EC売上高10億から73億に急成長「AXES」の多店舗展開と業務効率化の取り組み【セミナーレポート】

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2012年度から10年間で、売上を10億円から73億円に伸ばしたEC事業者さまがいます。ファッション雑貨やコスメのECサイトを運営している株式会社AXES(本社東京都)です。

同社が売上を大きく伸ばした背景には、自社ECサイトを軸にブランディングを強化しながら、ECモールを含めて合計19店舗(*1)を運営する多店舗展開の戦略がありました。

さらに、ECサイトの一元管理システムを導入するとともに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やアウトソーシングを活用することで、ECの運営業務を効率化し、売上拡大と利益率向上の両立も実現しています。

株式会社AXESの成長を支える “多店舗展開”と“業務効率化”の取り組みとは?同社の櫻井利昌さんに詳しく解説していただきました。

*1 2024年7月時点

この記事を読むと次のことがわかります

  • 自社ECサイトとECモールの使い分け方
  • 自社ECサイトにおける集客やブランディングの方法
  • EC事業の運営体制と組織編成
  • ECの多店舗展開を効率化し、利益率を上げる方法
  • 店舗ごとの損益管理を行う方法と注意点
【スピーカー紹介】

株式会社AXES BPO部 部長

櫻井 利昌(さくらい としまさ)氏

2000年に株式会社スクロールに入社、通信販売事業にて商品企画、商品仕入、WEB広告など様々な業務を担当。その後、EC専業のグループ会社にて、インテリア、キッチン雑貨販売の事業責任者として、実務からマネジメント、事業損益管理を経験。2022年にAXES社にて新規事業としてEC運営代行サービスの立ち上げに参画。2024年4月から現職。

この記事は2024年7月25日に開催したオンラインセミナー「10年で売上10億から73億に急成長!自社ECを含めた多店舗展開の拡大で実現した売上アップの秘訣とは?」をもとに構成しています。

株式会社AXESのビジネスモデル

まずは株式会社AXESの事業概要を紹介します。同社は2012年に通販大手の株式会社スクロールの100%子会社になり、現在の商号に変更しました。現在は「Fashion事業」「Beauty事業」「BPO事業」という3つの事業を手がけています。2023年3月期の売上高は73億円でした。

株式会社AXESの事業概要

 

「Fashion事業」はバッグや財布などファッション雑貨を販売しています。取り扱いブランド数は250種類以上。「AXES」というショップ名で自社ECサイトを運営しているほか、Rakuten、Amazon、au PAYマーケット、Yahoo!ショッピング、BUYMA、Qoo10、SHOPLISTなど複数のECモールに出店しており、現在運営しているECサイトは合計12店舗です。

株式会社AXESのFashion事業

自社ECサイトはfutureshopで運用中。ECモールでは楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーのジャンル大賞をはじめ、Yahoo!ショッピングやau PAYマーケットなどでアワードを受賞している

 

「Beauty事業」は「Cosme Land(コスメランド)」という屋号でスキンケアやメイクなどを販売しています。現在運営しているECサイトは自社ECとモールを合わせて7店舗。楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーの総合2位を受賞するなど、「Beauty事業」においても数々の受賞歴をお持ちです。

株式会社AXESのBeauty事業

「Cosme Land」の自社ECサイトもfutureshopで構築・運用している。Rakutenやau PAYマーケットなどで多数の受賞歴がある

 

株式会社AXESは新規事業として「BPO事業」も手がけています。同社が培ってきたEC運営のノウハウと、グループ会社のスクロール360が提供しているソリューションやフルフィルメント代行サービスによって、EC事業の戦略立案からサイト構築、運営、マーケティング、プロモーション、物流、顧客対応、代金回収まで総合的にサポートしています。

株式会社AXESのBPO事業

グループ会社のスクロール360と連携してEC事業を総合的にサポートしている

自社ECサイトとECモールの役割の違い

株式会社AXESは多店舗展開を行う上で、自社ECサイトとECモールの役割を使い分けています。櫻井さんは自社ECサイトとECモールの役割の違いについて、「オフィシャル店(自社ECサイト)はブランディングの中心と位置付け、ECモールは新規顧客獲得と売上拡大に重きを置いている」と説明しました。

その理由について櫻井さんは、「オフィシャル店(自社ECサイト)とモール店には、それぞれメリット・デメリットがあり、それを踏まえて使い分けている」と前置きした上で、「自社ECサイトは顧客情報を自社で保有できるほか、販売行動の自由度も高いため、ブランディングに適している」と指摘。また、ECモールについては「モールそのものの集客力が高いため、新規顧客を獲得しやすく、比較的短期間で売上が伸びる」と説明しました。

モールの店舗は、新規獲得と売上を追求しています。オフィシャル店(自社ECサイト)も当然、売上を追っていますが、それと同じか、それ以上にブランディングと情報発信に重きを置いています(櫻井さん)

株式会社AXESの自社ECサイトとECモールの位置付け

自社ECサイトはEC事業におけるブランディングの中心に位置付けている。一方、ECモールでは新規顧客獲得と売上拡大に重きを置いている

自社ECサイトとECモールのメリット・デメリット

オフィシャル店(自社ECサイト)とモール店(ECモール)のメリット・デメリットを整理した上で、それぞれの役割について解説した

EC事業の運営体制と組織図

櫻井さんは株式会社AXESのEC事業の運営体制についても解説してくださいました。EC事業は「クリエイティブ課」「マーケティング1課」「マーケティング2課」「CSチーム」「MDMチーム」という5つの部署があり、それぞれ役割を担っています。

「クリエイティブ課」の主な業務は、ブランディングや情報発信です。YouTubeやSNSアカウントの運用、タイアップ、情報コンテンツの制作・運用などを行っています。

「マーケティング1課」と「マーケティング2課」がECサイトの運営を担当しています。ECモールの全店舗を運営しているほか、「マーケティング1課」の中にオフィシャルサイト専任担当者がおり、「クリエイティブ課」と連携して自社ECサイトを運営しています。

そして、受注管理や顧客対応、商品登録といったサポート業務は「CSチーム」と「MDMチーム」が担当しています。

株式会社AXESのEC事業の組織体制

株式会社AXESのEC運営体制

ブランディングやSNS運用を担う「クリエイティブ課」を独立した課として置いている理由について、櫻井さんは次のように説明しました。

かつてはECサイトの運営担当者がブランディングも兼務していましたが、担当者が売上確保に重きを置きがちになり、ブランディングやSNS運用の優先順位が下がってしまう傾向がありました。その課題を解決するために、こうした組織体制を敷いています(櫻井さん)

自社ECサイトにおける集客やブランディングの成功事例

櫻井さんは自社ECサイトにおける集客やブランディングの施策についても解説してくださいました。その一部として「SEO(コンテンツマーケティング)」「SNS運用」「オフィシャル限定サービス」の成功事例を紹介します。

SEO(コンテンツマーケティング)

株式会社AXESはコンテンツマーケティングの一環でオウンドメディア「abox(エーボックス)」を運用しています。「abox」の月間アクセス数は約20万人。ファッションやライフスタイルをテーマとしたさまざまなコンテンツを発信し、検索エンジンなどからユーザーを集客しています。

アクセス数が多い記事の1つは、靴紐の結び方を解説した「イケてる靴ひもの結び方10選|ほどけにくい基本から簡単おしゃれなアレンジまで」。「靴紐 結び方」といったキーワードで検索エンジンの上位に表示されています。こうした人気記事から自社ECサイトの商品ページにリンクを貼り、ECの集客につなげています。

株式会社AXESのオウンドメディア「abox」

コンテンツマーケティングの一環で「abox(エーボックス)」を運用している

「abox」は自社ECサイトのSEO強化にも貢献しているそうです。

aboxの記事から自社ECサイト「AXES」にリンクを貼ると、優良なコンテンツからの被リンク効果によって、自社ECサイト「AXES」のSEO評価の向上が期待できます(櫻井さん)

SEO対策は自社ECサイトでも実施しています。関連キーワードを商品名や説明文に対策するなど、「必要な対策をコツコツ、地道に続けている」(櫻井さん)と説明した上で、「自社ECサイトのSEO対策は1回で終わりではなく、継続的に実施することが重要だと考えている」(櫻井さん)と強調しました。

株式会社AXESの自社ECサイトにおけるSEO対策

自社ECサイトの商品ページなどで、さまざまなSEO対策を実施している

SNS運用

株式会社AXESはSNSの運用にも注力しています。Instagram、Facebook、X、LINEのアカウントを運用しているほか、アプリやメールも活用して既存顧客とコミュニケーションを図っています。

フォロワーや登録者の人数は延べ約170万人。SNSやコミュニケーションツールを通じて情報発信することは、「オフィシャルサイトの集客やブランディングにおける重要な施策の1つ」(櫻井さん)になっています。

株式会社AXESが運営しているSNSアカウント

SNS運用のコツについて櫻井さんは、「SNSのトレンドの変化にアジャストしていくこと」を挙げました。「いいね」などが付きやすいコンテンツや、拡散されやすいコンテンツの特徴をプラットフォームごとに分析し、「ユーザーの反応を見ながらコンテンツの作り方や発信の仕方を改善している」と説明しました。

近年はYouTubeチャンネルの運用にも力を注いでいます。2021年のチャンネル開設から2年で登録者数が11万人を突破したことに触れ、「再生回数が10万回を超えるコンテンツも複数あり、YouTubeはECサイトの知名度を上げる重要なツールになっている」(櫻井さん)と説明しました。

株式会社AXESが運用している各種SNSのコンテンツについて詳しく知りたい方は、下記のアカウントをご覧ください。

株式会社AXESが運営しているYouTubeチャンネル

YouTubeチャンネル「AXES channel」は2年で登録者数が11万人を突破した

自社ECサイト限定サービス

自社ECサイトの利用促進や、顧客満足度の向上を目的に、自社ECサイト限定サービスも提供しています。30日間の返品無料サービス、90日間の無料修理サービス、会員ランク別の特典といったサービスです。

こうしたサービスは顧客満足度の向上を通じて「AXES」のブランディングに寄与しているほか、顧客が自社ECサイトで購入する理由を提供することにもつながっています。

オフィシャルサイトで買い物をしてもらう動機付け、理由付けを行うには、オフィシャルサイト独自のサービスを提供することが重要だと考えています(櫻井さん)

株式会社AXESが実施している自社ECサイト限定サービス

自社ECサイト限定サービスを提供し、自社ECサイトで購入する理由を創出している

効率的な多店舗展開で利益率向上

株式会社AXESは多店舗展開を推進することで売上を伸ばしてきました。スクロールグループに加わった2012年度当時はRakuten2店舗とYahoo!ショッピング1店舗の合計3店舗でしたが、2024年7月時点の店舗数は19店舗に増えています。

多店舗展開を行うメリットについて櫻井さんは、「販売チャネルを広げることで新規顧客との接点が増える」ことを挙げたほか、「モールで培ったノウハウを他のモールに横展開できることも多い」と説明しました。

株式会社AXESの多店舗展開

多店舗展開を推進することで売上を伸ばしてきた

ECサイトの店舗数を増やすことと並行して、業務効率化に取り組むことで利益率の向上にも成功しています。売上高が2012年度比で730%に拡大した一方で、社員数は2012年度比で360%の54人。売上高の成長率に対して、社員数の増加率は約半分にとどまっています。

10年前と比べて固定費の比率が下がり、売上の伸びが利益に直結しやすい事業構造を作ることができました。多店舗展開を進めながら、さまざまな施策によって業務効率化に取り組んできた結果です(櫻井さん)

株式会社AXESの売上成長率

売上高の成長率に対して、社員数の増加率は約半分にとどまっている

櫻井さんは、多店舗展開の運営を効率化した方法として次の3つを挙げ、その内容を具体的に解説してくださいました。

  1. アウトソーシングを活用してコア業務に注力
  2. OMS(オーダー・マネジメント・システム)で店舗運営を一元管理
  3. RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で158種類の業務を自動化

アウトソーシングを活用してコア業務に注力

取り組みの1つ目は、アウトソーシングを活用してコア業務に注力したこと。カスタマーサービスや物流、代金回収といったバックヤード業務をグループ会社のスクロール360にアウトソーシングすることで、株式会社AXESの社員が売上拡大に直結する業務に注力できるようにしました。

バックヤード業務についてはBPO、いわゆるアウトソーシングを活用し、自社の社員は売上に直結する業務に集中できる環境を整えました(櫻井さん)

株式会社AXESのBPO活用

OMS(オーダー・マネジメント・システム)で店舗運営を一元管理

業務効率化の取り組みの2つ目は、OMS(オーダー・マネジメント・システム)を導入したこと。自社ECサイトとモール店舗をOMSで管理し、商品登録や受注処理、在庫管理といった業務を一元化しました。

多店舗展開を行うと店舗数に比例して受注処理などの業務も増えますが、株式会社AXESはOMSを導入することで業務量の増加を抑えています。また、OMSをWMS(倉庫管理システム)と連携することで、倉庫の在庫を一元管理する体制も整えました。商品の発注や返品管理も一元管理しています。

OMSは多店舗運営の効率化に直結するものであり、優先順位が高いと考えています(櫻井さん)

株式会社AXESのOMS活用

OMSを導入し、自社ECサイトやモール店舗の受注・在庫・商品情報などを一元管理している

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で158種類の業務を自動化

業務効率化の取り組みの3つ目は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用です。株式会社AXESは現在、資料作成やECモールへのデータアップロード、受注処理など158種類の業務をRPAで運用しています。

RPAの効果について櫻井さんは「労働時間に換算すると1ヶ月あたり約1500時間、10人分の業務を削減できている」と説明しました。

RPAでカバーしている業務の種類は、増え続けています。業務効率化の取り組みに終わりはありません(櫻井さん)

株式会社AXESのRPA活用

労働時間に換算すると1ヶ月あたり約1500時間の業務をRPAに置き換えた

店舗ごとの損益管理で広告費を最適化

櫻井さんは多店舗展開を行う上での重要なポイントとして、「店舗ごとに損益管理を行うこと」を挙げました。店舗ごとの損益管理が不十分だと「儲かっている店舗や、効率よく売上を取れている店舗が見えにくくなる」と指摘。その結果、「どの店舗に販促費や広告費を集中すれば、効率的に売り上げにつながるかといった判断がつきにくくなる」と説明しました。

限られた広告費を効率よく売上につなげるには、店舗ごとの損益をしっかり把握することが必要です。多店舗展開を成功させるには、効率の悪い店舗は広告費の蛇口を閉め、効率の良い店舗には集中的に投下するといった全体調整を行うことが重要だと考えています(櫻井さん)

株式会社AXESのEC事業のKPI管理

損益管理は共通フォーマットを使用

店舗ごとの損益管理を行う際のポイントとして櫻井さんは「すべての店舗で共通フォーマットを使い、各種KPIを時系列でチェックすること」を挙げました。

共通フォーマットを使うことで「KPIの種類や進捗確認のタイミングが全店舗共通になり、店舗ごとの状況を比較しやすくなる」と指摘。また、チェック項目を共通化することで「属人的な価値判断を減らすとともに、作業の効率化にもつながる」とメリットを強調しました。

ただし、「自社ECサイトとECモールでは重視するKPIが異なる場合もある」と言及し、その一例として「ECモールではROASを重視するが、自社ECサイトではLTVをより重視するようにしている」と説明しました。

KPIは毎日チェック

株式会社AXESでは、店舗ごとの売上高や利益などの業績指標のほか、ECサイトのアクセス数や転換率、オーダー単価といった項目についても、日次・週次・月次でチェックしています。KPIを毎日チェックする理由について櫻井さんは「課題を早期に把握し、スピード感を持って対策を打つため」と説明しました。

BPO事業の紹介

セミナーの最後に櫻井さんは、株式会社AXESが新規事業として開始した「BPO事業」の内容や成功事例を紹介しました。アウトソーシングを活用するメリットについて「自社だけでは得られないノウハウを活用できる」と強調し、「バックヤード業務をアウトソーシングすると、社員は売上拡大に直結するコア業務に集中できる」といったメリットもあらためて説明した上で、「BPOをうまく活用してEC事業を伸ばしていただきたい」と訴えかけてセミナーを締めくくりました。

株式会社AXESのBPO事業

同社株式会社AXESが培ってきたEC運営のノウハウと、グループ会社のスクロール360が提供しているソリューションやフルフィルメント代行サービスが連携し、EC戦略立案、サイト構築、運営、マーケティング、プロモーション、物流、顧客対応、代金回収までサポートしている

まとめ

今回のセミナーでは、EC事業の売上を大きく伸ばした株式会社AXESのブランディングや多店舗展開の取り組みについて、事例を交えて詳しく解説していただきました。自社ECサイトとECモールの住み分けや、多店舗展開を効率化する方法など、これからのEC市場を勝ち抜くヒントを得られたのではないでしょうか。

株式会社フューチャーショップは、こうした成功事例の紹介を含めて、さまざまなセミナーを開催してEC事業者さまのビジネス成長を後押ししています。ライブコマースやAI活用といった最新トレンドをテーマとしたセミナーも実施していますので、今後のセミナーもぜひチェックしてください。

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