接販売することで、顧客自身が自覚していない潜在的なニーズなどを分析できるのが大きな魅力です。また仲介料が必要なくなるため、利益率が高まります。そのため、D2Cを採用する企業が増えています。
ここでは、D2Cについての概要を紹介していきます。
- 従来の通販との違い
- B2Cの違い
- ECサイトの市場規模
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
従来の通販との違い
従来の通販とD2Cの違いについて説明します。通販は「通信販売」ですので、カタログ販売や新聞広告、折り込みチラシ、雑誌、テレビショッピングなども含まれます。インターネット普及後はECモールを含めたネット販売も「通販」に含まれるようになりました。
対してD2Cの場合は、自社のECサイトから消費者に向けて直接販売をするモデルです。「顧客インサイトの取得」や「ブランディング」の観点から、自社ECサイトで直接販売することをD2Cと呼びます。
D2Cのビジネスモデル、従来型メーカーとの違い
D2Cでは、メーカーはブランディングやマーケティング、集客、受注管理、在庫管理、顧客管理、発送まで一気通貫で行います。そのため、消費者(エンドユーザー)と直接対応する機会も多いです。
一方、従来型メーカーの場合、直接対応する主要顧客は問屋や小売店です。一般的に従来型メーカーの営業担当者は問屋のバイヤーと商談し、商品を一括で買ってもらいます。また、小売店の棚を確保するために、小売店の担当者と交渉することもあるでしょう。
いずれにせよ販売において従来型メーカーの仕事は「法人営業」であり、消費者(エンドユーザー)と直接的に接する機会は、製品に関するカスタマーサポート窓口など限定されていました。
この方式は多くの人に商品を普及させる目的では大きなメリットがある一方、販売戦略が制限されたり、顧客からの声が届きにくいなどデメリットもあります。D2Cにもメリット・デメリットが当然あるのですが、その点は後で解説します。
このように、販売戦略の自由度が高いこと、カスタマーサポートだけではなく、販売チャネルなどでも消費者と直接的にコミュニケーションを取るか否かがD2Cと従来型メーカーの違いです。
D2Cは自社ECサイトを軸に商品を販売しますが、ECモールに出店する場合も少なくありません。新興ブランドの場合、知名度が低いうちは自社ECサイトだけでは売り上げを早期に伸ばすことが難しいため、買い物客で賑わうECモールに出店し、売り上げを立てることも一つの手です。
また、オンライン販売からスタートしたブランドが、ECでのヒットを足掛かりに実店舗を出店するケースもあります。自社ECサイトを軸にしながらも、ECモールへの出店や実店舗など複数チャネルを展開することで事業を拡大していくD2Cブランドも見られます。
なお、D2Cメーカーは原則として直販を行いますが、実店舗などの小売企業に卸売りし、販売数量を増やすことで経営の安定化につなげているケースもあるようです。
D2CとECの違い
D2Cは主にECでビジネスを展開しますが、実店舗展開や卸売りを手がけることもあり、D2CとECはまったく同じものではありません。
ECとは電子商取引(Electronic Commerce=EC)のことで、インターネットを通じて商品やサービスを売買することを意味します。自社ECサイトでの販売に限らず、ECモールやフリマアプリ、オークションサイト、SNS経由での販売もECに含まれます。
なお、ECのビジネスモデルは大別すると「メーカー直販」と、複数のメーカーから商品を仕入れて販売する「セレクショショップ」があります。D2Cは自社商品を消費者に直接販売するビジネスモデルですから、セレクトショップ形のECサイトはD2C型のビジネスモデルではありません。
D2CとB2Cの違い
B2CとD2Cとはそもそも用語の使い方が違います。B2Cとは「Business to Consumer」の略称で、企業(法人)と消費者との取引全般を指す言葉です。例えばメーカーが作った物を流通業、小売店、代理店が消費者へ販売することもB2Cとなります。これはD2Cではありません。
一方でD2Cは、メーカーとして製造した商品を消費者へ直接販売することです。B2CとD2Cの違いは、端的にいうと「仲介が発生していても、消費者向けに販売すればB2C」「仲介が発生せず消費者へ直接販売することがD2C」となります。
D2CとB2Bとの違い
「B2B」は法人同士の商取引を意味します。メーカーが問屋に卸売りする、建設会社が資材を仕入れるなど、企業間の取引はすべて「B2B」です。Business to Businessから派生した単語で、「BtoB」と表記されることもあります。
D2CとC2Cとの違い
「C2C」は消費者と消費者の間で行われる商取引を意味します。フリマアプリやオークションサイトなどオンライン取引を指すことが多いようです。Consumer to Consumerの略で「CtoC」と表記されることもあります。
インターネット経由の個人間取引が拡大し、小売業界においてC2C市場が無視できない規模の産業になったこともあり、B2Cと区別するためにC2Cという用語が使われています。
個人間売買は、かつてはリアルな場でのフリーマーケットなどに限られていましたが、インターネットの普及によって市場が広がりました。経済産業省が公表した市場統計によると、CtoC-ECの市場規模は2021年時点で前年比12.9%増の2兆2121億円に拡大しています。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 – 経済産業省
ECサイトの市場規模
ECサイトの市場規模は、経済産業省の調査結果から継続的に市場規模が拡大していることがわかります。市場規模が拡大した背景には、新型コロナウイルスの影響が考えられます。
外出の規制から、2021年の調査結果を見るとECサイトの市場規模は、物販分野において13兆円超と増加傾向にあると発表されました。この傾向からECサイトの運用面だけでなく、顧客からの需要やD2C市場の拡大も大きな可能性を秘めています。
出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
D2Cの先行事例
D2C(DtoC)は2010年前後の米国において、スタートアップ企業の新しいビジネスモデルとして注目されるようになりました。米国D2Cの先行事例では化粧品のGlossier(グロッシアー)、寝具のCasper(キャスパー)、メガネのWARBY PARKER(ワービーパーカー)などが有名です。
日本では2010年代の後半から、EC業界を中心にD2C(DtoC)という言葉が使われるようになりました。国内でよく言及されるD2Cの事例では、化粧品のBULK HOMME(バルクオム)やスーツのFABRIC TOKYO(ファブリックトーキョー)、美容健康商材の北の達人コーポレーション、カバンの土屋鞄製造所などがあります。
D2Cの特徴
D2Cの特徴として挙げられるのが、次の6点です。
- 顧客とメーカーがダイレクトにコミュニケーションをとる
- LTVをKPIに置く
- 価格を下げやすい
- 機能以外の価値を訴求する
- 顧客と一緒にブランドを成長させる
- コンテンツマーケティング・SNSが重要になる
顧客とメーカーがダイレクトにコミュニケーションをとる
一般的な販売形態であるB2Cは、小売店経由で商品を販売します。消費者との間に業者が入るため、消費者とのコミュニケーションが取りづらく購買データが収集しづらい点が課題でした。
一方、D2Cは顧客とメーカーがダイレクトにコミュニケーションを取ります。小売店や広告代理店などを介さずにやり取りするため「顧客ロイヤリティを高めやすい」「ファン化を促進しやすい」といったメリットがあります。
LTVをKPIに置く
D2Cは消費者と直接コミュニケーションをとるため、顧客満足度が大事になります。この顧客満足度を数値化する指標として使われるのが「LTV(顧客生涯価値)」であり、D2Cで重要視される目標値です。
D2Cは「データ分析」や「既存ユーザーに適したコミュニケーション」をもとに消費者との関係性を深め、LTVを積み上げて利益を創出するのが特徴です。そのため、社内のKPIはLTVに置かれることが多くなります。
価格を下げやすい
B2Cでは商品が販売されるまでに業者が介入するため、その分コストがかかりやすく、販売価格も高まる傾向がありました。一方でD2Cの場合は、中間業者を介さないため価格を下げやすく「B2Cと同じ品質の商品」を安く販売することができます。
機能以外の価値を訴求する
B2Cでは、商品そのものの「機能」を価値として訴求するのが一般的でした。つまり「良いものを作れば売れる」と考えられていた時代です。
しかし現在では良い商品であっても機能を訴求するだけでは売れなくなりました。ブランド力などを訴求してファンを増やすことが求められているなか、D2Cはより顧客との距離が近い位置でブランディングができます。
D2Cはファン化を促進するために、機能のほかに商品の「ストーリー」や「世界観」「商品が実現するライフスタイルの変化」なども訴求することが多くなります。商品のブランディングによって成果が左右されるのが特徴です。
顧客と一緒にブランドを成長させる
これまでのブランドでは、ユーザーを「商品を提供する相手」と捉えており、売り手と買い手を区別することが一般的でした。
一方、D2Cではユーザーを「ブランドを共に成長させるコミュニティ」として捉え「ユーザーの声をもとに商品を改良する」「ユーザーの投稿をUGCとしてマーケティングに活用する」といった取り組みをおこなうことが多いです。
コンテンツマーケティング・SNSが重要になる
D2Cでは、顧客とコミュニケーションをとれることが利点です。そのため、オウンドメディアやメルマガ、SNSなどを通じて「消費者にとって有益な情報を発信する」「消費者と会話をする」といった取り組みが重要になります。
これらは「ユーザーのファン化」や「ブランド価値向上」などにつながるため、コンテンツマーケティングやSNSに関する施策は、D2Cにおいて欠かせない役割を担っているのが特徴です。
なお、D2Cのコンテンツに動画や音声、雑誌などを活用している企業も存在します。商品の「ストーリー」や「世界観」などの訴求も重視されるD2Cでは、多様なコンテンツを用いてユーザーにアプローチすることが必要となります。
D2Cが広まった4つの要因
D2Cが広まった要因は、下記の通りです。
- 個人の消費に対する価値観の変化
- デジタルネイティブ世代の増加
- サプライチェーンの進化・発展
- SNSの発達
順に紹介していきます。
1.個人の消費に対する価値観の変化
個人の消費に対する価値観の変化は、モノの消費からコトの消費へ変わった点が考えられます。これまでは消費者がモノを購入して「自分の所有物」と捉える価値観が重視されていました。
しかし時代の移り変わりの激しさから、商品やサービスを購入してから得られる体験や使用感などが重視されるコトの消費に変化しつつあります。
D2Cは商品の販売だけでなく、自社の理念やブランディングなども提供できるので、顧客満足度の向上にも影響があるのです。
2.デジタルネイティブ世代の増加
デジタルネイティブ世代の増加とは、スマートフォンやパソコンを使用したインターネット検索に抵抗を感じない世代をいいます。そもそもデジタルネイティブ世代は、1990年代から2000年代生まれの人を指しています。
そしてD2Cのターゲット層が、ミレニアル世代(1985年から1995年生まれ)以降の人なので、活用しておきたい媒体といえます。ターゲット層がスマートフォンやパソコンを使いこなしている人が多く、ECサイトからの購入にリテラシー的な抵抗はありません。
ECサイトから直接購入に抵抗がない世代へのアプローチは、技術の発展から生まれた新しいビジネスモデルです。
3.サプライチェーンの進化・発展
サプライチェーンの進化や発展に伴い、少量生産ができるようになったのも要因の1つです。そもそもサプライチェーンとは、消費者へ商品を届けるまでの流れ、つまり原材料の調達から販売までの流れをいいます。
サプライチェーンの進化は、中国やインドなどの製造業者の発展が背景にあります。少ないロット数で発注できるので、細かな顧客ニーズに応えられるようになりました。何より、前述したように販売自体に中間業者を挟まないので、スピード感のある取引を実現できるのです。
4.SNSの発達
SNSの発達により、メーカーは顧客へ直接アプローチできるようになったのも、要因の1つです。D2Cマーケティングを考えた際、有益な情報を顧客へ発信する必要があります。
自社の商品を宣伝に活用するのも重要ですが、消費者はSNSを活用してレビューを確認する人も増えてきています。また、消費者と直接コミュニケーションも取れるので、要望や期待などの情報も収集できるのです。自社のSNSを開設していない際は、SNSの運用も視野に入れておきましょう。
D2Cを導入する3つのメリット
D2Cを導入するメリットは、下記の通りです。
- 収益性を高めることができる
- 施策の自由度が高い
- 顧客データの収集が詳細にできる
それぞれ順に紹介していきます。
1.収益性を高めることができる
D2Cのメリットは高い収益性です。従来の販売方法とは異なり、余分なコストを大幅に削減できます。
これにより、商品をより低価格で提供可能となり、多くのユーザーにアピールできます。さらに、SNSを活用して顧客と直接コミュニケーションを取ることで、商品の改善や開発がスムーズになるため、競争力を強化できます。
この収益性の高さは、D2Cの成功を支える要因と言えます。
2.施策の自由度が高い
自社ECサイトを利用すると、マーケティングやキャンペーンを自由に展開できます。この自由度は、消費者との強い結びつきを生む鍵となります。
一方、通販プラットフォームや販売業者を経由すると、その方針に合わせる必要があり、自由度が制限されます。そのため、直接消費者へのアプローチであるD2Cは、施策の自由度が高いという大きなメリットがあります。
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3.顧客データの収集が詳細にできる
販売業者を介して商品を提供する場合、顧客の反応がわかりにくいという問題点がありました。しかし、D2Cのビジネスモデルの場合では、自社のECサイトにアクセスした人の詳細な情報を収集・蓄積することができます。
そのため、これらの情報を分析して、より効果的な施策をすることで、売上アップを図れます。このように、売上アップには効率的にPDCAサイクルを回すことが大切です。
D2Cを導入する際の8つの注意点
ここからはD2Cを導入する際の注意点について解説します。
注意点は以下の通りです。
- 卸先との認識を合わせる必要がある
- 完全にD2Cに一本化することは難しい
- 知識・施策を講じる必要がある
- 初期コストが高くなる可能性がある
- 集客難易度が高い
- D2Cのノウハウを持った人材を確保する必要がある
- 商品力が問われる
- 安定した売り上げを実現するまでに時間がかかる
それぞれ順に紹介していきます。
1.卸先との認識を合わせる必要がある
D2Cを始める場合、一般的には卸先を通さなくなるため、卸先から不満が出る可能性があります。 ただし、D2Cの導入は新しい広告やコンテンツを生みだすため、知名度やブランド力が高まり、結果的に卸先にもメリットが生まれる可能性があります。
さらに、完全にD2Cだけでビジネスを行うのは現実的ではないため、今後も重要なパートナーであるという点を明確に伝える必要があります。このようにして、卸先との認識をしっかりと合わせていくことが大切です。
2.完全にD2Cに一本化することは難しい
完全にD2Cに一本化することは容易なことではありません、特にビジネスが大規模になるとその難しさが増します。小規模なECサイトであれば、最初からD2Cだけで運営することも可能かもしれませんが、ビジネスが拡大する限り、販売チャネルを限定するのはリスクがあります。
たとえば、D2Cに力を入れてきたNIKEですが、今年に入って卸先とのパートナーシップを復活させました。これは、D2Cだけに依存せず、リスクを分散させる戦略であると解釈できます。
D2C一本化が難しいからこそ、多くの企業は販売チャネルを複数持つことで、リスクヘッジしています。
3.知識・施策を講じる必要がある
D2Cは、新型コロナウイルスの影響で注目が集まり、多くのEC担当者が「うちもやらなければ」という感覚を持っているのではないでしょうか。
ただ、限定商品をオンライン上に並べるだけで成功するわけではありません。特に競争が活性化している今、しっかりとしたブランディングとマーケティングが必要です。
たとえば、ターゲット顧客に合わせたコンテンツを投下し、ブランドイメージを高めることなどが求められます。
4.初期コストが高くなる可能性がある
D2Cは運営段階ではコスト削減が期待されますが、初期投資は意外と高くなる可能性があります。 特に、高機能なECサイトの構築や独自の流通システムを獲得するためには、高額なコストがかかります。
さらに、D2Cの運用に関する知識や専門家が不足している場合、人材の採用や外部専門家の依頼も視野に入れる必要があり、これらの積み重ねによって初期コストが高くなる懸念があります。
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5.集客難易度が高い
D2Cを導入する際の課題のひとつは、集客難易度が高いことです。自社の販売プラットフォームを刷新すると、即座に売上が伸びるわけではなく、ブランド認知を高めるためにこれまでよりも高いコストと時間がかかります。
このような背景を考慮して、SNSやオンライン広告のような比較的短期間で集客につながる施策がおすすめです。SEOなどの長期的な手法も有効ですが、集客難易度が高いD2Cで成功を収めるためには、効果的な短期集客戦略を考えることが重要であるといえます。
6.D2Cのノウハウを持った人材を確保する必要がある
D2Cを成功させるためには、D2Cに詳しい人材の確保が必要です。なぜなら、D2Cは通常のリテールビジネスとは異なり、マーケティングから在庫管理、顧客サービスまで多くの専門知識が必要になるからです。
特に、消費者とダイレクトに取引をするビジネスモデルであるため、顧客のニーズに応じて対応できる柔軟性が必要です。このようなスキルセットを持つ人材が不足していると、D2Cの導入は難航する可能性が高くなります。
7.商品力が問われる
D2Cでは何より「商品力」が問われます。消費者のニーズを満たし、かつ一度使ったらリピート購入したくなる商品を作らなくてはいけません。発売時点での商品力が重要なのは言うまでもありませんが、発売後も購買データや口コミ、SNS上の評判を吸い上げて商品を改良するなど、消費ニーズにはじまりエンドユーザーの声を直接拾うことができるD2Cの強みを生かした商品開発を続けていくことが重要です。
インフルエンサーがオリジナル商品を作り、知名度を武器にフォロワーに商品を売ろうとしても、ビジネスがうまくいかないことは珍しくありません。話題性で一時的な売上は立つかもしれませんが、商品力がないのに知名度だけで売れつづけるほど、D2Cは甘くはないことを理解する必要があるでしょう。
8.安定した売上を実現するには時間がかかる
D2Cはビジネスを軌道に乗せるまで先行投資が必要です。デジタル広告やインフルエンサーマーケティング、SNS運用など地道な活動を通じて認知向上に取り組まなくてはいけません。そして、継続購入してくれる顧客を増やしてLTVを伸ばし、先行投資を回収していく事業計画を立てるのがセオリーです。
D2Cを成功させるための3つのコツ
ここからはD2Cを成功させるための3つのコツを紹介します。
- D2Cに適した商品を選ぶ
- SNSを活用して顧客と交流する
- サブスクリプション型の販売形態を設ける
それぞれについて順に見ていきましょう。
1.D2Cに適した商品を選ぶ
D2Cマーケティングを成功させるためには、D2Cに適した商品選びが重要です。ECサイトで人気があり、かつ、一定の期間で消費され、リピート購入されやすい商品が最適です。
例として、サプリメントや健康食品は特定の期間で使い切る想定のため、リピート購入が見込めます。また、 コスメ用品も一定の期間で使い切られることが多く、消費者がブランドに満足すればリピート購入の可能性が高くなります。
このように、定期的に使い切るタイプの商品は、D2Cのビジネスモデルに適しているのです。 これら商品選びで、D2Cの成功確率が大きく変わるといえます。
2.SNSを活用して顧客と交流する
D2Cビジネスの成功には、自社サイトやオウンドメディアだけでなく、SNSの活用も重要です。なぜなら、SNSは顧客から直接フィードバックを受けることができるため、新たなニーズを掴むチャンスが広がるからです。
このように、自社ブランドを成長させるためには、SNSを積極的に活用し、顧客との継続的なコミュニケーションを行うことが推奨されます。このアプローチにより、ブランドの認知度向上と顧客ロイヤルティの強化が期待できます。
3.サブスクリプション型の販売形態を設ける
最近のトレンドとして、「サブスクリプション」の販売形態が注目されています。これは1か月や1年単位で定額の料金を支払うことで、定期的に新しい商品が届く仕組みです。
この方法には「消費型」と「サプライズ型の」2つのスタイルがあります。
消費型サブスクリプションとは、シャンプーやトリートメントのような消耗品を一定期間で送るサービスです。
それに対して、サプライズ型サブスクリプションとは、毎回異なるアイテムが届く形式で、ワインやコスメ、お花など多岐にわたって商品が該当します。一部の企業では、不要な商品の返品システムも提供しており、ユーザーには利便性が高い手法です。
このようなサブスクリプション形式は、顧客との長期的な関係を築くための効果的な手法となります。
D2Cを成功に導くマーケティング施策 3つのポイント
D2Cを成功させるマーケティング施策について、D2Cに欠かせない要素である「ブランディング」「集客」「顧客とのつながり」という3つの観点から解説します。
- ECサイトでブランドの世界観を伝える
- 集客施策を強化する
- 顧客とのつながりを強化する
1.ECサイトでブランドの世界観を伝える
D2Cの基本戦略は「ブランドのファンを増やし、継続的に購入してもらうことでLTVを最大化する」ことです。ファンを獲得するにはパーパス(存在意義)に共感してもらうことが重要であり、そのためにはECサイトやブランドサイトを通じてブランド誕生の背景や理念を発信していくことが必要です。
ブランドストーリーを伝える
ECサイトは商品カタログのようなデザインではなく、ブランドが持つ価値や実現したい世界観などを写真、文章、動画などを使って豊かに表現し、顧客の感情に訴えかけていくことが重要です。商品を開発した理由や、すでに存在している他の商品との違いなどを織り交ぜながらブランドストーリーを伝え、信頼や共感を引き起こし、顧客にとってその商品が必要な理由を理解していただきましょう。
消費者が抱える課題を、どのように解決していくのか。なぜ、このブランドでなくてはいけないのか。商品を使うと、顧客はどのような生活を送ることができるのか。そういったことを具体的に想起させることで共感を生み出し、口コミを起点にファンを増やしていきましょう。
デザインに独自性を出す
ECサイトをひと目見ただけで、そのブランドであることがわかるようにデザインのオリジナリティを出すことも重要です。ロゴや商品写真、テキストの書体や色、バナーのテイストなど、ECサイトに使用するコンテンツに独自性を持たせましょう。
2.集客施策を強化する
D2Cにおける最初のハードルは「商品を知ってもらうこと」です。新しいブランドを立ち上げた直後は、SNS上に口コミはありませんし、検索エンジンの指名検索でECサイトにアクセスするユーザーも多くはありません。商品の知名度を上げるにはSNS運用や広告、自社ECサイトを起点としたコンテンツマーケティングが必要です。
SNS運用
D2Cは消費者と直接的なつながりを持ち、共感を起点に口コミによってファンを増やしていくことが重要です。SNSのブランド公式アカウントを運用して顧客とコミュニケーションを取ることが欠かせません。
ブランドの世界観を発信するとともに、新商品やキャンペーンなどお得な情報を出していく。コーディネートや使用方法など、お役立ちコンテンツも定期的にタイムラインに流す。こうした運用を継続することでフォロワーを増やしましょう。また、近年はInstagramのショッピング機能など、ECサイトへの集客に役立つ機能を実装したSNSも増えており、そういった機能を活用することも重要です。
広告を利用する
ブランド認知度が低いフェーズでは、顧客にリーチするデジタル広告も重要です。SNS広告やリスティング広告、ディスプレイ広告などを活用してECサイトへのアクセス数を増やしましょう。
広告効果を改善するには、コンバージョン数を計測して費用対効果を検証し、クリエイティブや入札単価などを調整することが必要です。Googleアナリティクスを活用したコンバージョン計測や、Facebook広告・Instagram広告のコンバージョンAPIなどを活用して広告の効果測定を実施してください。
futureshopはコンバージョンAPIに標準連携しており、管理画面の設定だけで利用できます。詳しくはこちらをご覧ください。
コンテンツマーケティングを実施する
ブランドの世界観を顧客に伝え、共感を生んでファンを増やしていくにはコンテンツマーケティングも必要です。コンテンツマーケティングとは、オウンドメディアやブログ、SNS投稿、動画などの「コンテンツ」を継続的に発信し、見込み客を獲得したり、ブランディングを強化したり、顧客との良好で継続的な関係性を構築したりする取り組みです。
マーケティングファネルの認知・興味関心・比較検討・購入のいずれにおいても、消費者の態度変容を促すにはコンテンツが重要な役割を果たします。
また、SEOにおいてもコンテンツマーケティングは重要です。ECサイトにコンテンツページを設け、商品に関連するブログや特集記事などを数多く掲載することで、検索エンジンにおけるキーワード検索経由で潜在顧客の流入が期待できます。SEOの観点ではコンテンツ掲載ページのドメインはECサイトと同一が望ましいとされています。
コンテンツマーケティングについて、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
futureshopのCMSオプションでは、WordPressを利用してECサイトと同一ドメインのコンテンツページを追加することが可能です。futureshopのCMSオプションについて詳しくはこちらのページをご覧ください。
3.顧客とのつながりを強化する
D2CはLTVを最大化することが重要です。購入後の顧客とのつながりを強化し、リピート購入を促すとともに、口コミの起点となって認知拡大に貢献してくれるファンを増やしていくことが安定的な売上拡大につながります。そのためにはリピーター施策と顧客のファン化を促す施策が欠かせません。
リピーター施策を実施する
新規顧客をリピーターに転換するには、購入金額に応じて独自ポイントが貯まるポイントサービスなど「買い続けてもらう理由づくり」が効果的です。
購入後のアフターフォローも効果的です。既存顧客にステップメールやLINEメッセージなどでコンテンツを届ける際は、セグメント配信や顧客ごとのパーソナライズ配信を行うなど、細分化したニーズを捉えることも重要でしょう。
上記に代表されるリピーター施策は、まずは自社ECに会員登録してもらう必要があります。その際に、顧客にポイント制度への参加やアフターフォローできるようにメルマガやLINE配信を許諾してもらうことが必要です。会員登録を行う際にメリットを感じていただけるよう、「初回購入限定のクーポン」や「2回目以降の購入時に使えるポイント」などオファーを提供してみることもリピーター施策の第一歩です。
futureshopはリピーター施策を実現する多彩な機能を標準機能やオプション機能で提供しているほか、外部ツールとの連携によって幅広い施策を可能にしています。詳しくはこちらのページをご覧ください。
ブランドのファンになってもらう
顧客をファン化するための施策を打つには、顧客と密接につながることが第一歩です。まずは自社ECサイトのメルマガ会員を増やすことや、LINEの友だち登録を増やすことを目指しましょう。
購入実績に応じた会員ステージを設けることもファン作りに有効です。ステージ上位の会員に新商品の先行案内やポイント倍率アップ、お得意様限定価格設定などのVIP対応を行い、ブランドにとってファンの存在がいかに重要であるかを伝えることでファン化を促進することができます。
futureshopはLINE連携オプションや会員ステージ機能を提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。
D2Cの成功事例
D2Cの成功事例を5つ紹介します。
1.FABRIC TOKYO
引用:FABRIC TOKYO
「FABRIC TOKYO」は、スマートフォンを通じてスーツやビジネスウェアを購入できるアパレルブランドです。FABRIC TOKYOの1番の特徴は、オーダーメイドスーツをスマートフォン経由で購入できる点です。
これまでオーダーメイドスーツを購入するには、店舗に訪れて採寸し、スタッフと相談しながら好みのスーツを注文する必要がありました。しかしFABRIC TOKYOでは、実店舗で採寸したサイズ情報をインターネット上に保存します。顧客はその情報をもとに、オンラインでスーツを注文できます。
採寸後はスマートフォンだけで完結できるため、顧客の負担を減らすだけでなく、店側のコスト削減にもつながっています。
2.COHINA
引用:COHINA
「COHINA」は、身長155cm以下の小柄な女性向けのアパレルブランドです。2018年1月に創業し、3年で月商1億円を超える規模に成長しました。Instagramを活用してブランディングや商品訴求を行っており、2023年12月時点のフォロワー数は23万人にのぼります。
Instagramで毎日ライブ配信を行い、商品紹介だけでなく「細かい仕様に関する質問にリアルタイムで答える」など、顧客とのコミュニケーションの場として活用しています。Instagramを通じて、商品開発や改善に顧客の声を取り入れています。
3.BULK HOMME
引用:BULK HOMME
「BULK HOMME」は、化粧水をはじめとした男性向けスキンケア商品を扱っています。単品販売だけでなく定期購入型コースも提供しており、フェイスケアやヘアケア、ボディケアの定期購入が可能です。
2013年から事業を展開し「デザイン・品質にこだわった商品作り」や「ブランドの価値観を伝えるコンセプトを重視してきました。SEOやインフルエンサーマーケティングを積極的に取り入れ、認知度を高めています。
4.Warby Parker
引用:Warby Parker
「Warby Parker」は、ニューヨーク発のアイウェアブランドです。眼鏡の価格を一般的な価格の3分の1程度に抑え、手に取りやすい価格で販売しているのが特徴です。
Warby Parkerでは5本のアイウェアを顧客に郵送し、無料で試着できるサービスを提供しています。また、顧客がInstagram上にハッシュタグをつけて試着画像をアップすると「本社が直接アドバイスする」といった方法でSNSを活用しています。
アドバイスをSNS上で行うことで、コミュニケーションが宣伝の一環となり、知名度とファンの獲得につながっています。
5.17kg
引用:17kg
「17kg」は、10代・20代の女性をターゲットにした韓国レディースファッションを販売しているECサイトです。Instagram上で販売している商品を紹介し、興味を持ったユーザーを公式サイトまで誘導しています。
またSNSで人気のあるインフルエンサーをモデルとして起用し、ターゲット層の顧客獲得につなげています。ほかにも「新作商品をSNSによる投票で決める」「ハッシュタグを活用する」などの方法で顧客とのコミュニケーションを深め、ファン化を促進しています。
「D2Cとは」でよくある2つの質問
ここからはよくある質問を2つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
質問①D2Cを始める際に把握しておくべき法律は?
D2Cビジネスは高収益が期待される一方、初心者が十分な知識を持たず参入するとリスクがあります。 特に、D2Cの主要商品ジャンルである化粧品や健康食品には、法律が大きく関係します。
D2Cビジネスを展開する際には、これらの「薬機法」と「景品表示法」の2つの法律を徹底的に理解することが求められます。これらを理解することで、ビジネスを安全に運営するための基盤を築くことができます。
質問②D2Cブランドにおすすめのマーケティング施策は?
多くのD2Cブランドが注目しているのはコンテンツマーケティングです。これは、オウンドメディア、SNS、動画などを活用して、自社製品へ頻繁にアクセスされる魅力的なコンテンツを提供する施策です。
目的としては、顧客を自身のブランドのファンに変えることです。D2Cは開発から販売までを自社で進めるため、顧客データの収集がしやすいので、収集したデータを活用して、より効果的なコンテンツマーケティングを展開することができます。
D2Cを知るにあたってのおすすめ書籍
D2Cの市場動向や事例などがまとまっており、とても分かりやすい書籍です。
トレンドを知るにあたって、参考になる部分が多いと考えています。
D2Cセミナーレポート
フューチャーショップでも、D2Cセミナーを複数回開催しています。レポートはこちらからご覧ください。
まとめ
ここまで、D2Cを導入するメリットや成功のためのコツ、注意すべきポイントについて紹介しました。D2Cは収益性が従来の販売方法よりも高く、施策の自由度が高いという点が魅力的です。
ただ、販売プラットフォームの維持費や安定した売上を確保するには時間がかかります。成功するD2Cには、独自の世界観、商品力、そしてSNSでの顧客とのコミュニケーションなどが鍵になります。
D2Cの導入を考えている方は、この記事をぜひ参考にしてみてください。
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