越境ECを始める 3つの方法と最新トレンドを解説!初期投資ゼロ、運用を変えない海外販売実現方法から、本格的な方法までご紹介【セミナーレポート】
- 2022.08.172024.01.30
コロナ禍でインバウンド消費が激減し、海外向けの販売チャネルとして越境ECへの関心があらためて高まっています。一方で、越境ECに取り組みたくても「何から始めれば良いか分からない」「莫大な投資がかかりそう」「言語の対応や海外配送が不安」といった理由から、一歩を踏み出せない企業さまも多いのではないでしょうか。
そこで株式会社フューチャーショップはこのほど、越境ECの始め方や押さえておくべきポイントなどを解説するオンラインセミナー「小さくはじめて大きく育てる アジア向け越境EC戦略 最新事情」を開催しました。
企業の越境ECを支援している3社を講師としてお招きし、「初期投資を抑え、低リスクで越境ECを始める方法」「海外ECモールへの出店方法」「自社ECサイトで本格的に越境ECを行う方法」などを解説。また、東南アジアにおける越境EC市場のトレンドや、ECサイトをローカライズするポイントなどもお伝えしました。
ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を使って越境ECを行っている、がま口の専門店「AYANOKOJI」さまもゲストとして登壇し、越境ECの現状を語ってくださるなど、盛りだくさんの内容でお送りしたオンラインセミナーをレポートします!
目次
登壇者紹介
第1部 購入サポートサービスを活用して、自社ECサイトで最速で越境進出
BeeCruise株式会社 Global Growth Hack事業部 セールスチーム 山口 祐太郎(やまぐち ゆうたろう)氏
秀和株式会社 執行役員 兼 業務部 部長 松井 良能 (まつい よしのり)氏
バンド活動後、食器の輸入販売の企業で働いていたが、自社で企画から製造、販売までできる環境を求め秀和株式会社に入社。 京都にある「がま口の専門店AYANOKOJI」のEC部門の統括を経て、現在は会社全体のシステム構築と物流をサポート。 最近の趣味はレコード音楽鑑賞とサイクリング、蕎麦屋めぐり。
第2部 東南アジアの越境EC市場のトレンド 大手モールLAZADA/ShopeeやSNS事情
株式会社 SIパートナーズ 代表取締役 重延 勇矢(しげのぶ いさや)氏
第3部 自社サイトで「アジア越境EC」といえばLaunchCart
スターフィールド株式会社 セールスチーム 綛谷 明帆 (かせたに あきほ)氏
第1部 日本語のECサイトで越境ECが可能!低リスクで海外販売を始める方法とは?
セミナーの第1部に登壇したのは、日本企業の海外進出を支援しているBeeCruise株式会社の山口さん。日本国内の自社ECサイト(日本語サイト)を使って低リスクで越境ECに参入する方法について、同社が提供している購入サポートサービス「Buyee Connect(バイイーコネクト)」の活用事例を踏まえて解説してくださいました。
購入サポートサービス「Buyee Connent」 とは?
日本国内で運営している自社ECサイト(日本語サイト)にタグ1行を設置するだけで、越境ECを始めることができるサービス。「Buyee Connect」を導入したECサイトに海外の顧客(海外IPアドレスのユーザー)がアクセスすると、10種類の言語に対応した越境EC専用カートが表示されます。海外ユーザーがそのカートで購入・決済の手続きを行うと、決済情報が「Buyee」側に送られ、「Buyee」の運営スタッフがECサイトで商品を代理購入します。EC事業者は、通常の注文と同じように商品を指定された住所(Buyeeの国内倉庫)へ発送。その後の海外発送の手続きやインボイスの作成、外国語での顧客対応などは「Buyee」のスタッフが行います。
Buyee Connentの特長
- 自社ECサイトにタグ1行を埋め込むだけ(導入時のシステム開発は不要)
- 国内におけるEC事業の運用を変えずに、越境ECを始めることが可能
- 対応言語は日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・インドネシア語・タイ語・韓国語・スペイン語・ドイツ語・ロシア語の10種類
- 初期費用、月額費用、手数料は無料(2022年6月時点)
EC事業者さまは、国内におけるEC事業の運用を変えずに、越境ECに参入することが可能です。越境ECの決済や顧客対応、通関手続き、海外配送はすべて当グループが代行します。(BeeCruise株式会社・山口さん)
初期費用・月額費用・手数料は無料。チャージバックのリスクもなし
「Buyee Connect」の初期費用と月額費用は無料です(2022年6月から初期費用・月額費用の無料化を実現)。売上高に応じた手数料も発生しません。海外ユーザーが注文1件あたり300円を商品代金に上乗せして支払います。こうした料金体系であるため低リスクで越境ECを始めることが可能です。
また、仮にクレジットカードの不正利用が発生しても、EC事業者さまがチャージバックに応じる必要はありません。不正利用した海外ユーザーと直接取引したBeeCruise社がチャージバックに対応するためです。
「Buyee Connect」は初期投資や月額固定費、手数料が無料で、チャージバックのリスクもありません。不正注文や為替リスクといった越境ECの課題も回避できます(BeeCruise株式会社山口さん)
がま口の専門店「AYANOKOJI」さまが語る越境ECのリアル
オンラインセミナーには「Buyee Connect」を活用して越境ECに取り組んでいる秀和株式会社の松井さんもゲスト登壇しました。松井さんは、がま口の専門店「AYANOKOJI」の越境ECの現状や、海外売上高を伸ばすために取り組んでいる施策などについて、山口さんとの対談形式で解説してくださいました。
がま口の専門店「AYANOKOJI」
ライフスタイルに合わせた、さまざまなシーンで活躍する「がま口」のショップ。商品の企画から製造、販売まで一貫して行っており、財布をはじめ、バッグやポーチなどバリエーション豊かながま口を販売している。実店舗は全国に13店舗、オンラインショップは本店(自社ECサイト)・楽天市場店・Amazon店・Yahoo!ショッピング店の4店舗を運営中。自社ECサイトは2016年から「futureshop」を利用して運営している。
【質問】越境ECをはじめたきっかけは?また、「Buyee Connect」を導入した理由を教えてください。
京都市内などにある実店舗を訪れた外国人観光客が、帰国後も商品を買えるように、越境ECを始めました。当初は「楽天グローバルマーケット」を使って海外に販売していましたが、2020年に同サービスが終了したため、自社ECサイトに「Buyee Connect」を導入しました。(株式会社秀和・松井さん)
【質問】「Buyee Connect」を通じて商品が売れている国・地域はどこですか?
注文数がもっとも多いのはシンガポールです。2番目以下は台湾、香港、中国、アメリカ、韓国の順です。実店舗にお来しになる海外のお客さまは中国、台湾、香港が多いため、越境ECも中華圏のお客さまが多いだろうと予想していたのですが、ふたを開けてみるとシンガポールが一番多かったので驚きました(株式会社秀和・松井さん)
【質問】海外ユーザーの属性は国内と違いがありますか?
海外ユーザーの性別は女性が92%で男性が8%、年齢層は30代〜50代が約7割です。これらの数字は国内とそれほど変わりません(株式会社秀和・松井さん)
【質問】客単価や売れ筋商品に違いはありますか?
越境ECの客単価は国内の約1.7倍です。まとめ買いや、高単価商品の一点買いが目立ちます。実店舗を訪れる観光客は、京都独特の生地やデザインなど「京都色」や「日本色」が強い商品を購入する傾向が見られますが、越境ECでは普段使いできるオーソドックスなデザインの商品も売れています(株式会社秀和・松井さん)
【質問】海外では、どのようなプロモーション施策を実施していますか?
プロモーションは主にSNSを利用しています。国や地域ごとに利用率が高いSNSを見極め、情報発信や広告出稿を通じてブランドの認知を広げています。例えば、シンガポールや台湾はFacebookを軸にプロモーションを行ない、中国は主にREDで情報を発信しています(株式会社秀和・松井さん)
【質問】越境ECの目標や抱負をお聞かせください。
今後は、自社ECサイトの多言語対応を進めたいと考えています。自社ECサイトを訪れた海外ユーザーのコンバージョン率を高めるには、ECサイトの内容を外国語に翻訳して表示することが必要でしょう。海外モールへの出店も視野に入れつつ、次のステップへと進みたいです(株式会社秀和・松井さん)
第2部 東南アジアにおける越境ECのトレンドとは? LAZADAやShopee、SNSの活用法も解説
セミナー第2部の講師を務めたのは、越境ECの販路開拓から物流、ブランディング、プロモーションなどを包括的に支援している株式会社SIパートナーズの重延さん。東南アジアにおける越境EC市場のトレンドに加え、東南アジアで高いシェアを持つ大手ECモールで売り上げを伸ばすノウハウや、海外におけるインフルエンサーマーケティングの活用事例など、実務経験豊富な重延さんならではの知見を披露しました。
東南アジア展開で重要なECモールを解説
重延さんは、東南アジア地域で高いシェアを持つECモールを取り上げ、それぞれの特徴や売り上げを伸ばすポイントも解説しました。日本企業が東南アジア向けの越境ECに取り組む上で、特に重要なECモールとして「Lazada(ラザダ)」「Shopee(ショッピー)」「Tiki(ティキ)」「tokopedia(トコペディア)」を紹介。出店方法やECモールごとのトレンド、ユーザー属性、クリックされやすいバナーの特徴、各種イベントなどにも言及しました。
越境ECの適正な販売価格とは?
重延さんはセミナー参加者からの質問に答える形で、越境ECにおける販売価格の決め方も解説しました。商品の適正価格は内容や大きさ、送料などによって変動すると前置きした上で、「まずは、日本国内における販売価格の1.2〜1.5倍で値付けしておくのが無難」と指摘。その理由について次のように説明しました。
送料や関税などを差し引いても、利益がしっかり出る価格に設定する必要があります。ECモールのイベントやキャンペーン、クーポン、広告などの販促コストも考慮しなくてはいけません。最初は余裕を持った販売価格に設定することをお薦めします(株式会社SIパートナーズ・重延さん)
インフルエンサーマーケティングの事例も紹介
中国や東南アジアで越境ECを行う場合、商品の認知拡大においてインフルエンサーマーケティングは重要な役割を担います。重延さんは「近年はショート動画を活用したインフルエンサーマーケティングが活発」と説明し、現地のインフルエンサーを起用したPR動画の事例も紹介。さらに、ショート動画を制作する際は「現地のインフルエンサーと相談することが重要」と指摘しました。
商品の魅力が現地の消費者に伝わる動画を、日本人だけで作るのは難しいと思います。現地の消費者心理を理解している現地のインフルエンサーと相談しながら動画を作ることが重要です(株式会社SIパートナーズ・重延さん)
重延さんは海外のECモールに出店する際の注意点として、モールごとの規約や現地の商習慣を事前にしっかりと調べておくことが重要であるとあらためて説明。越境ECへの参入を検討している企業に向けて、「越境ECをワンストップで支援するので、気軽に相談して欲しい」と訴えかけ、第2部を締めくくりました。
第3部 自社ECサイトで越境ECを本格展開!ローカライズのポイントとは?
セミナーの第3部では、越境EC専門カート「LaunchCart(ランチカート)」を提供しているスターフィールド株式会社の綛谷さんが、自社ECサイトを使って越境ECに取り組む際のローカライズのポイントを解説してくださいました。
LaunchCartとは?
越境ECに特化したECカート。160種類の通貨に対応しているほか、人力と機械翻訳による多言語対応、各種クレジットカードやPayPalによる決済機能、EMSやDHLといった国際輸送対応など、越境ECに必要な機能を備えている。総合通販と単品リピート通販に対応したプロモーション機能や分析機能、CMS、CRM機能なども実装。スターフィールド株式会社はシステムを提供するだけでなく、サイト構築や翻訳、フルフィルメントなどもサポートしている。
アジア越境ECを成功させる“ローカライズ”5つのポイント
綛谷さんは越境ECサイトを本格展開するにはローカライズ(現地対応)が重要だと指摘し、ローカライズにおいて特に重要な要素として「デザインのローカライズ(スマホ最適化)」「言語のローカライズ(翻訳)」「カート画面のローカライズ(カゴ落ち対策)」「受取方法のローカライズ」「決済のローカライズ」の5点を挙げ、次のように説明しました。
- デザインのローカライズ(スマホ最適化)・・・海外ユーザーのEC利用デバイスはスマホがメインになっており、ECサイトのスマホ最適化は必須。ECサイトのデザインはPC版を作ってからレスポンシブ対応でスマホ版を作るのではなく、最初からスマホを優先して制作する必要がある。
- 言語のローカライズ(翻訳)・・・Google翻訳など無料の自動翻訳ツールだけでは、商品の魅力や細かいニュアンスを現地の消費者に伝え切ることはできない。とは言え、商品数の多いECサイトですべてのテキストの翻訳をネイティブに委託すると初期投資が莫大になる。キャッチコピーや商品名など購入者の意思決定に影響する要素はネイティブに翻訳を委託し、商品の素材やサイズなどの文字情報は自動翻訳ツールを使うなど、内容によってネイティブ翻訳と自動翻訳を使い分けることが重要。
- カート画面のローカライズ(カゴ落ち対策)・・・入力フォームの補助機能(EFO)を実装するとコンバージョン率の向上につながる。例えば、住所を入力すると郵便番号が自動的に入力される機能などが効果的。
- 受取方法のローカライズ・・・国や地域ごとに、よく利用される受取方法に対応するとコンバージョンしやすくなる。例えば台湾はコンビニ受け取りが普及しているため、配送方法の選択画面で、コンビニの種類や場所を簡単に選択できるシステムを導入するとコンバージョン率向上につながる。
- 決済のローカライズ・・・中国ではWeChat PayやAlipayの利用率が高いため、越境ECサイトにもこれらの決済手段が必須。ただし、ブラウザの種類によっては決済が使えない場合があるなど、現地の事情に合わせたシステム構築も求められる。
綛谷さんは自社ECサイトを構築する際に利用できる補助金制度にも言及。「IT導入補助金」や「JAPANブランド育成支援等事業費補助金」を紹介し、「これらの補助金はLaunchCartでのECサイト構築にも利用できるので、海外の販路を拡大したい企業にお薦め」と説明しました。
また、越境ECを行う場合、自社ECサイトとECモールには、それぞれメリットとデメリットがあると指摘。企業の事業規模や予算、販売先の国・地域などによって最適な販売チャネルを選択することが重要であるとした上で、「海外ユーザーとの接点を増やすには、最初からどちらか一方に限定するのではなく、自社ECサイトとECモールを併用し、相乗効果を作っていくことも効果的」と訴えかけました。
まとめ
今回のオンラインセミナーでは、越境ECを始める方法として「代理購入」「海外モール」「自社ECサイト」の3種類について、それぞれの支援企業に解説していただきました。2時間以上の長丁場にもかかわらず、最後まで多くのEC事業者さまが聴講し、コメントで質問も寄せられるなど、越境ECに対する意欲の高さもうかがえました。
近年は越境ECのソリューションや支援サービスが充実し、「Buyee Connect」のように低リスクで越境ECを始められるツールも増えています。ECサイト構築システム「futureshop」をご利用中の店舗さまは「Buyee Connect」を導入すれば、既存のECサイトを使い、運用フローを変更することなく越境ECを始めることが可能です。「越境ECに挑戦してみたい」「自社の商品が海外で売れるのか試したい」という店舗さまは、お気軽にお問い合わせください。
「Buyee Connect」を導入すればタグ設置だけで越境ECも可能!ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」に関するご質問・ご相談はこちら